【後発店舗の運営戦略 #3】ライバルに埋もれない表現

こんにちは。坂本です。

競争が激化している中、後発店舗はどう動いていくべきか?そんなお悩みの方にお届けしている「後発店舗の運営戦略」シリーズ。第三回は、「選ばれる店になるための表現方法」について紹介します。
自店舗の強みを見つめ直すことで、ライバルに埋もれず、上手に存在感を発揮することができます!

「キャラ立ち」と「棲み分け」

これまでのおさらい

これまで、色々なことを学んできました。

  • 後発のお店は「たくさんライバルが並んでいる中に自店舗がある」という自覚を持つことが大切
  • 売り手は自分基準で思い込みがち。意識的に「自己客観視」を心掛けること
  • お客さんは多様な比較基準を持っている。価格や品質などの単純な基準だけで選ばれるわけではなく、後発店舗にもチャンスはある
  • ネットショッピングの「お客さんの行動・心理パターン」を知ること。想像上のお客さんではなく、よりクリアに「お客さんから見た世界」を実感することで、「どうすると売れるか」の感覚が養われる

※第一回・第二回の記事はこちら。

ここからは、上記の考え方をベースとし、たくさんのライバルに埋もれないよう、上手に存在感を発揮する方法を紹介します。

埋もれないためには「キャラ立ち」

先行する競合店舗にどう対抗していくか。埋もれないで、どう存在感を発信するか。そのために、大切な考え方が「キャラ立ち」です。

具体的には、「分野を絞って、特徴を際立たせる」ことです。芸人でいうと、「すべてのお笑い芸人の中で5位以内」に入るのは難しいですが、たとえば「『クイズに強い芸人』で5位以内」であれば目指しやすくなります。

あるいは、部活をしていた人は、「レギュラー争い」をイメージするとよいかもしれません。自分が得意なポジションに既にもっと上手な人がいる場合。「自分が狙えそうで、かつ自分の強みも生かせるポジションはどこか」を考えます。

ライバルが多い状況下では、真正面からぶつからず、「少しずらしてアピールする」のが有効なのです。具体例は後述します。

ニッチになって「棲み分ける」

「でも、そんな小さな世界で1位になっても意味がない・・」と思いますか?実は、インターネット上では、ニッチの方が有利です。

たとえば、カメレオン専門店があるとします。もし高知県室戸市に実店舗を構えていても、おそらく市内のカメレオン好きはごくわずかです。大きな売上は期待できません。

でも、これがネットショップだと、全国に散らばったカメレオン好きが集まってきて、まとまった人数になります。それぞれの地元ではとても小さな市場でも、それが全国から集まってひとつの大きな市場になるんです。

一方、たとえば低価格のレディースファッション商材、米や水、海産物などの「よく売れる商品」は、たしかに流通規模としては大きいです。ただし店から見ると激戦区、儲かりにくいのです。売っている当人に話を聞くと「疲れた。違う商品を売りたい・・」と思っていたりします。

つまり、インターネット上では「市場が小さい=不利」とは限らないのです。ニッチを抑えることで、強いライバルとも住み分けることができます。

1:人気店を作るための考え方

それでは、ここからは「キャラ立ち」と「棲み分け」を行うための考え方をご紹介します。

まず「視界」を分析する

お客さんと商品の間には「相性」があります。下図は極端な例ですが、お客さん側の比較基準と商品の特徴がマッチするときに、売上が発生するわけです。

次に、検索結果画面をイメージしてください。前回の記事と同じ画面です。注釈の通り、それぞれの商品には、それぞれの特徴がありますよね。

以前お伝えしたように「人によって比較基準はさまざま」ですから、これらの商品は、それぞれの商品と相性の良いお客さんが買います。

一番簡単なキャッチコピー

さてここで、誰でも書ける「一番簡単なキャッチコピー」を紹介します。実際に売上も上がります。

〇〇な方に人気です。なぜなら△△だからです

○○が「対象客」で、△△が「人気の理由」(=商品の特徴)です。たとえば「この季節、つい飲み過ぎる方に人気。ウコンが従来品の2倍入っているからです」といった書き方になります。

表現は色々変えられます。応用するとこんな感じです。

・○○でお困りの方に好評。△△が優しくサポートします。
・〇〇がXXだと評判!その秘密は△△

要は、自分と相性の良い客層に向けて、「〇〇な人向け」と言い切ってしまうことで、該当者からの注目を集めます。次に、△△という理由を添えることで、納得してもらうわけです。

大切なポイントは、○○な人をしっかり絞る点です。「それ以外」の人を除外することになるので一見売れなくなりそうですが、実際は万人受けの商品には誰もふりむかないので、しっかり絞った方がよく売れます。

