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※再度記事を更新しました(2014/10/08)。主な修正点は、「『安全性向上云々』の請求項目は、ユーザ補償の原資ではなく、 『安全性向上のためのインフラ整備』の原資でした」という話です。詳細は後述します。あと、試算用excelに一部誤りがあっため、修正しました。
こんにちは、坂本です。
本来シリーズ記事の連載中ですが、予定を変更してお届けしております。
10日ほど前に、楽天の料金改訂が発表されましたね。楽天としては「より買い物しやすいモールを作りたい」等々の理由があってのことだそうですが、出店者の皆さんからは、(改訂意図以前に)「そもそも改訂内容があまりに複雑で、現在もどの程度コストが上がるか試算できていない」という声を多く頂いています。
なので、今回、どの程度コスト増になるか、忙しい方でもザックリ試算できるよう、情報を要約してお伝えします。併せて、「数字を記入すればコスト増予測が出てくるExcelファイル」も公開します。
その他、規約が変わったり一部サービスが無料化されたりしましたので、これも簡単にお知らせします。今後どうすれば良いかについては書き切れませんが、ちょっとだけ触れます。
2014/09/24追記:モバイルの料金増について一部誤りがありましたので訂正致します(後述)。これを踏まえると、全体の負担増は、+1%程度ではなく+1.5~3.5%程度ではないかと思われます。ちなみにモバイル比率が高い場合ほど負担額は大きくなる傾向です(※)。申し訳ありませんでした。また、試算用Excelファイルについて「スタンダードプラン版」を追加しました。
※がんばれプランの場合。スタンダードプランでは上がらないケースもあり得ます
モバイル料金の誤りについて:
具体的には、「がんばれプランにおけるモバイル負担がどの程度増えるか」を読み違えました。楽天から「PC料金テーブルに対して+0.5%程度」との案内だったので、単純に「+0.5%」してしまいましたが、本件のポイントは「+0.5%」よりも、「モバイル用料金テーブルからPC料金テーブルに切り替わる」ことの方が大きな負担増だったのでした。。クライアント様のご指摘で気づきました。ありがとうございました。
- 誤:売上×モバイル比率×0.5%程度の負担増
- 正:売上×モバイル比率×1~3%程度の負担増
ざっくり計算しようにも幅があるので、後述する試算用Excelファイルを使って頂く方がよろしいかと思います。
- 目次 -
はじめに
約束して頂きたいこと
この記事の価値は、正確性よりも「分かりやすさと速報性」が大事かと考えています。なのでザックリです。
また、元々は当社内の参考資料です(特に試算用Excelファイル)。数字の妥当性については保証しません。もし何か間違っていたら、どうか優しくご指摘ください。あと、使い方についてのお問い合わせもお受けできかねます。
正確に確認したい場合は、まず楽天からの案内をご覧頂き、楽天側の窓口までお問い合わせください。
今回の概要
「どの程度負担が増えるかの見込み」については、本記事の中盤に記載しています。
「消費税課金」の影響が最も大きいため、外税だった店は結構負担が増えます。また、モバイル比率が高いケース、メルマガをよく使うケースは負担増が大きめになりますね。
で、確約は出来ませんが、おおよそ、売上の1.5~3.5%強程度の負担増になるかと思います。 と書くとたいしたことがないようですが、たとえば1.5%増なら「(楽天での)経常利益率5%の会社が、利益の3割近くを持って行かれる」とも言えますね。何にせよ、ちゃんと把握しておきましょう。(2014/09/24修正)
試算済みの方へ
コストがどの程度掛かるか「既に試算済み」という方は、本記事と比較して実際どの程度のご負担になったか、ぜひコメント欄などでお教え下さい!(「おおむね合っている」旨の連絡を頂けると安心します)
消費税にも課金
