こんにちは、坂本です。
※注:この記事は2015年1月に書いたものです
一昨日、楽天のショップ・オブ・ザ・イヤー授賞式(※)のUstreamを見ながら、これまでのECの動向を色々思い出していました。
すると、ここ10年くらいの動向でなんとなく「大きな流れ」があるような気がしたんです。なので、まとめて振り返ってみようかなと思った次第。
経済産業省によると、この10年でEC業界の流通総額は2.5倍程に伸びているようです(2003年4.4兆→2013年11.2兆)。単純に2.5倍という数字だけでなく、その裏では、色んな事がありましたよね。わたしの個人的な経験を中心に振り返りつつ、未来のことも考えてみます。
※知らない方へ:楽天市場では年に一回、活躍した出店者に対して賞を贈るイベントがあります。受賞者は地方のメーカー・ディスカウンター・大企業まで極めて多様。もうちょっと知りたい方はここをクリック
- 目次 -
はじめに
改めて自己紹介
2002年に楽天入社→2008年に独立→2010年にECノウハウ本を出版→現在はEC専門の小さなコンサル会社を経営。当社の紹介はこちら。
以下の話は、個人的な経験が多く、楽天ネタ中心なので、情報としては偏っています。ご覧になった方は適宜コメントを付ける等して、補足して頂けると嬉しく思います。
ざっくり要約
「時代の節目」を感じるポイントは、人それぞれだと思います。
私の場合は、2005年、2010年、2015年。
このへんでEC業界動向の節目を感じました。それぞれの内容は後述。
枝葉の話の前に、まずはざっくり全体像。複雑で大きな流れをムリヤリ言葉にすると、絶対に齟齬が出てしまうんですが、まあ暖かい目で、ニュアンスで読んで下さい^^;
- 2005年ごろ:過去の一部手法の効果がピークアウト(※1)
- 似た手法で似た商品を売る「型の横展開」がピークアウト
- 「懸賞広告からのメルマガ」がピークアウト
- 以降活躍する「氷河期世代」の店が動き始める(後述)
- 2010年ごろ:広告効果が落ち、検索/紹介経由の来店が増える
- ネットショップに対するメディアからの取材が増える。PR戦術。
- 震災。SNSが市民権。スマホが浸透。(でもSNS集客は微妙)
- 弊社のECノウハウ本が出版^^;
「売れるネットショップ開業・運営新100の法則」(坂本悟史・川村トモエ / インプレスジャパン)。通称「黄色本」。本書では、すぐに実践できて売上が伸びる「最新テクニック」から、お店の独自性・ブランド性を深める「考え方」まで、幅広く網羅しています。主なテーマ>取り扱い商品別のネットショップ成功パターン(強みと弱み)、集客・ページ接客・リピート促進の最新版ノウハウ、お店の成長段階別・起こりがちなトラブルと対策
- 2015年ごろ:ネットとスマホの浸透で「インターネットの再編」
- レイトマジョリティがECを利用。同時にコンプラ問題発生。
- スマホアプリとSNSにより、インターネットが多極化
- 「個人の有料メルマガ」と「C2Cコマース」
- 「進化した売り手/デバイス」に呼応し、ユーザ行動も進化(※2)
※1 ピークアウトとは「頂点に達してそこから減少に転じること」です。
※2 これが、時代を読むキーポイントになると思います。相互作用ですね。
2020年に向けて、過去を振り返ろう
東洋経済オンラインの記事によると、東京オリンピックが開催される2020年ごろ、EC市場規模は20兆円台に達するとのこと。EC化率(流通総額に占めるEC比率)も6~7%。いまと比べると+80%くらいですかね。
http://toyokeizai.net/articles/-/48945
で、この状態になる過程において、「いまのEC業界がそのまま単純に拡大するか」というとちょっと違うと思うんですよね。どうなるか予想するためには、まずは過去を振り返ってみると良いのではないかなと。
ということで、10年前や5年前、そして現在
・・・という順番で動向を振り返っていきましょう。
10年前:2005年頃のEC業界
こんな時代でした
- Mixiとブログが流行っていました。「マイミク」とか。懐かしい。アメブロもこのへんから。
- 「電車男」がブーム。
- ホリエモンブーム。個人的には結構好きでした。「オンラインで会議」「社員の日報をデータベース化して集計」といった考え方は今も参考にしています。私も当時ヒルズ勤務でして、ライブドア事件の時はカメラの数が凄かった。
- 2004年に「楽天イーグルス」結成。正式名称は「ゴールデンイーグルス」なわけですが、当初「イーグルス」という名前で話を進めていたら、三木谷さんが後から「ゴールデンを入れて」と言ってきたという話を聞きました・・本当かどうかは知りませんw
