【後発店舗の運営戦略 #4】「競争を避ける」売り方

こんにちは。坂本です。
「後発店舗の運営戦略」シリーズもとうとう最終回。最後は「競争激化時のサバイバル方法」をご紹介します。

「競争が激しすぎて勝ち目がない」「競合が強すぎてこのままではダメだ!」という時の考え方と対処方法です。また、「今の市場ではシェアが取れて、更なる拡大として次の市場を狙うとき」にも使える考え方ですので、当座は必要がないという人も、考え方だけでも押さえておくことをオススメします。

はじめに

どうにも勝ち目がない時は?

これまで、いろんな考え方・手法をお伝えしてきました。

  • 「すでにライバルがたくさんいる中に店を出す」という状況を踏まえる
  • ライバルがたくさんいる中で『見比べられている』ことを自覚する
  • 『価格と品質』ではなく、多様な判断基準で選ばれていることを自覚する
  • みんなから好かれることをあきらめる
  • 願望ではなく事実から、自分のキャラ立ちを考える

※第一回~第三回の記事はこちら。

しかし、これらの考えを踏まえて工夫を尽くしても勝ち目がない・・ということが、あります。よくあります。

  • そもそも、検索結果で埋もれて表示されない場合
  • どうアピールしても勝てないほど、商品に差がある場合

ここで案内する方法論は、そんな時に使います。

「目立つ」と「儲かる」は別

そもそも検索結果で埋もれて表示されない、とお感じの方へ。

何度もお伝えしているように「ライバルが多い中に後発参入」しているわけですから、「ライバルがいない場所で自分だけが目立ちたい」なんて、そもそも不可能です。後発店が目立つためには、相応のお金が必要です。

でも、もし「目立つ場所にいないと商売が成り立たない」のなら、路地裏にお店は存在しませんよね。実際は、大通り沿いでも潰れる店はあるし、路地裏でも売れる店はあります。

そもそも「目立つ」ことが目的ではないはずです。考えを切り替え、大きく目立つことを諦めて、路地裏のような「露出しやすい箇所」で、十分な収益を上げられるようになりましょう。具体的な方法は後述します。

「間違って買う」ことを期待しない

どうアピールしても勝てないほど商品に差がある、とお感じの方へ。

以前ご案内したような「ごく一部の客層に絞り込んでアピールする」といった方法論でも難しい状況なんですよね。

でも、「お客さんが、競合と比べて明らかに見劣りするこの商品を、『間違えて』わざわざ割高な料金を払ってくれる」ことを期待しているのであれば、それは間違いです。仮に実現できたとしても、長続きしません。

かといって、値段を下げたり、品質を上げたりするのも難しい状態だろうと思います。そこで、後述する方法で「商品を生まれ変わらせる」ことを検討してみてください。大きな転換のきっかけになるかもしれません。

対処方法は2つ

対処方法として、以下の2つの方法を案内します。

  • 1.キーワードを見直す
  • 2.商品を見直す

前者は、検索で埋もれている状態への対策です。商品をいじらずに、キーワードを追加するだけの方法です。手軽に取り組める一方、他社にとっても真似しやすいので、効果の陳腐化も早いです。

後者は、「既存商品を少しいじった新商品」を作るなど、ちょっと手間をかける方法です。これにより、新しい市場を開拓できて、かつ新しい検索キーワードでの露出を見込めます。うまくいけば、競争を避けながら大きな売り上げを立てることが期待できます。

1.キーワードを見直す

まず、検索で埋もれている状態への対策をご説明します。

※楽天やYahoo!ショッピング、独自ドメイン店など、売り場に限らず共通する話です。

ロングテールで売る

例えば、あなたはタオルを売っているとします。
商品検索するときに一番最初に思いつくキーワードは、おそらく「タオル」や「タオル 送料無料」でしょう。でも、そのワードで検索したとき、真っ先に自分の店の商品が出てくることはまずありません。競合する店の商品ばかりが表示されるはずです。