以前、送料に対して課金されるようになりましたよね。今後は消費税に対しても課金されるようになります。今後も消費税が増えるのを見越してのことかもしれませんね。
売上マージンと消費税
これまで「内税表示の店舗」は、多めに課金を支払っていました。
消費税分に対して課金することで、外税の店舗も同条件になる、という名目です。(2015/1/1~)
- before:販売価格および送料
- after:販売価格(消費税含む)および送料
- 売上×消費税8%×マージン約6%(※)の負担増
※がんばれプランで50-100万の売上が対象の場合
スーパーポイント料金と消費税
お客さんが楽天で買い物すると、基本1%のポイントを貰えます。これは店舗負担です。「売上の1%がスーパーポイント料」でしたが、これが「売上※+消費税の1%」になります。
- before:商品等の代金を基準
- after:商品等の代金(消費税含む)を基準
- 売上※×消費税8%×ポイント課金1%の負担増
※ポイント課金の対象は「楽天会員からの売上」に限られます。・・まあほとんどですが。
アフィリエイト成果報酬と消費税
アフィリエイター経由で購入されると、アフィリエイターに対して基本1%ちょっとの報酬が発生します。これは店舗負担です。「売上の1%ちょっとがアフィリ報酬」でしたが、これが「売上+消費税の1%ちょっと」になります。
- before:成果報酬を支払う
- after:成果報酬及び消費税を支払う
- アフィリ経由売上×消費税8%×アフィリ報酬1%の負担増
モバイル課金増
- モバイルとは:スマホ、タブレット、ガラケー経由の売上
- PCに準じた課金体系へと変更
- 「PC経由での料率」に0.5%を加算(2015/4/1~)
- 誤:売上×モバイル比率×0.5%程度の負担増
- 正:売上×モバイル比率×1~3%程度の負担増
※料金プランによって違います。ここではがんばれプランに合わせました。
※冒頭の理由により、負担増の見込額を訂正(2014/09/24追記)。
メルマガ配信の完全有料化
- メール配信料 0.75円/通(税別)(2015/4/1~)
- 既存のプラン体系(※)を廃止し、全店一律で課金
- かつての有料プランの機能が使えるようになる。メルマガ経由売上の算出など。
- メール配信数×0.75円の負担増
※かつては有料プラン/無料プランがありました。
中々アレですが、今後どうするか等については記事末尾で少し触れます。ちなみに、無料プランは元々「本来は有料だけど今は課金しません」という規約になっていたのです。ご存じでした?
「新しい請求項目」の導入(ユーザ補償強化のコスト負担)
当初、「ユーザ補償の原資」と案内していましたが、誤っていましたので訂正します(後述)。
- 月間の売上高の0.1%
- 名目は「取引の安全性・利便性向上のためのシステム利用料」
- 実質2015/2/1~
- 月商×0.1%の負担増
内容
上記の課金を受け、補償を強化。未着に加えて、「遅延」「破損」等も補償対象とする。2014/11/1~
この課金による収益は、上記の補償強化以外にも、窓口の設置などユーザサポート各種業務の原資にあてる模様。
確認したところ、上記件が誤っていたので、訂正します。(2014/10/08)
- ユーザへの補償原資は、上記の請求とは別に店舗負担となる(補償事案が発生した場合)
- 上記の請求項目は、「補償事案などユーザの不利益自体が発生しないようにするためのインフラ作り」に使われます
後者の「インフラ」とは、以下のようなものです。
「安全性向上のための」システム
・配送状況を表示したり、決済システムを改変するなど。
・たとえば銀行振込を楽天銀行に一本化するためのシステム改修
「安全性向上のための」体制構築
・ユーザ問合せ窓口の強化など。(人件費とかですかね)
ということで、「安全性向上の原資」ではありますが、見方によっては「楽天の競争力向上の原資」とも言えます^^;
実際どれくらい負担増?