- いまはテレビCMバンバンの「楽天カード」が立ち上がりました。国内信販を買収して、自社カードとして。楽天は、新しげなwebサービスが苦手な一方、ポイント経済圏とリアル金融をくっつける動きが本当に凄い印象があります。この経済圏ネタ、このあと何度も出てきます。
- 「TBS買収計画」がありましたね。ここからしばらく楽天広報の人がメディアに会うと、三木谷さんの動向ばかり聞かれ「市場や商品のアピールがどころではない」状態だったと聞きました。でも数年後、激変します。(後述)
EC業界動向
- ガラケーが全盛期。ガラケー主体の通販サイトではカラコンやネイル、ダイエット商品や化粧品等、比較的ギャルっぽい商品が人気。あと携帯ストラップ。半角カナを多用する独特の文化。
- ガラケーECといえば、個人的にはいつもCAモバイルという名前が浮かびます。
- 楽天の販促は「くじメール」とメルマガが全盛期。ソニーのVAIOやヴィトンのバッグを景品にして、その懸賞企画を広告で露出し(くじメール広告)、メールアドレスを収集。そこに宣伝メルマガを配信。
- 「1日に8通メルマガを送ってくるネットショップ」が2chで炎上していました。
- 本来の懸賞企画は、ティファニーのネックレスを景品にする→女性の応募がある→メルマガで「最近若い女性を狙う空き巣が増えています。そこで、窓ガラスが割れなくなるフィルムをこのメールをご覧の方に云々」と告知する・・といった流れです。文脈があったわけです。でも、この時代はかなり「細かい文脈よりも何件取れて何件転換させられるか」のほうに偏っていましたねえ。濡れ手に粟というか。
- 独自ドメイン店では、当時「SEO会社が運営するネットショップ」がものすごく売れていて驚異的でした。が、いまはもうありません。当時は、「集客技術だけでなんとかなっていた」ような印象です。
- アマゾンは当時、まだ本屋のイメージでしたが、少しずつ家電・玩具・パソコン等、型番商品から順番に品揃えを拡大していました。ひたひたと。このページを見ると、「ひたひた」という足音が聞こえます^^
坂本の動向
わたしの思い出話ですがお付き合い下さい。
美容健康商材
- 私は当時、楽天市場でECコンサルタントをしていました。担当ジャンルは美容/健康関係がメイン。
- テレビ番組経由で健康食品が売れまくり!あるある大事典やスパスパ人間学など。今でも売れているコエンザイムQ10は、この番組からです。他、にがりや寒天などのブームもありました。渋いところではシモン茶とか。誰も覚えてないかw
- 月商30万の店が、翌朝みたら日商1000万だったり(当然キャンセルですが)。テレビとECはとんでもなく相性が良いなあ、と感じました。で、TBSの買収作戦は、この後に起こりました。「テレビとEC」の話題、このあと何度も出てきます。
- 負の面もあります。あるある大事典は、ねつ造が発覚して番組中止。ブームになったにがりも「実はダイエット効果がない」と新聞で報じられました。寒天ブーム時は、寒天工場が設備投資をしすぎて、ブームが去った後に多数倒産したそう。。ブームは怖い。
- ダイエットサプリもよく売れていたんですが、薬事法が厳しくなるにつれ、主力が次第に低カロリー商品と移行していきました。シェイク、雑炊、豆乳クッキーなど。「痩せる」って言えますからね。
- 豆乳を練り込んだ「豆乳クッキー」。食べると満腹感が出るとして、一時期ブームになり、上場までしました。が、(1)高い(2)真似やすい。多くの会社が「安い類似商品」をどんどん出しました。今も売れてますね。で、本家は次第に目立たなくなっていきました。一般名詞の組み合わせだから商標が取れなかったんだろうなあ。。オリジナル商品を出す人は気をつけましょう。模倣対策。
- で、その本家・豆乳クッキーの会社。しばらく目立たない感じでしたが、最近は目立っています。なんと、いま一番CMで目立っているダイエット。「ライザップ」の会社なのです!うーんすごい。見事な復活劇。
- いま楽天ショップオブザイヤーの上位店と言えばドラッグストアですね。爽快ドラッグはこのあたりからスタートです。実は住友商事と小林製薬の卸部門との合弁企業。でもドラッグストアジャンルの礎を築いたのは、地方の小さな薬局から攻め上がったチャレンジャー達だと思うのです。
※色々語りたいことが多いですが、涙を呑んで割愛。
新規店舗の支援
- そのあと、社内の異動でスタートアップ段階(出店したて)の店を支援する部署に移りました。本当に苦戦している店が多く、サポート体制不足だったので、人的サポートを補完すべくサポートサイトを構築していました。
- ちなみに、当社ノウハウ本で出した「ネットショップの4タイプ分類」はこのあたりから始まっています。10年前から同じ事を言ってるわけですね。(ちなみに当社内では現在「8タイプ分類」で運用しています)