しかし、「タオル オーガニックコットン」のように検索対象を絞ってみたり、「出産祝い ギフト」のように角度を変えて調べてみると、ライバルが減り、徐々に自分の商品が表示されやすくなります。

実際、小さなネットショップの場合、「最も売上に貢献している検索キーワード」は、たとえば「タオル ふかふか」のような、とてもニッチなキーワードだったりします。これこそが、先ほどお話しした、「路地裏の店でも売上を作れる」という話の意味するところです。

どうすれば、そのような様々なキーワードで表示されるようになるのか。細かい説明を端折ってごく簡単にいうと、商品情報の中に「オーガニックコットンのふかふかしたタオルです。出産祝いのギフトにおすすめ」といったフレーズが含まれていればいい、と考えて下さい。

「『タオル』の検索で上位に入りたい!」というムリな願望を諦めて、現実的に売上が取れるよう、キーワードを「広げて」いきましょう。

キーワードを広げる

では、どのようにキーワードを見つければいいのでしょうか。

以下の手順で「お客さんが検索しそうなキーワード」を洗い出して、リストアップします。考え方は、大きく分けて2つあります。

  • A.ツールを使う
  • B.想像力を使う

以下、それぞれ説明します。

A.ツールを使う

検索時、以下のような検索ワードの補助(サジェスト)が表示されることがよくあります。

これは「よく検索されるキーワードの組みあわせ」から特に多いものを表示しています。上は楽天市場の検索画面ですが、Google検索やYahoo!ショッピングなど、色々なところで使われていますよね。

つまり、これを見ていると、お客さんが、実際に検索時に使っている言葉が分かります。これらの中から「自店舗の商品紹介に使えそうなキーワード」を探し、商品情報などに記入していきます(自社商品に関係ないキーワードを記入するのは、当然NGです)。

例えばこちらの例。

「1kg」はなかなか意外ですが、おもしろいですね。欲しければ1kg分買えばいいんですが、お客さんは、わざわざ「1kg分として売っている店」を探すんですね。店側としては「黒にんにく 1kg分」という商品を作ればいいだけなので、対応は簡単です。

あるいは、そのキーワードには「別の呼び方」があるかもしれません。たとえば「スイーツ」は「お菓子」「洋菓子」「焼き菓子」などとも言えますよね。

そういった「類語」を調べてくれるツールもあります。


※出典:類語玉手箱

類語玉手箱というツールを使います 。細かいキーワードは登録されていないので、上記のように、和菓子やあんみつではなく「菓子」のような広い言葉で検索してみて下さい。

B.想像力を使う

2つ目は、頭で考えて、キーワードを広げる方法です。
こちらのほうが難易度が高いですが、その分効果もあります。単純に「スイーツ」を「お菓子」と言い換えるのではなく、例えば「デザート」「おやつ」「お中元」などと、広げて考える方法です。「デザート」「おやつ」は食べるタイミングを表わしますね。「お中元」は用途です。

調べてみると分かりますが、「スイーツ」より「おやつ」のほうが競争が少ないんです。もちろん需要も少ないですが、「路地裏」のようなもので、後発の店はこういうキーワードを意識的に狙う必要があります。

商品によっては、「こういった想像を働かせないと売れない」場合もよくあります。

例えば、取り扱い商品が「ババロア」の場合。ロールケーキなどの一般的な洋菓子ならともかく、「ババロアが食べたいから『ババロア』で検索」などと決め打ちする人は余りいないと思います。だから、もっと間接的なキーワードを想定しましょう。「スイーツ」「夏 デザート」「お中元」といったところです。

あるいは、あなたが屋形船のお店を経営している人で、検索連動型広告を出していると想像してください。

「屋形船」検索経由で露出しても、周りも屋形船ばかりなので、競争は激しいですよね。そこで、想像力を働かせます。「夜景」というキーワードで露出したらどうなるでしょうか。

「夜景」特集に掲載されているスポットは、ビルの上層階にあるバーやレストランなどが多いはずです。その中で、「海の上から見る夜景はロマンチック」といった案内を添えて案内すると、かなり目立ちますよね。他に屋形船のお店はないですから。