ざっくり算出する方法
マージンは概算値です。ザックリ算出するとしたらこういうイメージかなと思います(後述するExcelは、また別の出し方をしています)。以下のこまごました課金を足し合わせて出します。
- 消費税課金
- 売上※×消費税8%×スーパーポイント料1%
- アフィリ経由売上×消費税8%×アフィリ報酬1%
- 売上×消費税8%×マージン約6%(※) (外税の場合は追加)
※がんばれプランで50-100万の売上が対象の場合
- モバイル課金(2014/09/24修正)
- 売上の30%がモバイルの場合、30%×1~3%=0.3~0.9%課金増
- 売上の半分がモバイルの場合、50%×1~3%=0.5~1.5%課金増
- その他の課金
- メルマガ配信数×0.75円
- 売上×前述の「新しい請求項目」0.1%
※スーパーポイント料金の課金対象は「楽天会員経由の売上」です
某店でのケース
某店での試算結果です。
===============
- 消費税課金
- システム利用料課金 +0.2% ← 外税
- ポイント課金 +0.2%
- アフィリ課金 +0.1%
- モバイル課金増 +0.07%
- メルマガ課金 +0.3% ← 出す方
- 前述の「新しい請求項目」 +0.1%
===============
合計すると、コスト増は、売上の1%程度とのこと。(「『利益から取られる』と考えるとイタい」とのこと)
- 補足
- この店は外税・スタンダードプランであり、メルマガはよく出す方です
- メルマガを出さなかったとしたら、全体の0.7%増
- 内税で、かつメルマガを出さなかったとしたら、全体の0.5%増
試算用Excelファイル
【お知らせ】試算用ファイルの提供は終了しました。
以上をご理解頂けましたら、下記のファイルをお試し下さい。
いずれも内税の場合です(外税の場合は対応していません)。
▼スタンダードプラン
≫資料ダウンロードはこちら(要メールアドレス)
▼がんばれプラン(修正版)
≫資料ダウンロードはこちら(要メールアドレス)
両方で計算してみて、安い方のプランに切り替えるのも良いかも知れません。
ただ繰り返しになりますが、元々は当社内の参考資料です。数字の妥当性については保証しません。 もし何か間違っていたら、どうか優しくご指摘ください。あと、使い方についてのお問い合わせもお受けできかねます。(でも計算してみてどんな感じだったかは教えて頂きたいです^^;)
余談ですがこのファイルは、当社の某スタッフが、他にも色々仕事を抱えた状態で、楽天の複雑すぎる課金体系と取っ組み合いながら苦心して作ったものです。利用の際には心の中でお礼を言ってあげて下さいw
課金以外の変更
ユーザの満足度および安全性向上のため、出店者に対し、以下の負担が科せられます。
決済手段の制限
「楽天を介さない決済」に対して制限が掛かります。理由は、取り込み詐欺対策。実在ネットショップをコピーした詐欺サイトが増えた等。
- 振込先口座を楽天銀行に統一
- ユーザが銀行振込で支払う場合、振込先を「楽天銀行内に設置された店舗毎の口座」に統一
- カード同様に「楽天から入金される形」になるので、「即現金収入」にはなりません。
- 「楽天を介さない決済」の一部が使えなくなる
- 使える: 代引、コンビニ決済、PayPal、各種ローン決済など
- 使えない: ゆうちょ振替、現金書留、まとめてau支払い
- 2014/11/13~
配送・納期情報の表示義務化
- 納期情報を表示して下さい。ユーザが、いつ届くかを把握できるようになります。
- 受注情報の中に、配送伝票番号を入力して下さい。ユーザが、配送状況を追跡できるようになります。
・・これ、結構大変ですよね?