- 低単価コミコミ商品を促進しました。食品を中心に、新規客獲得の為に「千円均一送料無料コミコミ特集」に注力。リピートを目論んでのことですが、リピート促進施策を上手く浸透できず、収益に繋がらないケースも多く。。順番が逆ですね。いまもこの傾向は残っていますが・・気をつけましょう(深く反省)。
- 「メール便を使った商品無料商品」がこのちょい後から増えてきました。サプリメントや粉末の酵素、干し芋など。「お買い物マラソン」という複数店舗での買い回りを促進するイベントと相まって、手法として浸透しましたね。この頃から、Eコマースの「低単価化」と「購入頻度向上」が起こってきたという印象があります。
- この過程で「入口商品」という言葉を作りました。多分自分が。ダイレクトマーケティング業界では「フロントエンド商材」と呼んでますが、ネットショップ業界には向かないかなあと考えて「入口商品」と言い換えてみた。
- 「この頃から楽天に出店した店」は、個人的には黄金世代のような印象です。もっと古い店と違って、「大手や先行するライバルがいる前提で品揃え等を企画した」からなのかなと想像。いわば「氷河期世代」。
- 逆に、これより以前のネットショップでは、いわば「フランフラン(リアルの有名店)がECをやっていない頃に、『フランフランみたいな店』として売れている状態」だったりします。この場合、本物が出店してくると、差別化が課題になります。「居るはずの競合がいない」という状況は必ず覆されるので、美味しい状況に甘んじてはいけません。
- 氷河期世代的な、「絞られた店が強い」という話は、このあとまた出てきます。
5年前:2010年頃のEC業界
こんな時代でした
- ソーシャルゲームのCMが増えまくり。
- 食べるラー油やグルーポン(と類似サービス)も流行りました。
- スマホが浸透し始める。「日本は独自に進化したケータイがあるのでさほど伸びないのでは」という方もいましたが、見事に勢力図は変わりました。
- スマホは「携帯電話」の定義を越えて、腕時計・デジカメ・ゲームなど、色んな業界にダメージを与えました。いわゆる「代替品の脅威」。
あと、2011年ですが、震災。
- 私、当時はもう楽天を退職→独立して、自宅で仕事をしていました。テレビで痛ましい映像を見つつ、枕元には靴をおいて寝ていました。暗い気分でしたが、「ポポポポーン」には救われました。
- X(旧Twitter)が活躍。デマ拡散という側面もありましたが、社会インフラとして存在感を強く発揮。あとパーソンファインダーなど、Googleの活躍は素晴らしかった。
- 自分もX(旧Twitter)+Googleマップで、都内の帰宅難民向けの「受け入れ所まとめ」を制作。弊社の取引先が福島にあるんですが、そこの社長さんも同様に「給水所まとめ」を作ってました。
- ただ、個人的にはX(旧Twitter)でいろいろ疲れて、実はあれ以来触ってません。そろそろ再開しようかな。
震災とEC
震災とEコマースの関わりについては、いろいろ印象深いことがありました。
- 特需で特定の商品ばかり売れる。野菜セットやランタン、乾電池など。野菜セットは凄かった。あれでOisixの定期購入がすごく伸びたとか。
- 乾電池を不当に値段を釣り上げて売るような悪い人もいましたねえ。X(旧Twitter)で拡散されて、すぐに撤退したり。「ECとコンプラ」の問題は後でまた出てきます。
- 並行して、「苦しんでる人、困ってる人が多くいる中で、自分のような娯楽商品を宣伝していいんだろうか?」などと悩む人も多かった。
- これは「商売の大義」を考える機会でもありました。当時「チャリティー企画についてまとめた記事」を書いたんですが、その後半に、そういう話を書きました。
震災や災害の影響で、お客さんの購買意欲が萎縮し、売上が低下傾向のお店が少なくありません。しかし、復興のためにも健全に経済を回していく必要があり、そのためにも一定以上の売上は確保したいところです。今回は、被災地への援助と自店舗の売り上げを両立する企画として、店舗ごとに開催するチャリティー企画の内容例をまとめてみました。企画検討のご参考にしてください。
- 震災から何日か経った後、私が飲み屋に行った(=経済活動)とき、店を選んだ基準は「節電してる店」でした。「価格や品質以外の判断基準」が強まった心理を、いち生活者として心底体験しました。
EC業界動向
楽天の動向
- 楽天は2011年に年間流通総額1兆円を突破。三木谷さんは昔「楽天が1兆円を超えたら、一丁あがりで俺は引退する。」という濃厚な昭和ジョークをかましていましたが、その後もご活躍です。EC業界のポテンシャルが、昔の三木谷さんの予想以上に大きかったということなのかなと。
