「売れる店の条件」は、もう変わっています

こんにちは、坂本です。

「この先、自分の店はいつまでやっていけるかな」「今よりもっとライバルが増えたらどうしよう」なんて、考えたことはありますか?

今回は「これから商売の世界で何が起こるか」「それを踏まえて何をすべきか」を、シンプルな例え話で、分かりやすく説明してみます。

※以前書いた記事を編集して再掲しています。少し前の話ですが、まさに今の話だなあと思ったのでピックアップしました。

未来の商売は「イヤになるほどガラス張り」

これから未来に向けて、「店選び」のインフラは、より進化していきます。

色々なことがガラス張りになり、ユーザにとって比べやすく/選びやすく/買いやすくなっていくと思います。カンタンにいうと「色んな場所に散らばった店舗&商品情報がまとまって、カンタンに比較できる」ようになる(AIのレコメンド付きで)。

一方でそれは、「古いインフラの上で成立できていた商売」を脅かす可能性を孕んでいます。お客さんは便利になる一方、埋もれてしまう店も増える。ということです。

これは、未来の話ではありません。似たような現象は、これまでも起こってきました。ECに限らず、世の中全体において、「便利になると競争が増える」という力学が働いているんです

例えば、「道路が整うと町が寂れる」という現象が起こります。この話が例え話として分かりやすいので、以下、解説していきます。

道路のせいで寂れた町

私の祖父母は、高知のとある漁師町に住んでいました。山と海に挟まれた小さな街です。私が学生の頃に祖母とこんな話をしたことがあります。

  • 祖母「もうすぐここにトンネルが出来て、隣の町と繋がるよ」
  • 私「じゃあ町に来る人が増えるね」
  • 祖母「いや、隣町に行けば用が足りるから、こっちの病院がなくなるんだよ」

トンネルが開通したことで、町が寂れる。繋がったことで、地域内の店舗・施設は不要になったわけですね。これが「インフラの発展で店が埋もれる」現象です。純朴な学生だった私はショックを受けました。

影響は、店に限りません。この漁師町は、昔は鰹漁で儲かってましたが、いまは、鰹が水揚げされません。なぜか?物流が整ったことにより、高知に水揚げする必要がなくなり、静岡の焼津などに水揚げされるようになったそう。若者も町を離れていきます。

そんな感じで、インフラが整うと「対象範囲を拡大した競争」が発生し、それに伴って「範囲の外にいた競合がやってくる → 弱い事業者が売れなくなる」現象が起こるわけですね。この傾向は、いまも起こっていますし、今後も起こり続けます。ECも同様です。

もちろん「地域の外のお客さんも呼び込める」という観点もあります。ただ傾向として「大きい町の店は大きい」ので、パワーゲームだと、小さい町の店が負けがちです。

国際分業もそうですね。(いま停滞してますけど)TPPとか。競争範囲が国境を越え、国内だと競争力のあった事業者が、国際競争では不利になります。そういえば、これから中国企業の進出も増えるでしょうね。EC業界でも。

ローカルでの強み≠全国区での強み

交通手段の進歩やインターネットの登場によって、地域内競争が、域外に拡大します。すると、強みだったことが強みじゃなくなるんです。つまり、ローカルでは強みだったことが、全国区(範囲を超えた競争)になると、強みでなくなるわけです。

たとえば田舎の人気店を想像して下さい。人気のレストラン。どんなイベントもそこで開催されます。結婚式の二次会も法事も同窓会も普段の飲み会もランチも合コンも。子供も大人も、みんなのインフラ。人気メニューは、チーズハンバーグ。

で、地元で人気のその店は、そのチーズハンバーグは、都会に進出して、戦っていけるのか。大抵、難しいですよね。

地元ではちょっと有名だったとしても、全国区ではそうでもない。全国のチーズハンバーグと比べると、そうでもない。全国区では、なにか自分が図抜けていられる強みを見つける必要があります

たとえば、前述の地元のレストランは、チーズハンバーグだと全国に通用しないけど、「漁師町のかつおバーグ」が全国でバズったりするわけです。

なぜなら、比較範囲が広がるとライバルが増えると同時に、接触できるお客さんの人数も増えます。ど真ん中は激戦になりますが、ニッチ気味のポジションは、逆にチャンスが増えるわけです。

