こんにちは。坂本です。
「後発店舗の運営戦略」シリーズの第二回、今回は「お客さんの目線になりきる力」です。
ネットショップで買い物をするお客さんの行動パターンを学び、「お客さん側の目線」を習得しましょう。お客さんになったつもりで自分のページを添削する「セルフ添削力」があると、全ての効率がアップします!モールを例に解説していますが、自社ECでも基本となる考え方は同じです。実践することで、ネットで売るために必要な感覚を養えますよ。
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はじめに
知識よりも「勘」が貴重
今やちょっと検索するだけで、「こうやれば売上が伸びる」「これはやってはいけない」といった知識やテクニックが、山のように見つかりますよね。無数にあるこれらの情報を1つ1つ試していくと・・・時間がかかって非効率です。
本当に役立つのは、いちいち実践しなくても「これは売れそう」「今これは効果がなさそう」という判断ができる「嗅覚」です。いわば、「何をすれば買いたくなるか」を感じ取る肌感覚。
テクニックの情報は無数にあるので、試しているとキリがありません。右も左もわからずにひとつひとつ実行して試すのと、「実行する前に、ある程度あたりがつけられる」のとでは、スピード感がまるで違います。この感覚は、一度身につきさえすればずっと使えて便利です。ぜひ習得してくださいね。
お客さん目線の習得方法
では、どうすれば、その「感覚」が身に付くのか。実は、前回ご案内した「自己客観視」はそのための入り口です。
前回の「風林火山製法」のエピソードや、「体育会系に人気の店が、女性向けにリニューアルしてしまう話」を思い出してください。
※まだ読んでない・復習したいという方は、以下からどうぞ。
物を売る人は、プライベートでは普通にお客さんなのに、いざ自分が物を売ろうとすると「自分がお客さんだった時の感覚」を、簡単に忘れてしまうものです。
そうではなく、「『売り手の自分』と、『お客さん状態のときの自分』を自由に行き来できる」ようになれば、以下のような切り替えができます。
・まず、「売り手の自分」として商品説明を書いてみる ・次に、「買い手の自分」になって客観的に読み返し、突っ込みを入れる ・「売り手の自分」に戻って、文章を修正する
これは、自分が考えた販促アイデアや作ったページを、「お客さん側になりきって添削できる能力」だといえます。売上を作れる人は、たいてい、この感覚に優れています。仕事が早くなり、精度が上がり、回り道を避けられます。もちろんこの感覚が100%当たるわけではありませんが、まったく感覚がない人と比べると「どの部分をしっかり検証すべきか」のあたりをつけるのも早いのです。
実際に身につけるための方法
ということで、上記の感覚を身につけるために、まず「ネットショッピングにおける消費者の行動パターン」をご紹介します。次に、お客さんになって、実際に買い物をしてみてください。その際、「(お客さんとしての)自分の心理の動き」を観察します。これができると、お客さんの気持ちは想像しやすくなります。
ご自分で、これまで何度もネットで買い物をしてきたと思います。でも、自分の頭の中や気持ちの動きを「細かく観察」しながら買い物するという経験は、あまりないのではないでしょうか。でもこれが、トレーニングとして大変有効なんです。
1:お客さんの行動パターンを知る
パラパラマンガをイメージする
まず最初に、大前提となる話をします。
店側とお客さん側の視界には、大きな違いがあります。それは「静止画と動画の違い」。
店側のイメージは、静止画的です。お店の人はページを1つ1つ作るので、お客さんがじっくり読んでくれるように思いがち。しかしお客さんは、そのページ単体ではなく、連続的に複数のページをざざざーっと見ていきます。
・検索してお店を見つける ・ページに入る ・何ページか見て、迷いながらいいものを探す ・自分にピッタリのものがどれかを考える ・購入しようと決める ・問題がないか確認する ・ついで買いできるものがないかチェックする ・購入完了する
だから、「お客さんは自店舗の画面の前に何を見ているかな、次に何を見るのかな」、などと時系列で、動画的に捉える必要があります。
個々のページではなく、同じように自分も、短い時間で、「検索キーワード選びから始まる一連の流れ」で、サクサクとページを見てください。 すると、紙芝居やパラパラマンガのように、お客さんのイメージが動き始めます。
店舗ページをいじるときも、個々のパーツに囚われず、「時系列で見る」のが大切です。「このページの前に何を見ていたか」「途切れなく繋がっているか」など、他のページとの繋がりをイメージしながら作業して下さい。
逆に、ひとつひとつのページだけを見ていると、全体のバランスが崩れます。
