2022 中小事業者の理想実現に「今いちばん大切なこと」を話そう

あけましておめでとうございます、と言うにはすっかりお正月気分も抜けておりますが、今年最初ですので。。坂本です。今年もよろしくお願いします。

毎年、EC業界の展望を、年初にブログ記事にしております。去年は「大手のEC参入が増える中、中小のEC事業者が豊かに商売するには、コレを目指すべきだ」という理想像を提案しました。

私以外にも色々な方が「新しい商売像」を紹介していますしね。そんなわけで「中小が目指すべき商売像」がどんな感じなのかは、この何年かで大分イメージがついてきたのではないかと思います!

が、そういった理想を掲げても、それが「実現」できるかどうかが問題ですよね・・。中小ECが、理想を「実現する」ためには何が一番大切なのか?そういうわけで、(私の)今年のテーマは「実現力」です。2022年を、理想の商売を実現する年にするべく、実現力について語っていきます。

中小ECの「理想と現実」

私たちは「EC事業者向けの経営コンサル」をしています。テーマとしては販促だけでなく、業務効率とか組織とか、利益率UPや競争回避など全般。近況や現在の課題、今後どうしたいかを伺って、整理しながら日々一緒に考えています。

特に「社長さんの壁打ち相手」をやることが多いのです。つまり、いろんな会社の「内情」を伺う機会が多くあります。

みなさん、目指す理想状態があって、そこに向かって仕事をしています。しかし、多くの社長さんの壁打ち相手をする中で、「がんばってるんだけど、なんだか空回り状態で、目指す理想に近づけない」いわば「空回り現象」が、実は色んな会社で起こっていることがわかりました。

そして、空回り状態に陥る原因が、どこも結構同じだなと気づいたのです。
この問題をクリアすれば理想へと近づけるはず!

ということで、この記事では、多くの社長さんとの壁打ちを経てわかった「空回りを脱して、前進するためのヒント」をお伝えします

中小ECの「理想」は、独自性を作って競争回避

まず一旦、「中小ECの理想状態」がどういうものかについて、おさらいをしておきましょう。

  • Q.中小の商売が、大手とぶつからず、競争を避けて平和にやっていくにはどうすればよい?
  • A.「独自性」を鍛えて、比較(=競争)を回避することです

店は、お客さんから比較されます。他社とカブると比較され、競争が発生。比較=競争です。激戦は避けるんですが「多少は比較されるけど、自分が一番になれる」くらいの領域を見つけるのがベストです。「ライバルはいないけどお客さんもいない」市場は狙っても仕方ないからです。

そのために、激しい競争は避け、独自のポジションを作っていくことが大切。中小が長く商売するには(競争力に裏付けされた)「独自性」が大切なのです。

では、独自化をするためにはどうすればよいか?それを語ったのが、去年の年初のブログ記事です。

メーカーECは「クラフト消費」に、仕入れ型ECは「エージェント化」(=「サービス業化」)に着目してみて下さい、とご提案しました。

また、独自性を目指す過程で、単に「業績を伸ばす」だけでなく、自分が気分良く商売しているか「主観的な満足度を重視しよう」という話や、突き詰めた独自性は集客力を超える引力を生む、という話をしました。

全4回シリーズで、こんな内容でした(ご存知の方は読み飛ばしてください)。

独自性があり、人とカブらないポジションは「ニッチ」です。つまり市場が小さいという弱点があります。

でも大丈夫。我々中小企業は小さい市場がちょうどよいのです。大手企業は「『生きるために必要な売上水準』が超高い」し「成長しなきゃいけない」ですが、我々はそんな十字架を背負っていません。「大きくしなきゃいけない」という呪いに囚われることなく、ユニークなポジショニングができるのが僕ら中小の特権です。そこをフル活用したいなーと考えまして、こういう記事も書きました。

中小ECの戦略が端的にまとまっているので、未読の方は是非どうぞ!

以上が、「中小ECの目指すべき理想状態」のお話でした。

これらの記事を出した後、SNSのメッセンジャなどで「まさにそれを実践してます」といった反応を多く頂きました。ある程度妥当性は証明されているかなーと思います。

ただ、理屈はそうだとしてもどうやって実現するかが問題なんですよね・・!