「万人受け」を諦める

何度もお伝えしているように、すでに先行するライバルが多いので、あなたは「みんなに好かれる」ことを諦める必要があります。

みんなに好かれようとするのではなく、「自分のことをある程度好きな相手」「相性の良い相手」を見極め、その人に絞りこんで、「あなた限定です」とアピールしていくのが大切です。むしろ、対象外の客さんは突き放す位でちょうど良いと思います。その方が対象となるお客さんから熱い支持が得られます。

他社商品と対比する

対象とする客層を明確にして「○○な方へ」と呼びかけたら、次は「他社との違い」を明確にします。「自店舗のお客さんが求めていること/困っていること」「競合の長所と短所」を踏まえると、どの角度からアピールすればいいかが見つかります。

キャッチコピーの例を挙げると、

敏感肌の男性におすすめ。一般的な△△(競合)には○○成分が入っていますが、一方この商品は○○なので、□□のお悩みも軽減されます

と、 こんな形になります。競合と対比していますよね。「他社を批判したくない・・」という方は、上記のキャッチコピーのあとに、

○○成分が気にならない方は○○なので、△△(競合)をおすすめします

などと書き添えておくと良いでしょう。公平で、押しつけがましくない印象になります。対比のさせ方としては、

・他と違って○○という特徴があるので、○○祝いにおすすめです
・ほとんどの通販用うどんは乾麺ですが、当店は手打ち・半生だから風味が違います
・特別な日のための「ワンランク上」のセットです

などなど。よく使われる表現なので、日頃町を歩いているだけで沢山お手本が見つかるはずです。単なる自慢アピールと比べ、「周りの環境を知った上でのアピール」は、非常に効果が高いのです。

また、小規模店舗と大手業者がぶつかる場合は、「大手のチョコレートケーキコーナー VS チョコレートケーキ専門店」といった構図になることが多いです。小規模店舗の方が「専門性が高い」印象になるので、これを使います。たとえば「当店はチョコレートケーキしか作りません」と言い切る等。

「○○専門です」「○○しかやってません」は、説得力を持たせるのに大変有効です。

2:強みを見つけて上手に表現する

ここまで、「人気店を作るための考え方」を紹介してきました。
でも、いざ実行しようとすると「自分の店の場合はどうすればいいの?」と皆さん悩むものです。ここからは、「自店舗のウリ・強みを見つけて表現していく」手順について紹介します。

事実から始める

自店舗のキャラ立ちを考える際に大切な観点は、「自分がどうなりたいか」ではなく、「自分がどう見られているか」から検討を始めることです。言い方を変えると、思い込みや願望ではなくではなく、「事実」から始めることです。

この際に大切なのが、リサーチです。具体的には、「私のことどう思う?」「私のどこが好き?」などと聞くことです。実際の人間関係では若干聞きづらいですが、ビジネスにおいては一般的に行われています。必要なのは、ちょっとした作業と、少しの勇気です。

お客さんによって、好む商品が違います。あなたの商品やお店は、どういうタイプのお客さん(=どういう比較基準を持ったお客さん)に好かれているでしょうか。自分の商品が、どのような人からどういう理由で選ばれているかを自覚すると、更に選ばれ易くなる表現ができます。店の進む方向性も明確になります。

強みを発見する

ネット上に限らない、「本業を含めた強み」について考えましょう。

「あなたのお店の強みは何ですか?」・・と聞くと多くの人が「特にありません」「普通の店です」などと言います。でも本当に存在価値のない店なら、事業が成り立っているはずはありませんよね。

現在、売上が少しでもあるなら、それはお客さんが買ってくれているからです。お客さんは「目に届く範囲でベストの買い物をしようとする」ものですから、「他の似たようなお店」も一旦候補に入った上で、あえてあなたの店を選んでくれたわけです。

自店の強みを見つけるコツは、自分で想像するよりもまず、このような「既に自店舗で買ってくれているお客さん」に質問することです。

以下の質問をしてみて下さい。

Q.他にも似たようなお店(商品)があるのに、なぜウチで買ってるの?

例えば、このような答えが返ってきます。

A.飼っている犬が歳をとって、最近食が細くなったんです。
動物病院の先生に相談したら、この店を勧められました。オーガニックなドックフードの店で一番丁寧に選んでるなと思って、その後、ずっと使っています。

ここで見えてくる強みは、商品そのものとは限りません。品揃えや接客力、付随するサービスだったりします。また、強みと言えば何か特別なことがないといけないように思えますが、「品揃えが絞られている(余分な商品がない)」「派手じゃなく落ち着いている」「煩わしい○○がない」など、「何かがない」ことが強みになる場合もあります。

1人だけでなく、何人かに聞いてみてください。方法は対面でも、電話でも、メールでもファックスでも構いません。何人かに聞いているうちに、傾向が見えてきます。

ちなみに、ネットショップを運営している場合は、レビューや、問合せメールの中にヒントが含まれています。必ず読んで下さい。レビューや問合せメールからヒントを探すのは、「砂金を探すのと同じ」です。目を皿のようにして大量のレビューを読み進めてください。諦めずに読めば、どこかに、「自店舗の強みを的確に表現したレビュー」が見つかります。