そうならないためにも、自店舗を見直すときは、何度も「パラパラマンガ」をしてみてください。
以下、時系列に沿って、モールでの「ネットショッピングのユーザ行動」を解説しますが、これらを断片としてとらえず、流れで理解するようにしてください。
最初は検索結果
お客さんは、検索して、検索結果画面を見ます。これが以前お伝えした「視界」にあたります。検索結果にはいろんな商品が並びます。あなたのお店も、基本的にこの検索結果画面の中に埋もれています。
埋もれている中で、目を引く商品・お店はどのようなものか?試しに、いちユーザとして、検索してみてください。自分のお店だと冷静に見れないので、かならず「個人的に本当に必要な買い物」の観点で検索してください。
自分の比較基準(家族の人数や予算感、欲しい機能)などを踏まえて眺めてみると、クリックしたくなる商品とそうでもない商品がありますよね。この感覚を覚えておいてください。なお、ここでのクリック率を高める施策は後で案内しますが、今は、それよりもユーザ目線の感覚を養う方が大切です。一足飛びに「じゃあどう直そうか」を考えすぎないようにして下さい。
商品ページから来店
実店舗では、お客さんは「お店」に来ます。しかし、ネットショップでは、お客さんはまず商品ページに来ます。お店の存在はあまり意識していません。
お客さんにとっての入り口は、検索にヒットしたページであり、実店舗のように「共通のエントランス」ではありません。逆に言えば、すべてのページがエントランスです。
お客さんの立場で、どのページからアクセスしても、店内のあちこちに移動しやすい構成にしましょう。どのページから来店されても、エントランスとしての役割・・つまりトップページとしての役割をきちんと果たせることが大切ですね。そういう状態を「マルチエントランス」なサイト、と呼びます。
これも、自店舗で考えるのは難しいので、個人的な買い物を通して実験してみましょう。「検索結果画面から、知らない店の商品ページに訪れる→その次にトップページに移動して『こんな店だったんだ』と思う経験」をしてみてください。
その感覚を大切にして下さい。お客さんとしての自分が、「買った瞬間に、楽天ではなく『この○○という店は良い感じだ』などと認知できるかどうか」も大事です。(楽天じゃなくても同じです)
店内でも回遊してみる
回遊性がちゃんとしていれば、検索にヒットした商品が仮にイマイチだったとしても、他の商品を買ってくれることがあります。下記のような動き方を、自分の個人的な買い物で試してみて下さい。
2:お客さんの心理パターンを知る
「来店客の意識の変化」をとらえることも大切です。これを購入心理のモード変化と呼びます。
ぼーっと検索していたら、気になる商品があり、そこから俄然「マジになって」各店舗の商品を見比べた・・という経験はありませんか。このギアチェンジ感が、ここでいうモード変化です。
では、お客さんの心理状態が、各モードでどう変わるのか見ていきましょう。
楽天などのモールで商品を探すユーザーの心理状態は、大きく3つに分けられます。
- あたりをつけるモード
- 比較・判断モード
- 脱線モード
あたりをつけるモード
例えば、出産祝いの購入を検討しているユーザーが、楽天市場に訪れたとします。最初にユーザは「出産祝い」で検索し、ベビー服、おもちゃ、抱っこ紐、など数あるジャンルから、自分に丁度良いモノの当たりを付けようとします。この時のユーザは、サイト上の膨大な商品の中から、方向性を探っているわけです。
この段階のユーザは、早いペースで商品を見比べ、どういう商品が丁度良いか考えることに集中しているため、商品ページへのリンクもそんなにクリックせず、もっぱら色々なキーワードで商品検索を繰り返す傾向にあります。
比較・判断モード
そして、ある程度自分が探している商品ジャンル(例:ベビー服)が絞り込めると、モードが変わり、ちょっとマジになります。
今度は絞り込んだジャンルの中で商品を比べようと、商品ページへのリンクをクリックし、価格や配送時間、素材やデザインなどを次々比較し始めます。詳しく比べて、最もふさわしい商品選ぼうとしている状況です。
この段階になると、ページ内の類似商品・関連商品の提案や、その商品を販売している店自体の紹介にも興味を持つようになります。
脱線モード
ところが、本来の目的を忘れ、「この商品こないだ雑誌で見た」とか「そういえばコレもうすぐ切れるから買い足さなきゃ」とか、脱線を始めるケースがあります。
これが、いわゆる非計画購買です。このモードのときの購買率がかなり高いことが、専門家の研究によって分かっています。
お客さんからすれば脱線ですが、お店としては積極的に狙っていきたいところです。離脱されないよう、色んな特集ページを見せたりして、店内の回遊を続けてもらいましょう。