中小ECの「現実」は、通常業務で忙殺される日々

前述の「理想像」に対しては皆さん合意いただけるんですが、じゃあ現実がそれに追いついているかというと、前述のように「理想を目指すが空回り」というケースが珍しくありません。

個性ある中小店舗を目指したい。そう思っても、日々の仕事は忙しく混沌としており、通常業務で一日が終わる。結局「個性化」は進んでいない・・という現実がある。

前述のとおり、私たちはコンサルタントとして社長さんと話すので、表ではあまり語られないような、社長さんの「内面」的なお話を伺う機会が多くあります。

<こんな方が結構多いんです。あなたはどうですか?>

  • あれをやりたい。これをやりたい。やりたいことやアイデアが無数に増えて、実行が全く追いつかない
  • 結局やっているのは「日々の販促」だけで、これまでの延長線上の仕事しかしていない・・
  • 進むべき方向は見えているが、足元が抜かるんで、なかなか前進できなくてもどかしい。
  • 頭の中ではいろんなイメージはあるんだけど人に伝えられない。もどかしい。
  • 自分は仕事が遅い。散らかっている。だめだ。
  • みんなが普通にできていることが、自分には出来ない。自分が社長でなければもっと伸びるはず。
  • あの頃、一緒に勉強していたお店が、すっかり有名店舗になって、自分は以前と同じまま。焦る。
  • お客さんや人からホメられることはあるけど、こんなことは誰でも出来る。大した強みがない。
  • 自分はこの商売をどこまでやれるんだろう。向いてないんじゃなかろうか。
  • 仕事ばかりしているのに、社員の不満が溜まっている。わかってもらえない。
  • 仕事の能率が悪いのはスタッフが悪い。楽天が悪い。いや、本当は自分が悪い。分かっている・・
  • 外ではカッコつけてるけど、実際、内側では当たり前のことも出来てない。口ばっかりだ。

・・・どれもこれも実際に聞いた話です。え?耳から血が出た?もしやオマエ俺の心を読んでるのかって?

いやでも、あなたはがんばっていますよね、わかります。がんばってるからこそ、色々気になって勉強して、その結果「これを実行したら売れそうだ!というアイデア」や「やりたいけど着手できない仕事」が恐ろしいほどに溜まっているのではないですか?

自分で「やってない仕事」をどんどん増やして、「あれもこれも出来てない」などと自分で自分の首を絞めていませんか。自分で自分を追い込んで、「自分(の能力や性格)が悪い」と、自分を責めていませんか。

でもそれはきっと、理想が高いからこそ、そうなるんです。あなたは多分、「ラクしたいだけなら、もっと儲かる仕事がある」ことを知っているけど、そっちではなく、「納得したうえで」向き合える今の仕事を頑張ってるんですよね。えらいと思います。本当にお疲れさまです。

でも、もう自分を責めないでください。それは、あなたのせいではないし、多くの社長さんが、表では元気にやってるけど、裏では凹んだり自己否定したりしてます。

皆さんはこういった感情を「自分だけの感情」、起こっている現象を「うちの会社だけの問題」と思いがちですが、いろんな会社と社長さんの内情を拝見している私には断言できます。

そう、多くの会社で、似たような原因で、似たような問題が起こっているのです。

連鎖で問題が起こっている

ご本人の自覚としては「なんだかずっと忙しくて仕事が進まない」とか「自分が悪い。能力不足」などと感じている人が多いと思います。なんとなく体調不良、みたいな感覚です。

でもこれは、「単なる体調不良」ではなくて「原因のある病気」(のようなもの)です。いわば「慢性多忙症」ではないかと。「単に忙しいだけ」とか「自分のせい」ではないんです。

そしてここでは、明確な因果で起きるものではなく、「いくつかの要素が連鎖した、構造的な問題」のように見えます。連鎖的=ドミノ的に問題が起こっていると思ってください。風が吹けば桶屋が儲かる、みたいな構造ですね。

  • まずコレが起こる
  • するとコレが起こる
  • 結果としてコレが起こる
  • そして「仕事が進まなくなる」
  • 理想が遠ざかる

この状況を放置していると、「本来なら発揮できるはずのお店のポテンシャル」が十分発揮できません。でも原因のあることですから、解きほぐしていくと、状況は改善されます。何より、気分がラクになります。