強みを伝える

これを把握して上手に表現することで、ネットのお客さんも購入してくれるようになります。たとえばこんなキャッチフレーズを作り、ページの色んなところに書きます。宣伝するときも、選挙カーのように名前を連呼するのではなく、まずこのキャッチフレーズを使います。

獣医師もオススメ!オーガニックドッグフードの専門店 ○○屋

※「医師おすすめ」の表記は、商材や記載内容によっては薬機法違反に該当する場合があります。ご注意ください。

この調査と並行して、「どういう人がどういう理由で買っているか」を把握してください。例えば、前述のように「老犬の体調を気遣っている飼い主に人気」という傾向が見えれば、更にページにそれを反映していきます。こういうフレーズ、よく見かけますよね。

獣医師もオススメ! オーガニックドッグフードの専門店 ○○屋
こんなワンちゃんとオーナーさんに人気です。
・年を取って、食が細くなってきた。でも何を選べば良いのか分からない
・お医者さん曰く、うちの子はアレルギー体質とのこと。食べ物に気を遣いたい
・どうせ食べるなら、健康で安全なものを選びたい

これらのフレーズは、思いつきで書くのではなく、お客さんと話したりアンケートをして「常連さんに共通する傾向」から書くのが大切です。そうすれば、「自店のことをまだ知らないけど相性の良いお客さん」に、ストレートにメッセージが伝わり、「これは私にぴったりのお店だ!」と思ってもらえます。

このように、何か画期的な強みを見つけるのではなく、「既に今買ってくれている人に理由を聞く」のが早道です。ゼロから作るのではなく、「既に小さく成功している箇所」「人気のある箇所」を見つけて、それを「増幅させていく」というイメージです。小さな種火を大きくしていくような感じですね。

そして、これを表現します。「一部のお客さんが気づいているあなたの魅力」を、多くの人が理解し共感できるように、分かりやすく上手に表現し、伝えていくわけです。

強みを作る

とは言え、ここで見つかった強みがそのままネットに転用できるとは限りません。ここでは、「そのまま使えない」場合の対処について紹介します。

実店舗で「店員さんが笑顔で接客してくれて素敵」という評判があったとして、それはネット上ではそのまま使えません。この場合、ネットショップ向けに「強みを調整して転用する」必要があります。

たとえば店員さんの笑顔の写真と「人となりが分かる情報」を載せます。次に、ネットショップでは問い合わせしないで自販機的に買うことが多いですが、電話やメールで問い合わせしやすくし、「お客さんとのコミュニケーションを人工的に多発させる」必要があります。専門知識のある店員さんであれば、ブログやSNSで定期的に情報発信するのもいいでしょう。

一方で、「お客さんに知られていない強み」がある場合もあります。これは、上手に表現したり商品化したりしないと、ネット上での実績には結びつきません。

例えば、食材を売っているとして、高級ホテルのレストランに卸している実績があるとします。これはお客さんには伝えないと伝わりません。「有名な高級ホテルの料理長も絶賛。ご家庭でもレストランのプロの味が楽しめます」といった表現になります。

※ホテルの名前を出すと怒られるかもしれませんが、「高級ホテル」という程度の表現であれば問題にならないと思います。どんな会社でも何社かと取引があるわけですから、「この『高級ホテル』はウチのことだろ」とは言わないはずです。

前述のように、まず最初はお客さんの声を聞いて判断すべきですが、そのままでは伝わらない場合は、表現を切り替えたり、商品を切り替えて、上手に伝えていきましょう。

まとめ

以上、自店舗を分析し、「キャラ立ち」と「棲み分け」するための考え方から具体的な方法までご紹介しました。

ぜひ、さまざまな客層と「自店舗や競合の商品のマッチング」を考えてみてください。自店舗の商品がどんな人に選ばれているか、客観的に見えてくるはずです。

全てのお客さんを、自分の店に呼んでくることはできません。「自分のお店・商品にピッタリなのはこういうお客さんで、こういう感じの人はお客じゃないんだな」という実感を得て下さい。

もし「なかなか強みが見つからない」「上手なアピールができない」など悩んでしまい、堂々巡りするようでしたら、それは・・「当事者だから」かもしれません。当事者だからこそ見えづらいことはよくありますよね。

「うちの店の強みって?どうしてお客さんに選ばれてるんだろう」
「これから、どの方向に伸ばしていけばいい?」

ぜひお手伝いさせてください。

私たちは、第三者の客観的な観点から、対話とデータを通してあなたのお店を分析し、店舗の魅力を引き出すお手伝いをしています。ご興味ある方は、以下のページを是非ご覧ください。

カテゴリー: EC戦略論

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