- 楽天銀行とedyの買収。楽天カードに続く打ち手。10年かけて楽天カードがああなっているので、こういう打ち手はネット系のそれと違って長~く効くんでしょうね。
- 台湾など海外展開をし始めた時期でもありました。元同僚が世界各国に飛んでいて、凄いなあと。当時の私は、独立したばかりで、自宅で引きこもり気味に執筆活動に励んでいました。
- Amazonの動きが加速したのもこの頃。本以外の品揃えをガンガン拡充。2008年頃ですが、アマゾン動向についてブログ記事を書きました。2008年なので、我ながら良い読みをしていると思いますw
先日、南米っぽい名前の某ECサイトの人と飲んだ。改めて、当日配送はスゴい競争力だと思う。ネットスーパーとの違いは生モノの有無くらいになるんじゃなかろうか。 スピード配送時代、店舗はどう対応すべき? そんな、スピード配送の時代にあって一般店舗の選択肢は4つ。(特にカクヤス・アスクル的なNB商材を取り扱う店なら、無視は出来ないはず) ネットショップの選択肢は4つ スゴい物流に在庫を預ける(クール便対応のところもあります) スピード以外の強みを付加・強調(「手作りだから1週間掛かります」「買い忘れのない定期購入」など) 自前で物流体制を作る(他店に貸してお金を貰い、運営費を安く上げる) 放っておく 差別化戦略は店舗次第。打ち手は色々ある と、ここまで読んで「ウチも検討しなきゃ」と思ったあなたに向けて、もう一個別の話をします。早ければいいってものではないと思うんです。早いだけが差別化ではない。 ど
ECとメディア
- 「ネットショップのメディア露出」が一般化してきたのも、このころからだったように思います。メディアと連携しての動きというのが非常に目立ってきました。TBSのアレが解消されたからですかね。
- 大きなインパクトがあったのが、訳ありブーム!いろんなお店が訳ありを作ってましたねえ。。「訳がない物に訳を付けて売る」ためにわざわざ外箱を潰して「箱が潰れているので安い」とかw
- ネットショップが「広報戦術」に目覚めた時期だったのではないかなと。
- 消費者側も、単に値引きを求めているだけではなく、「インターネットを使うと賢い買い物ができる!」と目覚め始めたタイミングだったように思います。
- 全国の百貨店と組んで楽天が行う物産展「楽天うまいもの大会」もこのへんからでしたっけ?ネットショップが沢山並んでテレビがガンガン取材しているさまは、古いEC人としてはすごく新鮮でした。
- メディアとの連携と言えば、スカルプDがブレイクしたのもこの頃。当時、吉本と連携して企画。雨上がり決死隊の宮迫の髪の毛が増えたとか増えないとか。ちなみに、スカルプDは2005年の段階で、既に楽天で売られていました。当時は、医者が作ったシャンプーというふれ込みでしたが、吉本との企画で大きくブレイクしたと思います。
- 大企業・有名ブランドの出店が一般化したのもこの頃じゃないかな。それまでは、「ネットで物を売るとブランドが下がる」「ネットショップは勝手に安売りをする困った存在だ」という印象だったのが、このへんで覆って、大手が積極的に参入するようになってきた・・気がします。
販促手法
- 懸賞企画の減少。今では、プレゼント企画をやっているようなネットショップはほとんど見ませんよね。昔は「やってて当然」でした。
- 前述のように、昔は、どういう店のプレゼント応募に応募したか分かっていないお客さんに対して、メルマガをどんどんと送っている店がも多かったです。まずドロップせずに懸賞応募してもらう→次にメールで店舗/商品を認知、という順番で設計したわけですね。
- かつての懸賞企画は「ECが一般的ではない時代に、懸賞企画後のメルマガで安心感信頼感を伝えていく」という方法論だったと私は認識しています。このあたりからECがかなり一般化して、これをやらなくてもザクザク売れるようになってきたのかなと。
- モールの中でも、純広告全般と比べ、相対的に検索連動型広告が注目されるようになってきましたね。
- モール内の検索対策が流行り始めました。これに触れたのは、弊社の書籍が最初だったかと思います。いろんな悪い手口も流行りましたが、お客さんと検索アルゴリズムの作り手の気持ちを先読みして「伝わるように書く」のが一番です。迷っている方は、改めて弊社の本を読み直してみて下さい。
現在の人気店が出揃う
- この頃「楽天ショップオブザイヤー受賞店舗が倒産」という事例も多かったように思います。最近はないですね。
- 前述の「氷河期世代」のお店が活躍。昔と比べると「より狭い分野にフォーカスした店」が強くなってきた印象です。