「空回り現象」は構造的な問題

ということで、ここからは、中小ECの「慢性多忙症」を解説していきます。病気の原因が分かれば対策も見えますからね。

話の流れとしては「EC業界の環境変化」と「社長のメンタル」が影響して、仕事が進まない状況を生んでいる。という構造で進みます。対策については後述します。

第1段階:モール運営業務の複雑化、施策の多様化

まず1つめの要素。
以前よりもECの仕事が複雑化し、忙しくなっています。

まずモール運営が複雑化しています。

  • 複数のモールで店舗運営するのが一般的になりました
  • 各モールで別々の仕様や細かいルールがあります(画像をこうしろとか)
  • 各モールで新機能や新仕様やルール変更が頻繁に発生
  • 各モールでイベントをやるので参加する手間も発生
  • モール内広告も「運用型」が中心で、細かな設定が必要。

集客の方法も昔は広告とメルマガぐらいでしたが、今は多様化していますね。本店をやる人も増えました。GA、SEO、広告運用・・媒体の種類も増えてます、コンテンツ制作、チャット接客、インスタとかLINEとかYoutubeとかアプリ開発などやることたくさんです。打てる手が増えているのはいいことですが、それら全部を学んで実行しようとするとパンクします。「知らない」のは不安だけど、量が多すぎて学ぶだけで大変。

あと、ルールとか関連法規。昔は緩かったですが、いまは色々厳しくなってますしねー。
以前よりも社内のメンバーが増えている人も多いから、マネジメントの工数も増えてます。

古い方は、昔をよーく思い出して、比べてください。同じように仕事をしてても、なんやかやで前より忙しくなってるはずです!

第2段階:社長や店長がプレイヤー気質のまま

2つめの要素。このように仕事は複雑化してますが、「運営側の考え方がプレイヤー気質のまま」で、「人に振らずに自分でやってしまう」ところがありませんか?

自分でやったほうが早い、品質が気になって任せられない・・

もともと「名プレイヤー」として売り上げを作ることで、会社を成長させてきた方が多いと思いますが、今の時代、「自分が腕を振るう」だけでは追いつかない状況になってきてはいませんか?仕事を人に渡していく必要があります。

が、大きい組織で仕事をしていた人と比べると、中小の人たちは「人に仕事を渡す」ということ自体に不慣れで、どうしても自分でやってしまいたくなる方が結構多いと感じます。あるいは、渡し方がわからなくて丸投げしちゃう。

「それ誰でもできるよね」っていう単純な仕事をずっと抱えたままの人がすごく多い。メンバーに頼めばいい仕事をそのまま自分で抱えてしまってる。

雇用すること、メンバーを増やすことに二の足を踏むケースも多いです。確かに新規雇用するのはリスクだから、新しい人をなかなか採用しづらいのはとってもよく分かるんですけど。フリーランスで契約するとか方法はあります。この話は後述。

第3段階:手を広げすぎてキャパオーバー

これまでの話を整理すると、まず「忙しくなって余裕が減っている」。しかし、社長さんたちは「プレイヤー気質のまま」で、どんどん手を動かす。結果として「慢性的キャパオーバー」が発生します。

背景として、多くのEC社長さんは、地方の中小企業の方が多くて、地域の中で「これまで通りを繰り返す」周囲の企業と一線を画して、いちはやく新しい商売(EC)に飛び込んだ勇者たちですw つまりチャレンジングな気質の持ち主が多いです。だからこそECで生き残っておられるのですが、その強みが弱みになってしまう。チャレンジしすぎるのです。

もともと好奇心が強く積極的だからこそ、これまで成功してきたわけですが、状況変化によって、自爆して忙しくなってしまう。

「チャット接客を入れるぞ」「あれどうなった」「ライブコマースをするぞ」「新商品作るぞ」「コンテンツマーケティングするぞ」「あれどうなった」「本店独自ドメイン店作るぞ」「Qoo10にも出店してみよう」「あれどうなった」

