こんにちは。坂本です。
コンサルティングをしていて、いろいろな会社の経営に関わり、お話を伺う中で感じたことなんですが、経営上のトラブルは、大体「社長の盲点」が原因で発生しているように思います。
経営者のみなさんは、会社全体と世の中を見通して意思決定して、メンバーがいる場合は指示を出してと忙しく働いてらっしゃいますよね。そんなふうに日々状況判断して指示をする社長さんに「盲点」があったらどうなりますか?
「大事な局面で判断を間違えた」「致命的なリスクに気づけなかった」「やるべきことがもれていた‥」などの問題が起こってしまいますよね。今回は、そんな盲点が生まれるメカニズムと回避方法についてご紹介します。
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経営はルービックキューブそのもの
人間、だれしも見えていないことがありますね。
日々いろいろなことが目に映っているのだけれど、丁度見えない感じになってる場所。それが盲点です。だれにでもあります。
見えてないから気づくことができず、仕事においては「見えない場所を考慮せずに指示を出す」ことになり、「意思決定を間違える」「判断を間違える」ということが起こりがちです。
わかりやすいよう、ルービックキューブに例えて説明します。サイコロと同じ立方体で、それぞれのキューブにバラバラの色がついていますよね。キューブを回して、6面すべての色をそろえる立体パズルです。
自分の得意な「色」だけをそろえがち
キューブをガシャガシャ回して、すべての面の色をそろえなくてはいけないんですけど、社長さんは「自分が見えている所だけ」「自分が好きな色だけ」をそろえることばかり考えがちなんですよ。
例えば、売ることが得意な人は、「上手に売る」という赤の面ばかり直して、裏のオペレーション面がグチャグチャになりがちなんですね。セールに参加して売上をドーンと伸ばすんだけど、「CSや業務品質が悪くて、レビューの点数が下がる」なんてことが起こったりします。
また、面白い企画が得意な人は「これ面白い」「これも面白い!」と次々に企画を立てますよね。すると、生産管理などが追いつかず、裏側の対応が後手になってしまうことがあります。一面だけがそろって、他の面はバラバラな状態になってしまうわけです。
強みや得意分野があるほど盲点は生まれやすい
こういったことは、強みを持っている人ほど、得意な分野ほど、その強みで頭がいっぱいになって起きる問題だと思います。バランス型の人は突出した強みはないかもしれないけど、その分、盲点は少ないかもしれないですね。
だから、「コピーライティングが得意です」「テクニックで売上を伸ばすのが得意です」逆に「業務効率化するのが得意です」などの得意分野のある人は、反対の分野や苦手分野に盲点があるのかなと思います。
たとえば業務効率化が得意な人は、「アイディア一発で売上逆転できる」といった感覚はあまりなく、効率化することだけに意識が向きがちかもしれません。
経営はバランスよくやらなくてはいけませんから、本当は6面全部の色をそろえないとダメですよね。自分の好きな色ばっかりガシャガシャやると、その副作用で自分から見えてない盲点の面がグチャグチャになる傾向があると思います。
赤の面を重視してそろえている裏で、「もしかしたら、何かひっくり返っていることがあるかもしれない」という危機感を持っておくことが大事です。
「ハンマー」を持つと全ての問題はクギに見える
人間、得意な武器で、全ての問題を解決しようとする傾向があります。
例えば、コピーライティングが得意な人は、全ての問題をコピーライティングで解決しようとするという傾向があるように思います。
検索結果画面やメルマガ・SNSで、お客さんにクリックしてもらうために、上手なコピーライティングを書きますよね。それはいいのですが、社内の〇〇さんが「もう嫌です。会社辞めようと思います」という時でさえ、コピーライティング的な声がけで解決しようとするとか。手段が目的化してしまってますよね。
効率化の大好きな人が、社内のいろいろな仕事を効率化していくんだけど、「もう嫌です。会社辞めようと思います」という人を目の前にしても、話も聞かずに効率化のことばかり考えたり。
中小の社長さんは大体、性格が偏ってる人が多いと思うんですよね。特に創業社長の皆さん。私もそうなんですが、周りを見ても、創業社長って偏ってる人が多いです。
なので、上手くいく時は上手くいくんだけど、同時に盲点も存在します。そして、何年か会社を経営しているうちに「ここ気づかなかったなあ」など、なにかしら問題が起きる時って、大体自分の苦手分野の盲点で発生する傾向があると思うんです。少なくとも僕はそうです。皆さんはどうでしょうか?