このように、ツールを使ったり想像を膨らませたりして、見つけたキーワードを書きためていきます。玉石混淆かもしれませんが、まずは書きためましょう。

ページにキーワードを記入する

ある程度キーワードがまとまったら、優先度をつけて、商品情報やページに記入します。キーワードを記入したら、ページ側も修正しましょう。

たとえばタオルを売っていて、「出産祝い ギフト タオル」でお客さんが来てくれることを期待しているなら、必ず、そのお客さんを「出迎えてください」。

具体的には、前回ご案内したようなキャッチコピーを書くことです。「出産祝いのギフトを探している方に人気です。その理由は・・」といったキャッチコピーです。対象客と、その人におすすめする理由を書くんでしたよね。覚えていますか?忘れてしまったという方は、こちらの記事を読み直してみてください。

この際、欲張ると効果がなくなります。「出産祝いや香典返しや自分用タオルをお探しの方に」などと書いてはいけません。対象が絞られていないからです。欲張らず、絞りましょう。それ以外の選択肢はありません。

なので、どのキーワード(=どのお客さん)を優先するか、しっかり考えておかないと、売れるキャッチコピーが書けないので、売上に繋がらなくなります。前述のように、「キーワードの優先順位」が大切です。記入作業にもキャッチコピーにも影響します。

※あと、できれば、キャッチコピーの後に「このタオルは一般的なタオルと違って・・」というように、他社商品との違いを際立たせられると、より購入率が上がります。

2.商品を見直す

キーワードやキャッチコピーの記入は、とても簡単です。しかし、ライバルに真似されてしまう懸念もあります。
一方、ここから案内する商品の見直しには、手間が必要です。でもその分、ライバルに真似されにくいです。

簡単な施策は寿命が短いので、「まずは簡単な施策で売上を引き上げて、次に手間のかかる施策に取り組む」といいでしょう。

メーカー型の場合

例えば、「商品を別のものに見立てて売る」考え方。いわば、唐揚げ屋さんが、唐揚げの競争が激しい場合、チキン南蛮やユーリンチーを作るようなものです。

実際に、墓石のメーカーが、墓石の原料(御影石)をスライスして、パンこね台やオーディオボード(スピーカーの下に置く台)を作って、全く違う客層に売れた、という事例があります。

同様に、ところてんのメーカーが、ところてんをサイコロ状に切って、あんみつの寒天を作り、人気商品になったというケースもあります。仕入れてきた餡をセットにして、季節限定の「さくら餡蜜」「栗餡蜜」を売っています。

検索の側面から考えると、「墓石」ではなく「パンこね台」「オーディオボード」、「ところてん」ではなく「あんみつ」「和菓子」といったキーワードでも集客できるようになった、と言えます。

メーカーの取れる戦略として、他には、「ワンランク上の商品を作る」という考え方もあります。お客さんの近くにあるのは、通販よりも、スーパーやコンビニです。ここに安く流通している商品群が最大のライバルです。そう考えると、「スーパーやコンビニで余り見かけない商品」のほうが、わざわざネット経由で買ってくれることを期待できます。

なので、普段よりも少し上の凝った商品を作ると、周囲の商品と差が付きますし、メディアに取り上げられやすくなったりします。A級ではなくてBプラス程度の、「ちょっと上」で十分です。

何を作るか迷うと思いますが、お客さんと同じように色々検索で調べていけば、「ここは激戦だな」「こっちのほうが競争が緩やかだな」「この商品はお客さんの本当のニーズを分かってないな」など、ある程度見当が付きます。考えるだけならタダなので、まずは試行錯誤してみてください。

仕入れ型の場合

仕入れて売っている人場合、モノそれ自体はアマゾンでも売っていますから、「そのまま売る」だけでは差別化しづらいです。そこで、たとえば以下のような方法が有効です。

  • ギフトの写真立てに、メッセージや日付を入れる
  • 革のバッグに、焼き印でイニシャルを入れる
  • 何かに刺繍を入れる
  • 追加料金でより豪華なラッピング
  • オリジナルの活用マニュアル付
  • 当社オリジナルのカバー付