キャパ不足なのに「次々いろんなタスクを始めてしまって、全部中途半端で終わらない」ことに割となりがちなんですね。

そして、1つが終わる前に、次々新しいことを始めるので全部やりかけになる。「待ちきれずに新しいことを始めてしまう」というケースが多いんです。

でも同時並行って、かなり非効率なんですよね。複数走っている「やりかけのプロジェクト」を全部把握しておかないといけないので、お手玉状態になります。

どこまでお手玉を同時にやれるかは人の能力によりますが、私なんかはキャパが小さいので、頭から溢れてこぼれ落ちるんです。すると、忘れます。結果として「風化した幻のプロジェクト」が量産されます。耳が痛い。。

「1つのプロジェクトだけに集中する」方が効率的なんですよね(下図)。

加えて、多くの叩き上げな社長さんは、PJ管理(というか「計画的な仕事」)にも不慣れな感じがします。単発のタスクはめっぽう強い。野獣のようです。ただ、計画性の大切な長期戦になると混乱・疲弊する感じ。呂布みたいだな・・(三国志の武将です)。

「もっともっと実行しなきゃ」ってなるんだけど、そっちは行き止まり。商売と屏風は広げすぎると倒れる、という言葉もあります。「諦めて絞りこむ」「一旦引く」ほうが大事なんですよね。。後述します。

第4段階:成長が遅れ「FOMO」が発生

4つめの要素。「焦り」です。

忙しいのになかなか前進しない。もどかしい。そうこうする間に、SNSなどでライバルや仲間の活躍を見かけます。焦ります。

淡々と努力をしていけば良いのですが「成長している他社を見てストレスを感じてしまう」という心理がありませんか。

それ、「FOMO」という心理状態かもしれません。FOMO(Fear Of Missing Out)とは、取り残される不安や恐怖のことです。主に「SNSはメンタルに悪い影響が出るよ」という文脈で出てくる言葉です。実は、いろんな経営者の方としゃべっていて、このFOMOでメンタルが疲れている方が多いと思いました。

具体的な例をあげると、これまで自分と同じようにネットショップやっていた人がどんどん成長してしまい、SNS上でイケイケな投稿をしている。でも自分はそうでもない。なので、かつての自分の仲間や競合他店に対して、置いていかれたような気持ちになってしまう。

このような「置いていかれる恐怖」で自分に自信を失ったりするケースが結構多いなあと感じます。

何でこんなことが言えるかと言うと、私たちは、経営者やマネージャーの方の壁打ち相手を務めるケースが多く、カウンセラーみたいなもので、正直に思ってることを言っていただけることが結構多くて、「実は自分はこういうことを思っている」という気持ちを教えていただけます。

皆さんは、自分ひとりの「個人的な感情」だと思ってるんですが、私たちは壁打ち相手をする中で同じような話を頻繁に聞くので「みんな同じように感じているんだなー」ということが分かってきました。

もちろん私にも「FOMO気分」な日がありますよ。FOMOとの付き合い方については後述します。

第5段階:社内や委託先に「過剰に期待する」

5つめ。自分だけでは煮詰まるので、誰かに頼ろうとする。実は、このせいで、更に時間をロスします。

自分がパンパンになり、忙しい。他社と比べて焦っている。なんとか状況を打開できないか。。他力を使うしか無い!ということで、社員を動かしてなんとかしようとしたり、提携先に期待したりします。

チームでやれば何とかなるんじゃないか? あるいは力のある提携先と一緒にやればなんとかなるんじゃないか?自分の限界から周囲に過剰に期待するようになります。銀の弾丸を探してしまう。青い鳥を探してしまう。

間違ってはいません。社員の活躍も提携先の活用も大事です。ただ、新しいやり方を勉強をしたり、社内体制に手を入れたりするのは、かなりの時間がかかります。ただでさえ時間がなく仕事が停滞しているのに!

ところで、それ以前に、そもそも、

  • 手を広げすぎて、自分で経営の難易度を上げてしまってませんか?
  • 自分でややこしくしてませんか?