どうすれば盲点を回避できるのか
では、どうしたらこういった盲点に対処できるのか。
何しろ得意分野の影で見えない部分ですから、自分では気づけない訳ですよね。自分では対処できないので、「代わりに人に見てもらう」ことで解決できます。
自分一人の力では解決できない。上手に人に頼ろう
自分の盲点を回避する為には、周りに「どう見えてる?」と聞くことが大事です。
すべて自分で意思決定して指示を出す人、ハンドルを手から離すのがこわいタイプの人は、なかなか自分の盲点を人に見てもらうことはできないです。具体的には、以下のようなタイプのリーダーですね。
- 全部、自分が決めます
- 自分が正しい
- 自分がハンドルをにぎっていないと不安
- 何かあったら、私のところに持ってきて下さい
- ああ、なるほど。それならこれはこう。こういう風にした方がいい
一方で、もうちょっとゆるくいられる人。
- いやー僕から全部見えてる訳じゃないから。「これ社長見えてないな」と思ったら教えてね
- へえーそうなんだ。これ〇〇君の方がよく分かると思うから、分かんないから教えて
「これどういうこと?」「分からない」と素直に言える人ですね。ハンドルから手を放す勇気があり、それでいて目は放さないリーダーの人は、盲点を人に見てもらうことができるんじゃないかなあと思います。
最後は社長が決めるといえば決めるんですけど、そこまで手放して「社員に任せてます」って経営責任を放棄するのはダメなので、さじ加減ですね。「あとはよろしく」「みんなに任せたから」と丸投げすると必ず問題が起きるので、目は放さないが、手を放すことが大事です。
各自の見ている風景を集めて、立体的に状況把握しよう
座ってる椅子や担当業務が違うと、人によって見える風景が違うものです。なので、それぞれの見えてる風景を寄せ集めていくと、立体的に状況認識でき、「社長の盲点」という問題を回避できるんじゃないかと思うんです。具体的にはこんな感じですね。
- 社長
- この件って、そっちからはどう見えてる?
- 製造のMDの椅子から、受注の椅子からは、何が見えてるかな。
- 製造担当
- MDの観点だと、うちの品ぞろえの基準って〇〇だと思うんですよね。他所を見ていると最近こうなので、もうちょっとこうした方がいいんじゃないかなあと思います。
- 受注担当
- CSの基準から言ったら、こうなんですよね。
- 社長
- なるほど、みんなそれぞれに基準があるんだなあ。ちなみに、社長的な椅子から見たらこう見えてるよ。
一人で盲点を回避するのは、おそらく無理じゃないかなあと思います。人間は頭の後ろに目はついてませんから、無理なものは無理です。
- 自分の目に映る映像が、全て正解とは限らない
- なぜなら、自分は人間に過ぎない
- 盲点や見えないことがあるから要注意だ
という前提に立ち、「分からない」とか「そっちからどう見える?」と人から聞いて、対話しながら状況把握していくと、盲点トラブルを避けられるのではないかなと思います。
まとめ
私の個人的な経験から言っても、よくないことが起きる時は、大抵社長の盲点が影響しています。なので今回の記事は、ほんと200%自戒を込めて書いております‥。最後にまとめます。
「社長の盲点」は何かというと、「社長が得意でよく見えていること」の影に存在する、社長からあまり見えていない領域です。そして、苦手なことやあらゆる問題を、得意分野を使って解決しようとする傾向が人間にはあります。
- アイディアがある人は、あらゆる問題をアイディアで解決しようとします
- 人間関係で人に頼るのが得意な人は、あらゆる問題を人に頼って解決しようとします
これ自体は普通の行動なのですが、「自分には盲点がある」と自覚しておくことが大事です。ルービックキューブのように、経営はバランスよくやっていかなくてはなりません。自分の素の感覚で経営していると、盲点がグチャグチャになる恐れがあるので要注意です。
盲点は人間の宿命なので、なくすことはできません。対処方法は「人に頼ること」です。「何でも俺に聞け」「俺が指示を出す」というふうに「マイクを離さない」状態は危険です。「そっちからはどう見えてる?」「自分はどうしてもこれやりたいんだけど、〇〇さん的には〇〇君的にはどう?」と、周りに聞いていくこと。
社内の担当者や社外の人みんなの話を聞きながら、状況を立体的に見立てることによって、「社長の盲点問題」を回避できるんじゃないかなという話でした。
P.S.
私達コンサルタントは、販促支援や利益改善だけでなく、こういった盲点を回避するためのお手伝いもしています。「壁打ち」と呼んでいまして、体験したクライアントの方からは「全員一回は壁打ちを体験した方がいい」というくらい好評です。
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