- 昔、こういう話を聞きました。ある人が「義理チョコ専門のECサイト」を立ち上げました。いかにも売れそうです。しかし全然売れなかった。なぜなら当時まだ1990年代だったから。つまり、ネットで物を買う人が少ないため、「ニッチ市場に該当する潜在客数が少なすぎた」。
- ECが浸透し、ネットで買い物する人が増えると共に、かつては成り立たなかった「深くセグメントされた店」が、成り立つようになってきたわけです。潜在客が増えたので。更に浸透すれば、更に更にニッチな市場が成り立ちます。
- 加えて、特化型店舗は、絵になりやすいので、メディア露出しやすい。同時に、広告の効果が減少。そう考えると「絞った店」が強いのは当然の帰結だなあとも思えます。
- 一方で、商品数を増やして多店舗展開して・・という面の戦略のほうが売上自体は高いとも思います。ひっくり返されるリスクはありますが、ひっくり返されにくい規模にして対抗する感じですね。多店舗展開する店がどんどん増えましたね。Amazonも有力な出店先になりました。
坂本の動向
私は、2008年に独立しました。本を出す前に、まずはブログから始めました。このブログですね。「うどんバカ店長」さんよりも早くバカを名乗ったのが自慢です。
初めて書いた記事は「スナックに学ぶEコマース失敗事例」。一発目から斜め上でした。
そのあと、ネットショップの運営代行をしたり、前述の、2005年頃から使っている「4タイプ分類」を題材にして講演などしていました。その後、インプレスさんとご縁ができて弊社書籍(黄色本)の出版に至ります。
おかげさまで10回増刷され、25,000部以上を販売。似たようなテーマの本もありますが、今でも一番売れているようです。
多くの会社で勉強会の資料として使って頂いていて、お店の人に会っても楽天ECCに会ってもヤフーの人に会っても「まわりは皆読んでます」と言って頂けます。ありがとうございます。
実は、1年以上掛けて書きました。ここまでご説明した通り、この時期は一つの転換期だと感じていたので、新しい流れを上手く盛り込もうと考えました。まあまあ出来たかなと思っています。
ただ、スマホの動向が読めず、初期の技術はすぐ陳腐化するだろうと考え、一切載せていませんw 言いたいことも増えてきましたし、そろそろアップデートしないといけないかもしれません。。うーん。
現在:2015年頃のEC業界
ということで、現在に帰ってきました。
2013年以降くらいのイメージで振り返ります。
こんな時代です
- もうとにかく予想を遙かに超えるスピードでスマホ化が進みましたねえ。。
- かつて2000年頃、ADSL回線が普及して、いつでも高速にネットが閲覧できるようになり、これによってインターネットの利用が飛躍的に伸びました。もちろんECも。ちなみに当社のメンバーはテレホーダイなんて知らないそうです。若い。
- 今後モバイルの通信規格が更に進歩すると、更に更に利用が増えるんでしょうね。
- SNSという言葉は、もはや老若男女問わず説明なく使われています。電車男の時代(2004)とはえらい違いだ。
- テレビ見ながらスマホ。電車に載りつつスマホ。食事中にスマホ。そして人に見せる。アップする。拡散。情報探索や比較検討行動が変わってきていますね。「ユーザの習慣の変化」は、技術よりもゆっくりと起こりますが、技術以上に大きなインパクトを産むはず。これらの習慣が今の3倍浸透したら社会はどうなるか。
- たぶん多くのフランチャイズチェーン本部を震え上がらせた「バカッター」も話題。最近は見ませんね。FC本部の勝利か。
- 3歳児でもYoutubeを見る時代。動画の一般化。アップロードも簡単。そういえばわたしガジェット(PC/スマホ周辺機器)が好きなのでよく検索していますが、youtubeで、小中学生くらいの子供がガジェットの商品レビューしている動画をやたら見かけます。youtuberみたいな感じで。で、そこに他の子供がコメントを付けている。ううむ。ここも要チェックだなあ。。
- 「ECと動画」は意見が分かれるところではありますが、前提として「ECの動画=テレビショッピングみたいなもの」とは思わない方が良いと思います。既存手法が動画に置き換わるのではなく、融合してハイブリッド化するはず。
EC業界動向
レイトマジョリティとコンプライアンス
- 2012年から始まっているので、ちょっと前の話ではありますが「楽天スーパーセール」。
- 長年テレビCMを避けてきた楽天が(確か一瞬やってすぐやめました)、テレビCMと連動し、半額という価格訴求を前面に出して、本格的にアプローチ。今では定番化してますが、最初のインパクトは本当に凄かった。