他力を使うのもいいですが、まず手を広げず「優先順位を絞り込んで実行の難易度を下げる」ことでも、実現性は上がるのではないかと思います。

そんな状態で他者を巻き込んでも、上手く行かない。なぜか。忙しさに溺れているので、相手の手を全力でつかみに行きますよね。相手も困るし、期待通りに助けられないことも多い。すると期待が裏切られたので、相手に向かって怒る。※特にスタッフに対して怒る社長さんは「経営者の感じている不安」を社内にぶつけている側面があるように感じます。

もういい、自分でやる!となって、最初に戻ります。でもまあ、「自分で風呂敷を広げておいて、人に畳ませる」というのはなかなかアレな話ではあります。。

以上が中小ECの社長さんがハマりがちな空回り現象です。ループしている感じ、わかりますか。多くの社長さんが、これらのサイクルの中をぐるぐる回っているように見えますよね。

対策いろいろ

ここからは、壁打ちをする中でわかった「空回りループ脱出」のアイデアを紹介します。輪廻からの解脱ですw

ハウツー的・テクニック的な具体策よりも、「気の持ち方」で状況が変わります。実際、社長さんとの壁打ちの中で感情について話していく中で、解きほぐされていくケースが多く見られます。

1対1の話でやるのが一番効果的なんですが、ここでは考え方だけお伝えします。

1 自分の感情を観察し、判断の偏りを自覚します(人は誰でも偏ってます)
2 色んな「やりたいこと」を諦めて諦めて、「最優先案件」を見つけます
3 自分でやることも諦めて、人に仕事を渡していきます

1「感情」を観察する

「FOMO」の気がある人は、自分の感情を観察してみましょう。

以前とある人と話していて、こんな話を聞きました。

  • SNSを見ていると何だか焦る気持ちがある・・という感情を自己観察してみると「仲間がどんどん活躍していくのを見て置いてかれたくない」という気持ちがあることに気づいた。
  • しかし冷静に「ああいう人になりたいか」と考えると、そうではない。彼らがやっている仕事や状況を聞いてみると、尚更そうではない。やればできるかもしれないけど、それは自分の目指す商売ではないと気づいた。
  • 比較してプレッシャーを感じていたけど、目指す姿ではない以上は、自分と比べても仕方がないと気づいた。ただ色々楽しそうにチャレンジしている姿は刺激になるので、そこは学んでいくつもり、とのこと。

実は複数のクライアントさんと同じような会話をしています。

FOMO気分に限らず「自分の中に生まれている漠然とした不安・不快感」は、放置すると、判断に良くないバイアスがかかります。冷静に判断してるつもりで偏った判断になってしまうんです。

でも、「漠然とした感情」の裏に何があるのかを観察し、「自分の気持ちの由来」がわかることで、気分が落ち着くということがよくあります。

※ちなみに感情を抑えつけるのは逆効果です。「自分はこう思ってるんだなあ」と観察する程度の距離感がベストです。社長業はメンタル疲れるのでセルフケアが大切かなと。

そういえば、最近とある有名で大きいネットショップから、「大きくなる過程で、どんな大変な目にあったか」を詳しく聞く機会がありました。もう本当に血が出るほど大変で、自分だったらとても耐えられないなあと思ったので、そういう激烈な中で大きく伸ばしていくベンチャー的な仕事の仕方は「自分には無理だなあ」と改めて感じました。

人それぞれの役回りがあるはずで、大きく成長してビルを建てる人も素晴らしいし、小さいけど助けになる「峠の茶屋」みたいなお店もまた大切だと思うのです。

2 なんでもはできないと「諦める」

自分の持っているキャパシティは限られているので、何でもかんでも手を出すことはできません。少ないリソースで勝てるところを見つけて上手に集中することが大切です。前向きな諦めが大切。

もしも社長に上司がいれば・・集中できているはずです。あれこれ手を出したら怒られますからw

上司というのは、実はありがたい存在で、「自分が頑張ればいい範囲」を定義してくれて、そこに向けてフルパワーが出せるように尻を叩いてくれます。(良い上司なら)

でも、残念ながら、社長には上司がいない。「ここからここまでを頑張ってね」「ここはやらなくていいよ」といった枠がないので、いろんなことを幅広く考えなければいけない。その結果、手を広げる。キャパオーバーで半端になる。叱る人もいないのでズルズルになってしまいがちです。