競争激化「後」を見据える

ECは「地域外競争」の典型です。かつて、「ネットショップを始めた会社」は、垣根がなくなることの恩恵にあずかりました。かつてECは、中小企業の味方でした。

しかし今度は、その垣根が更に低くなると共に、EC市場拡大により大手の参入が増えました。今度は、ECや地域外競争の「容赦のなさ」が、中小企業を脅かします

なので我々は、商圏と商圏が繋がり、競争が激しくなった「後」を見据えて商売する必要があります。いまよりも厳しい市場環境になっても通じる、自店舗の武器は何なのか。

要は、トンネルができて隣町と繋がったら、地域外競争の発生です。隣町のレストランとお客さんを取り合う事態になります。チーズハンバーグで対決するのも手ですが、でも「漁師町のかつおバーグ」があれば、競争を避けつつ、隣町からお客さんを呼ぶことができます(隣町は漁師町ではない=競争になりえない)。

大切なのでもう一度書きます。テクノロジーが進歩すると、ガラス張りになって比較可能範囲が増えます。比較範囲が広がるとライバルが増えると同時に、接触できるお客さんの人数も増えます。ど真ん中は激戦になりますが、ニッチ気味のポジションは、逆にチャンスが増えるわけです。

市場のガラス張り化、地域外競争の激化、といった現象は、漫然としていれば競争激化です。市場の拡大と見立てればチャンスになります。

で、傾向としては、市場が拡大した場合、明らかに「絞り込んだ方が有利」です。たとえば弊社のクライアントさんの中には、コンサル開始前と比べ、月商が100倍になった方がいます。一瞬「一般的な売れ筋」を扱った時期もありましたが、やっぱり品揃えを絞り込みました。安売りはしません(むしろ値上げ中!)。メディアからの取材が途絶えません。

トンネル開通後(競争激化後)に合わせた「絞り込んだ商売」をしているので、強いわけです。以前の「楽天EXPO講演レポート」でご紹介したヒカリスポーツさんも、まさにそうですね。

「売れた」はゴールではない

こんなめんどくさい話しなくても、お手軽な売上アップの方法論は色々あるわけですけど。。

ただ、今も昔も、そういうワザを使って売上を伸ばした人が、そのワザに依存して独自の強みを作らないことで、しばらくして売上げ急落し、でも既に固定費がアップしていて、身動きも取れず、今更独自の強みなんて作れませんどうしよう、っていうケースが後を絶たないわけです。

実際、いまEC事業で売上の高い人複数から「『広げる』以外の特技がないので最近ヤバイ」「いまのやり方にリスクを感じているんだけど『今更やめられない』」というお話を伺いました。

「いま使えるテクニック」で売れても、「トンネル開通後」の競争力がなければ、トンネル開通で一気に状況がひっくりかえる可能性があります。

なので、大切なのは、今の売上ではなく、「トンネルが開通した後(いまより競争が激化した後)」でも買ってもらえる理由を持っているかじゃないかなーと思います。

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以上です。

おわりに

再編集してますけど、元記事は、実は2013年に書いた話なんです。 私が「ヤフーショッピング無料化」のレポート記事を書いたとき、余談として書いた話なのでした。懐かしい。元記事はこちら。

当時考えてたことが、いま現実になってます。当時から変わっていないというか首尾一貫しているというか・・私、いつも同じ話をしていますね。で、楽天さんからこういう話を求められてEXPOで講演した次第です。

こんな感じで時代は変わり、世の中はガラス張りになり、大手は一気に中小をねじ伏せようと「的確な模倣」を仕掛けてきます。そんな中で我々中小企業はどうするのか。

パワーゲームなら勝てません。でも、多様性を持って立ち向かえば道があるはずです。いつも書いていますが、イオンVS商店街の時代と違い、今の世の中は多様化に向かっています。だから我々中小企業は多様性を発揮すべきです。皆が同じことをしていたら、まとめて潰されます。それぞれの考えで、それぞれ持ち味を、それぞれのお客さんに向けて発揮すべきだと思いませんか

弊社では、こういうスタンスで店舗支援(コンサルティング)をやっています。裏技小技も案内しますが、それ以上に本質や根幹を重視する・・というスタンスは以前から変わっていません。時代状況のせいか、最近はすごく依頼が増えています。

個々の戦術は模倣可能ですが、お店の根幹については、コピペで使える安易なノウハウはありません。よく見て、よく考え、挑戦を重ねるのみです。

私はそんな志がある人と一緒に仕事がしたいです。一緒に「かつおバーグ」を作りましょう!

PS

ちなみに、弊社の書籍「黄色本」の後書きにも、こんな事を書いています(クリックで拡大)。出版したのが2010年なので、あれから7年以上が経ちました(早いなー)。何年同じ事を言い続けているんだ自分。。

※知らない方に説明します。これは(たぶん)業界で一番売れているECノウハウ本です。今年また増刷掛かりました。一部無料で読めますので、興味ある方はこちらからどうぞ。

PPS

弊社コンサルティングは、アルバイトを1人雇うのと、さほど変わらない費用です。興味のある方は、以下ページからご検討下さい。

カテゴリー: ECの未来, 売上アップのヒント

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