- テレビなら、情報感度が高くない(普通の/ネット民ではない)客層にアプローチできますよね。こういう人をレイトマジョリティ層といいます。スーパーセールの歴史的な意義は、レイトマジョリティ層にECをぶつけ、圧倒的に大きな反応を得た、という点にあると思います。
- 弊社は日頃、比較的小規模のネットショップをコンサルティングしていますが、スーパーセール開催中は「ほとんどの店で売上が3倍以上」になりました。当時の驚きは、下記記事にまとまっています。ただまあ振り回されすぎても危険なので、これを機に、逆に自店のありようを考え直した方も多いですよね。
こんにちは、坂本です。今日は楽天出店者向けの話。 3/4、楽天スーパーセール。当社で把握できた状況をシェアします。 楽天スーパーセール、すごい売れました あちこちでCMして、新規顧客を楽天市場に呼び込むのが目的、でしたよね。 . いやー、売れましたね。。 普段、当社の楽天店舗向けコンサルティングでは、普段の売上(ベース売上)を伸ばすのが第一と考え、「『低コストで効果の高い基本施策』を徹底し、イベント対応は二の次」というスタンスでやっていました。 特に、当社の楽天向けコンサルは、年商1億未満のお店が対象ですしね。商売は続くので、イベント時よりも平常時の売上を重視しているわけです。 しかし! 今回ばかりは、考えを変えざるを得ない結果が出
- 2013年秋、「楽天イーグルス優勝」とスーパーセールとの連動は、更に記録的な結果を生み出しました。同時に、あの有名な二重価格問題が起こりました^^;メディアで、あちこち取り上げられました。このブログでも取り上げました。
こんにちは、坂本です。 今回のテーマは「脱・二重価格」。 楽天日本一セールにおける二重価格問題に端を発して、EC業界がザワザワしてます。このシュークリーム高いよねハハ、っていう話ではありません。 本件は、今後のECの行方を考えるにあたり、非常に示唆に富む出来事だとも考えています。ちょっと時間経っちゃいましたが、大事なことなので記事化しました。誰かを悪者にして済ませるのではなく、深掘りして考えることに意義があるはず。まずは現状の整理から。 11/19追記:楽天の法律担当の方から、本記事について「ここ間違っているよ」ということで、幾つか丁寧にご指摘を頂きました。訂正箇所には取り消し線を引いています。お詫びして訂正致します。 ※EC関係じゃない読者さんも多いので、比較的基本的なことも説明しています。 ※二重価格やってない方にとっては対岸の火事だと思いますが、役立つ話もあるので最後までお付き合い下
- 当時、楽天の高橋常務とお会いして色々お話を伺う機会がありました。取材取材で相当お疲れのようでした。多くのリアル小売業では、二重価格問題は曖昧なまま残っています。そんな中で、楽天が率先してしっかり対応したのは凄かった。
- ヤフー無料化への差別化×コンプラ=「プレミアムモール訴求」という方向性かなと。出店審査が厳しくなり、さほど店の数は伸びなくなっていますね。
- と考えると、アマゾンへの差別化×既存店重視=「がんばるおみせ訴求」かな。
- 余談ですが、私は楽天が英語化される前に退職したので「楽天スーパーDEAL」の命名がよく分かりません。
業界地図
- 楽天とAmazonが二強となり、激しい争い。楽天がAmazonのようになり、Amazonが楽天のようになり、お互いが近づくのかなと思っていました。ただ楽天は、物流やkoboで苦戦。Amazon側は楽天の「ひとけ」「おみせ」感は出ない。といった感じで、似てくるのはここまでだろうか。
- と思ったらアマゾンに「松居一代ストア」が登場。「テレビショッピング風のお買い物」・・だと・・。うーむ。何とも独特。
- 間に挟まれた、ヤフーショッピングの無料化(ヤフオクも)。以前からの出店者からは「店がすごく増えたが、そのぶん自分の売上げが減った」との声が聞こえます。ヤフー全体としては伸びているとのこと。
- ヤフーが無料化を打ち出したときの仮説は「店が増える→商品数が増える→お客さんが集まる」でした。実際にお客さんがどう集まるのか勝負所です。
- 世間のスマホ化に対して、ヤフーはPCが主力なので、そのへんに危機感があったと聞きます。タオバオを真似ているとも聞きます。
- 当時、この件をブログに書いたら、反響がかなり大きかったです。それまで、私の書くブログはEC業界内だけの反応だったのが、一般の雑誌の人が取材に来たり、証券アナリストの方が来て、海外の投資家に対し日本のECについて(分からないなりに)説明するような機会もありました。ちなみに通訳付きだったので私は「サンキュー」しか言っていません。