値下げについて
一応、無料化された箇所もあります。
一部オプションサービスの無料化
API、CSVダウンロード、楽天GOLDまわりの細かい課金を無料化。せっかくなので上手く使いたいですね。あまり使っていない方は、良い機会なので是非案内を読んで下さい。特にAPI無料化は、ツールベンダーの動きを活発化させるはずです。今後の動向に注目です。
総括
細かいことを書く余裕がありませんので、今回はあくまでザックリ。
経常利益と比べてみましょう
負担増が「売上の1%程度」だとすると、経常利益率が5%の場合、「儲けの20%」が無くなる計算です。。まあ気分は良くないですが、、あらかじめ心づもりしておくことが大切だと思います。
負担増への対応策=利益の見える化
ここのところ、送料値上げ・原料高騰・消費税など、利益に影響を与えるような出来事が短期間で起こっています。業界内の価格競争も継続して起こっていますよね。
「締めたら赤だった」とならないよう、おおよその利益額は税理士からの報告を待たずとも把握できるようにしたいところ。最近は「EC向け利益管理のツール」が複数出てきています。簡単なやり方であればexcelでも出来ます。ここでは書き切れませんが、興味のある方は調べてみてください。
※当社コンサル先の皆さんについては適宜ご相談ください。手順とテンプレを用意済みです。利益率大幅改善の事例もあります。
あと、経験上、利益確保のためには「効果検証と無駄広告の削減」が一番効きますね。検証しましょう。
メルマガ課金への対応策=セグメント配信の促進
全配信はコストが掛かります。
よって、細かいセグメント配信を高頻度で行う機会が増えます。
となると、予めセグメントルールとテンプレ文面を決めておいて、パートさんなどに配信してもらう形が増えてくるのではないかと思います。玄人向けの言い方をすると「手動によるマーケティングオートメーション」ですねw
あとはサンクスメール、チラシ、商品パッケージ、クーポン、ブログなどなどの活用が大切になりそう。ソーシャルメディア活用については、うーん、商品次第かな。。サンクスメールとか、「必ず視界に入る媒体」が最優先だと思います。
多店舗展開について
利益と自由度を考えれば「本店」なんですが、正直、楽天は売れやすいです。個人的な体感値ですが、大抵の店では、楽天の売上10に対してamazon2、ヤフー1、本店は1~2という印象です(まあ私の知っている店という時点で結構なバイアスが掛かっていますが)。
しかし、以前から多くの方が、「楽天だけに依存するのは危険であり、複数のモールや本店に店を分散させることによって、リスクを分散し経営を安定させるべき」と言ってきました。
ただ一方で、完成度の低い店をたくさん横に広げても、運営効率が下がるだけです。なので、楽天依存度の高い店は、考え方として「いち早く1店舗目(楽天店)の完成度を高め、それをヤフーや本店、アマゾン等に展開すべき」という考え方になりますよね。
そう考えると、モールが主軸の店であっても、モール内広告やキャンペーンに便乗するような「即効性のある施策」よりも、自店舗の強みと立ち位置を見極めてコミュニケーションしていくような、「漢方的な(地味な)施策」こそが大切です。じゃないと他で使えませんからねー。なので、スーパーセールでウハウハするのも程度問題かなと思うのです。いまの売上よりも未来の安定収益が大事ではないかなと。
あ、一瞬宣伝です。当社の「楽天向けコンサルティング」は大昔から漢方スタンスです。多くのクライアントさんから、「楽天店舗向けに行った施策が、Yahooショッピングやamazonでも効果が出た」という話を伺っています。「実店舗のポスティングチラシに活かせた」との声もありましたw 今後は、より一層汎用的なノウハウを発信できるよう頑張っていきたいと思います!興味のある方は、以下のページをご覧ください。
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今回の件、かなり疲れました。。本記事のコメント欄やfacebook、X(旧Twitter)等々でコメント頂けますとやる気が出ます。是非お願いします。
あと、本件に絡み、得られた情報やお悩みのこと、考えていること、聞いた話等ありましたら、是非、情報提供をお願いします。
「表だってコメントは出来ないけど、匿名で教えてあげたいことがある!」という方は、こちらのフォームからお寄せ下さい!本件、何か思いついたら、また続報などお届けしていきます。宜しくお願いします。
PS
楽天の方へ:
今回の課金に対しては、いつもと同じく「また楽天やりやがった」という声も多い中で、「言いたいことは分かる」「大事なことだと思う」との声も多くありました。
しかし、であればこそ、1店舗1店舗に対して、どの程度のコスト増になるか、もっと丁寧に説明すべきだったのではないでしょうか(どの程度の増額になるか1店舗ずつ案内する等)。ビッグデータをアレコレできる皆さんであれば、当社のExcelよりも良いものが簡単に作れるのではないでしょうか。板挟みになって心苦しく思っているECCも少なくないはずです。
個人的には、改訂内容云々はさておき、もっと良い進め方があったのではないかなと思いました。
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