このように考えると、「どのタイミングで、どういった情報を提供するのが効果的か」が見えてきますよね。
各モードで、お客さんが求める情報はそれぞれ異なります。来店客のモードの変化に気を配り、ページごと、シチュエーションごとに、どんな情報を提供するべきか意識するようにしてください。
3:実際にやってみよう
次に、ご自分が「見比べる側」に回ってみましょう。お客さんとして、実際に買い物をしてみてください。この際、「(お客さんとしての)自分の心理の動き」を観察できると、お客さんの気持ちは想像しやすくなります。
誰しも普段からお客さんとして買い物しているわけですが、日ごろネットで買い物をする時は「無意識に比べている・判断している」ことが多いので、いざ売る側に回った時に「お客さんの視点」を活用できません。
なので、意識的に、自分の頭の中や気持ちの動きを「細かく観察」しながら買い物するんです。これに慣れて、「自分がお客さんであるときの気持ちを思い出せる」ようになると、勘が働きやすくなります。
以下のワークをしてみましょう。この話は頭でわかっていてもまったく意味がないので、面倒くさがらず実践してみてください。
お客さん目線の体験
今回紹介した行動パターン・心理パターンを踏まえて、お客さん目線でいろいろな店舗を見てみましょう。「ユーザーとしての自分」を観察し、モード変化が自分の中で起こっているか確認してみましょう。
例えば、今、子供のケーキを探していて、アンパンマンのケーキを見ながら、
・ 赤すぎるので、着色料が心配になってみたり ・「子供が食べる分にはいいけど、自分が食べるにはちょっと重そうだなあ」と思ってみたり ・ ケーキと玩具のセット商品を見かけて、「あっ、こっちの方がいいかも」と気持ちが揺れ動いた り ・「そう言えば、プレゼント選んでなかった」って、別のことを考えて脱線してみたり
そういった自分の気持ちの揺れ動きを細かく観察しながら、買い物をしてみて下さい。
「お客さん体験」のルール
- 自分の扱っている商材ではなく、自店とは関係ない商品を選んで、買い物体験をしてください。
- なぜなら、自店で扱う商材の場合、売り手目線が消えないので、純粋に「お客目線」でみることができず、チェックの趣旨が変わってしまうからです。
- 静止画ではなく、検索結果画面からパラパラマンガで見てください。
- マルチエントランスを体験してください。
- 検索結果画面から、知らない店の商品ページに訪れる→その次にトップページに移動して『こんな店だったんだ』と思う経験のことです。
- 心理モードの変化を体験してください。
- 何となく検索していて、「ほしいかも」というモノを見つけ(当たりを付け)、お店を比較しつつ絞り込んでいく。
- あるいは、必要なものや欲しいものを思い出して、店に導かれてフラフラ脱線してみる。
- ※型番商品だと価格勝負になりがちなので、ノーブランド品が望ましいです。
おわりに
日ごろから意識しましょう
売り手の人が、お客さん側の感覚を忘れて、自己客観視ができず、親バカ状態になったりするのは、おそらく「お客さんの時の自分」を覚えていないからです。それはおそらく、ここまで細かく観察していないからだと思います。普通はここまで考えませんよね。
まわりの同僚や部下と話したり、家族や友達と話すのも良いと思います。自分以外の人の感覚を聞くのも、大変勉強になります。
今後は、ネットショップに限らず、常に、いつも、自分の行動パターンと心理モード変化を観察するようにしてください。そういった経験が積み重なっていくと、勘が磨かれます。個々のテクニックや情報に振り回されず、自信を持って判断できるようになります。
「どうぞ比べてください」と言おう
上記の行動パターンで、お客さんはひたすら商品やお店を比べています。
商売人は、「比べられる」ことから逃げられません。常に「比べられる」という宿命を背負っています。特にネットは、調べたり比べたりするために使われているわけですから、あなたも当然その対象になります。ですから、この現実から目をそらさず「どう見比べられているかに注意を向ける」のが大切です。勇気を持ってください。
ちなみに、売れる店はたいてい、自信を持ってこう言っています。「どうぞ比べてください。○○ならウチが一番です」「○○な方は、あっちにいくとよいと思いますよ」。
そう言えるためには、この「○○」を見つけるのが大切ですよね。次回は、そのためのお話をします。お楽しみに!
PS
自分の強みは、なかなか当事者には分かりづらいものです。「うちの店の強みって?どうしてお客さんに選ばれてるんだろう」
「これから、どの方向に伸ばしていけばいい?」
ぜひお手伝いさせてください。
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カテゴリー: EC戦略論