こんにちは、坂本です。 昨日10/7に発表された、Yahooショッピング無料化について。 facebook上で「Yahooショッピング無料化について語る会」というグループを作ったら、272人の方にご参加頂き、色んなお話を伺いました。なので、ちょっとまとめてみます。 グループの外でも色々お話を伺ったのを色々混ぜてあり、主観的で乱暴です。まあ、こういう話もあるかもねくらいで、軽く読んで下さい。 大きな動きの裏を読むのは楽しいもので、上記グループ内では様々な説が飛び交ってますw あと当日カンファレンスに出た方からも色々情報を頂いています。ナマの声を読んでみたい方は、参加してみて下さい(もちろん無料)。 さて今回は、前編・後編でお届けします。こんにちは、坂本です。前回の続きです!アツいです! その後、facebook上の「Yahooショッピング無料化について語る会」グループは、メンバー535人になり、色々な方に情報を頂いています。皆さんありがとうございます。今回の話も、主観的で乱暴です。信じるか信じないかはあなた次第。都市伝説だと思って気軽に読んで下さい。 続報 皆さんご存じかと思いますが、その後についてさらっと説明します。 出店希望が殺到の件 たった1日で出店が激増……ストア10,000件、個人16,000件 予想通りの展開ですね。ただこれ、未審査の状態ですから、
- 昔と比べて、EC業界への注目が高まっているんだなーと思います。
- 個人的には孫さんのプレゼンには共感しませんでしたが、担当役員の小澤さんから発信される話は、ECの未来を差し示していると思います。昨年末のこの企画は面白かった。
- ちなみに私、某県の職業訓練で、ECを勉強中の実習生がとあるメーカーのネットショップを作るという企画をお手伝いしました。オープン後、ある程度売れているようです。この企画で使ったのがヤフーショッピング。こういった形で、「低予算でECを始める」という裾野は広がっているでしょうね。
- という流れの中で、昨年の楽天の値上げ。強気の表れですねえ。いくらコストが上がるのかが複雑すぎて計算できなかったので、弊社で試算Excelを作って配布しました。(弊社スタッフが)本当に大変でした。まだ使ってない方は是非。値上げの是非はさておき、もうちょっと優しい進め方が出来たのではと思います。
- メルマガ配信課金は、「やりようによっては伸ばせる楽天のポテンシャル」を損ねていると思うなあ。単に沢山出せば良いとは思わないけど。。
- フリルやメルカリといったCtoCが流行っていますね。C2Cそのものも要チェックではありますが、C2Cで何かを売りたい/表現したい「という人に対して何かを売る」事業者が来るんじゃないかなーー
- かつてインターネットサービスは、PCの「1つのブラウザの上」で様々なサービスが動いていました。しかし、スマホでは「それぞれのアプリ上」でサービスが動きます。アプリによってインターネットが分割されていくような印象を持っています。
- ヤフーも楽天も格安スマホを売り始めました。「ウェブの会社が端末を作って配って導線にする」時代なんですねえ。スマホの低価格化は、ガラケー層をネットに接続する効果があると思います。ここからも消費者の行動が変わる。
- 楽天が郵政と提携して、郵便局内に「楽天の荷物を受取る宅配BOX」を設置。このBOX、駅などにも設置予定だそう。アマゾンはローソンと提携。施設側は、来訪数の増加を期待してるんでしょうかね。かくのごとくECプラットフォーマーの戦場は、空中戦から地上戦へと拡大。各社のロゴが、リアルで目に付くことが増えました。
※未来予測は色々楽しいですが、一旦割愛。
販促手法
難易度が上がってきています。
- ライバルが増えた。楽天で言うと、2万店舗が4万店舗に。
- ある程度良いデザインで当たり前。一方で制作側も価格競争があるので、「ある程度のものを安く作れる」時代にもなっています。と考えると、資本力ではなく「企画下手」「発注下手」こそが問題。
- 競争を考えるとき、「価格と品質のどっちか」で考えるのは、ドツボ行きだと思います。たとえば「うちは品質がいいから高くてもいい」「あの店は品質が低いから安売りをしている」といった考え方ですね。
- 価格と品質は、大抵どっちかが高ければ、どっちかが低いもので、この2つだけで考えている限りでは、いつまで経っても消耗戦。「価格と品質以外に何があるのか?」という観点こそが必要。
- 「おもてなし」と唱えていれば売上が伸びる的な話もありますが。節子、それは「おまじない」や。
- はい、このブログの「いつもの話」ですが、必要なのは顧客への理解だと思います。お客さんがどういう気持ち、どういう事情で買い物をしているかのプロセスをよく考える。例えば「量がごっそり減ってても小分けにしてくれた方が助かる」シーンがよくありますよね。一方で、塗料をドラム缶に入れて安くすると、業者やセミプロが買っていったりもします。或いは、補整下着のXXLサイズが、なぜか男性名義で売れたりもします。