対策としては、優先順位を決めるより「劣後順位」を決める方が重要です。つまり、やらないことを決める。あれもこれも優先したい中で、「これは涙をのんで後回しにする」という決定をやっていく

諦めて諦めて諦める。。「これは後回し」「これも後回し」「これは簡略化」をギリギリまで削って削っていくと、「最優先のなにか」が浮かび上がります。その最優先された仕事にこそ、集中して取り組む。

集中するためには、劣後順位を決める。つまり諦めるのが大切。

※ちなみに諦めるという言葉は、もともと仏教用語で「明らかに見る」という意味があるんだそうです。自分の置かれた状況、お客さんの需要やライバル動向や自分の価値観などを明らかにして、よく見て集中してやっていくことが必要なんじゃないかなと思います。

3 観念して人に頼む

自分で何でもすることは無理なので、観念して人に頼みましょう。といっても前述の「広げすぎた風呂敷を代わりに畳んでもらう」のではなく、「自分のやっていた実務を切り出す」話です。

ここですごい秘密をお教えします。
いろんなクライアントさんを観察して気づいたんですが、、

  • 実は、売上アップ施策は、自分でやらない方が、売上が伸びるんです。

自分は商品企画など「価値を作る」ことに集中する。「スタッフが売ってくれる状態」にする。こうなると、売り上げが継続的に伸びつづけるようです。売上アップ施策は人にやってもらう、という状態ですね。

なぜそうなるのか?たぶん・・「自分が価値を作れば誰かが売ってくれる」という状態になることで、社長さんが新商品作るなどの「価値創造」に集中できて、成長が早まるんじゃないかなと。販促テクニックは水物ですが、本質的な価値創造はあなたを裏切りません。

※なお「スタッフに売ってもらって、自分は遊んでいる」状態では成長しませんw 価値を作りましょう。

ECを始めて初期の段階では、「自分で販売する」ことが大切ですが、どこかのタイミングで、スタッフさんを育成し、販売業務を移管していくことが大切ですね。運営代行だと社内にノウハウが残らないので、スタッフ教育&移管が大切です。

あと、話は変わりますが、現代でチームを作るならリモートワークに対応することは必須です。リモートワークができる体制の会社だと、例えば「新潟の事業者が東京の働き手に仕事を頼む」というように、遠くにいるフリーランスなどに仕事を頼めます。

一方で社内にリモート体制がなく、「やっぱり顔をあわせないと仕事ができない」というスタンスの人は、近所しか頼める相手がいません。結果、近所に丁度いい人がいないので、「単純作業をずっと自分で抱えてる」というケースがとても多いです。リモート体制は大切。(顔を合わせるのも大切ですけどね)

※ちなみに「観念」という単語も元々仏教用語だそうで。その意味は「対象を正しく見極めて、精神を集中して考える」ことだそうです。

まとめ

要約

最後に、おさらいをします。

  • 中小ECの「理想と現実」
    • 中小ECは「激戦を避けて独自化する」ことで平和に商売できる。その方法論も色々ある。
    • しかし、現場は忙しく混沌としており、理想像とされる「独自化」は結局進んでいない現実がある
    • この忙しさは、「たまたま忙しい」のではなく構造的な問題なので、因果関係の理解と対処が必要
  • 「空回り現象」は構造的な問題
    • まず、時代が変わって忙しくなった。「普通にEC事業をする」だけでも手間が増えている。
    • EC社長・店長は、活発に手を動かす「名プレイヤー」が多く、人に仕事を渡せていない
    • 「忙しくなった」のに「人に仕事を渡さない」し「色々チャレンジする」ので、キャパオーバー
    • 成功している仲間や伸びているライバルを見ると、気持ちがザワザワする。焦る。
    • 自分の力だけじゃ無理だ、と思ってスタッフや支援会社に頼ろうとして「更に時間を消耗する」
    • そもそも手を広げすぎていないか?自分で仕事を難しくしすぎていないか?
  • 対策いろいろ
    • まずザワザワ対策から。自分の気持を観察しよう。本当に「ああいう店」になりたい?
    • 次に、「あれもこれも」を諦めて、劣後順位を決める。削りに削って、最優先事項を見つける
    • 自分でやらない。観念して人に頼む。販売実務をスタッフに移管し、社長は価値創造に集中する