- つまり、いろんなお客さん、いろんな事情、いろんな判断基準があります。ブランディングとか、サービス業化とか、ストーリーを語るとか、お客さんにいろいろ教えてあげるとか、お客さんの声で企画を作るとか、メディアを作るとか、いろんな考え方がありますが、全ては、この顧客理解から始まります。
- 昨今、「アマゾン(的な存在)への危機意識」から、本当に色んな考え方・流派が語られるようになりました。それぞれ合っていると思いますが、どのような手法であろうと、顧客への理解を外していては、何一つ上手くいかないと思います。
- これは弊社書籍にも書いている話で、10年前からでも言われていることではありますが、今は、本当に全てのEC事業者が、「この命題から逃げられない」所にきていると思います。
- とは言え、外に逃げるという道がまだ残っています。「越境EC」です。海外販売。
- しかし、ある人の名言曰く「『海外という国』はない」。「外国人という国民」もいません。海外と一括りにせず、どの国のどういうタイプの人なのか、それらを把握せずに、漠然と海外というイメージで売ってはいけません。大きな括りで見ても、ヨーロッパ人に売れる商品とアジア人に売れる商品が違うのは、簡単に分かりますよね。
- つまり、ここでも、結局は顧客理解です。しかも外国人ですから、「自分が直感では理解できない相手」に対して理解しようとする姿勢が大切なんじゃないかなと。実際に越境ECで成功している方は、やはり単純に海外というイメージではなく、現地の人と一緒に働くなどして、お客さんの姿をよく理解しようとしているようです。
- 次の10年は、この顧客理解の進歩と、そこから生まれる「様々な角度からの買い物支援」がEC業界を動かしていくように思います。
- 近々SOY受賞店の方々とお祝い飲みをすることになったので、そこでも色々聞いてみて、書けることは書きたいなあ~。ECの世界が広がっているので、座っている場所によって見える風景も違うはずです。
坂本の動向
近況です。
その後も本が売れて、コンサルティングのご依頼を多く頂くようになりました。ECや小売で実績のあるメンバーを増やし、「チームでコンサルティング」する体制になりました。
メンバーの出身母体は様々で。ネットショップ(SOY受賞店も)、リアル小売、エンジニア、ライター、元楽天など。
昔は私が一人でやっていましたが、ECは本当に複雑になってきたので、もはや一人の知識だけでは上手にコンサルティング出来ないように思いますねー。。
で、「やることが増えて大変」なのはネットショップを運営している人も同じです。あと一歩改善したいなという方はお気軽にご相談下さい。(宣伝でした)
あとは、ぽつぽつ講演したり寄稿したりしています。最近の実績はこちら。
まとめ
以上、大変長くなりましたが、「過去10年のEC業界動向」をざっと振り返ってみました。
ちなみに、私が独立を考えはじめたのがちょうど10年前でした。
当時、ネットショップや会社を経営している人とたくさん話をしていました。楽天社内にも魅力的な方は多くいらっしゃいましたが、自分の腕で世の中と向き合っている人達は、いち営業マンだった私にとってある意味ヒーローでした。
で、それから2年程経って、上司に「『中小企業のオヤジ』になりたい」といって退職しましたw おかげさまで、最近は、予定以上に中年らしくなってしまいました。
思い返せば2010年、弊社が書籍を出した頃は、「大きい会社に小さな店がやられてしまうのではないか」と心配しましたが、いまのところ、市場の拡大ペースが早い(=上昇気流が吹いている)おかげもあり、小さな店がバタバタと倒れる・・という事態にはなっていません。良かった。
しかし、もうしばらく経って、おそらく東京オリンピックが終わる頃、成長のペースは鈍化するような気がします。そうなった時でも埋もれてしまわないよう、今から腕を磨いて、光る店を作っていく必要がありますよね。
その為には、先程申し上げたように、結局「自分のお客さんに寄り添って理解しているかどうか」というのが、ポイントになるかと思います。
そして、そして、お客さんのことをより深く理解できるのは、小さなお店のはずです。お客さんにフィットする存在になれるのは、シンクロしあえるのは、お客さんと近い距離で沢山のコミュニケーションができる「気持ちの行き届いた、小回りの効くネットショップ」だと思います。我々は、そういうお店にくっついて支援していきたいと思います。
次の10年も頑張っていきましょう。
私もがんばります。
PS
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カテゴリー: ECの未来