いまや、アイデアより「実行」が希少

こうやって書いてみると、やっぱりいまや、アイデアよりも実行力のほうが希少になってる気がします。

今どき、情報は入手しやすいですよね。ちょっと調べるだけで「新しい売り方」とかがたくさん見つかっちゃうから、その結果「これを実行したら売れそうだ!というアイデア」「やりたいけど着手できない仕事」が恐ろしいほどに溜まっていませんか?でも、どれもこれも実行できない。

いわば、たくさんの「花の種」を持っていて、これを植えるとお花畑になるぞぉ・・と想像してるんだけど、植える時間がない。ずっと種のままで、お花畑の夢を見ている。うーむ。

この状態って多分「売れるヒント」のインフレ現象じゃないでしょうか。「実行すると売上が伸びる情報」は昔は希少だった。でも今はいくらでも入手できます・・つまりインフレを起こして価値が下がっている。

にもかかわらず、古い時代の感覚で、情報やアイデアがお得に見えてしまい、本当に重要な「実行」が後回しになってませんか。

どちらかというと、今は「実現する力」の価値が上がっている感じがします。
ちょっとバランスを見直したほうが良いかもしれませんね。

今回の記事が、あなたの「理想の商売」を実現する参考になれば幸いです。

今年の抱負

最後に、私から今年の抱負を語らせて下さい。

去年の年頭記事では、我々の目指すべき理想状態を描き出してみましたが、今年は、その理想を目指していく中で、(私含めて)多くの社長さんが「つまづきがちなポイント」について解説してみました。

毎年「これからのECの考え方」的なことを書いてきましたが、今年の私の抱負としては、理想の中小ECを増やすべく、「現実の課題」を一つ一つクリアできるような、「自分にもやれる!」と思えるような、勇気の出るような情報を発信していく所存です

「便利な大手EC」だけではなく「個性的な中小店舗」もたくさんある「豊かなEC業界」を目指して、皆さんそれぞれの理想を実現すべく、情報発信とご支援を頑張ります。

【募集】「空回り脱却」相談会を開催します

皆さんの理想を実現するための実行への第一歩として、「現実の課題」を解決する糸口になるべく、「空回り脱却相談会」をやってみようと思い立ちました。突然ですが、この場で募集を開始します。

  • 趣旨
    • Zoomを使った、1時間程度の単発コンサルティングです。わたし坂本がお相手をします。
    • ご事情を伺いながらきっちりとお話したいので、有料です。
    • 「壁打ち方式」です。お話を伺いながら状況を整理し、何かしらのご提案をします。
  • 応募資格
    • EC事業を営む会社経営者、もしくはそれに準じる立場である
    • この記事を読み、まさに自分は「慢性多忙症」だ、と思った
    • 今年こそ、「実行力」を高め、前進したい
    • 坂本になら、自分の胸のうちをさらけ出してもいい
    • ※以上のすべてに当てはまる方のみ、ご応募ください
  • 料金
    • 1時間:30,000円(税込 33,000円)
  • 実施の経緯
    • この記事でご紹介したように、弊社では「EC経営コンサル」として、社長の壁打ち相手=対話を通した論点整理、スタッフさんへの販促指導、慢性多忙症の治療、EC用リモート体制づくり、社長のタスク管理とお尻叩き、愚痴のお相手、夫婦経営のあれこれの支援、元気になれるおしゃべりなど、幅広い支援を行っています。
    • コンサルの継続契約は、現在満席でお受けできません(;_;)ですが、この記事を読んで共感した方とお話してみたい。私自身このテーマを研究・深堀りしていきたい!ということから、この記事をご覧の方を対象に、期間限定でこの企画を実施することにしました。次回の開催予定はありませんので、興味ある方は是非どうぞ。

ご応募はこちらからお願いします!

※応募多数の場合、またご相談の趣旨が本会の趣旨と添わない場合は、お断りする場合もあります。あらかじめご了承下さい。

今回は以上です!

2022年は、「皆さんの理想を実現する支援」というテーマで、色々取り組んでいく所存です。
今年もよろしくお願いします!

カテゴリー: ECの未来

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