商品それ自体が仕入れであっても、この「一手間」が加わることによって、他社と比べられにくくなります。これらのサービスが気に入った人は、商品本体が多少高かったとしても、あなたの店を選ぶ可能性があるわけです。

あるいは「商品を代わりに選んであげる」という観点。たとえば「初めて熱帯魚を買う人のために、水槽・熱帯魚・餌・必要機材一式をお届けします」といった売り方です。これらをそれぞれ自分で選びながら1つずつ買うとしたら・・・初心者にはかなり手間ですよね。一方、売り手側にとっては予め揃えておくだけなので、ラクです。

他にもいろいろなやり方があります。ここでは全て触れませんが、大事なポイントは「単純な仕入れだけで商品を動かすでなく、そこにひと手間を加えることによって競争力が上がる」という点です。具体的に何をすれば良いか、すぐ思いつかなくても、日々の仕事をしながら観察をしていけば、自然とアイデアが溜まっていくと思います。

尚、これらの「サービス付商品」を売る場合は、それぞれ「探す際に使われるキーワード」も意識してください。たとえば、名入れ、名前入れ、名前入り、メッセージ、ネームプレート、刻印など。せっかくのサービスも、見つけて貰えなかったら意味がありません。

おわりに

「後発店舗の運営戦略」シリーズの最終回をお届けしました。

少しの手間が「将来への備え」

これらの話を聞いて、「ちょっと面倒だな」「新しいことを何もしないで売上だけ伸ばす方法はないかな」と思った方がいらっしゃるかもしれません。

確かに、何事も新しいことをするときには、一番最初に手間がかかります。一方、「何もしない」ままだと、一番最後に大変な苦労がやってきます。そして、たいていの場合、「早めにあれをやっておけば」と思うものです。

情報技術や物流の進歩によって、商売はどんどん難しくなっています。今できている売り方も将来は使えなくなるかもしれません。そう考えるとちょっと面倒な一手間は「将来への備え」です。

考えるだけならタダですから、長く商売を続けるためにも、少し考える時間を取ってみてください。

面倒じゃなくなる工夫

小さな工場で、つぶれずに生き残っているところは、大抵「大きな工場でできないこと」をしています。職人の技術もあるでしょうが、小ロットで対応してくれる、細かいカスタマイズが可能、といった「一手間」で大手に対する差別化をしているようです。

こういった「大手がやらない面倒な仕事」をサービス化するためには、「面倒なことが楽になる工夫」が大切です。

ある種の深海魚は、何億年もの間、絶滅せずに生き続けています。競争を避けたい我々としては、理想です。それができたのは、難しい状況でも生きられるように自分を鍛えたからです。競争を避ける代わりに、「生存困難な環境に適応する」という、より難しい仕事を己に課したと言えます。厄介な環境が苦にならなくなる工夫が必要です。

弊社ではこれを「ブラックオーシャン(=深海)」戦略と呼んでいます。 ※弊社の独自用語です。
独自の強みを身につけ、我々も深海魚になって、ライバルよりも長くしぶとく生き残ってやりましょう!

この記事を通して伝えたかったこと

ということで、後発店舗のシリーズ記事はこれにて完結です!
テクニック論ではない、「ECの本質的な考え方」が伝われば幸いです。

私たちは、中小EC事業の「バランス良い経営」をテーマとした支援をしています。
小さな店が、大きいお店に負けない魅力を発揮し、お客さんに愛されて、幸せに売れ続ける。

そんな都合のいい状態を実現するためには、かなりの工夫が必要。その工夫の一端である「後発店舗の運営戦略」を、このシリーズ記事でお伝えした次第です。特に重要なのが、最後のほうで書いた「ブラックオーシャン戦略」です。大手に出来ない味を出す。

これからは「便利さ」よりも「豊かさ」が大切な時代です。そして、豊かさとは「選択肢の広さ」です。だから、私たちは「便利な大手EC」だけではなく「個性的な中小店舗」もたくさんある「豊かなEC業界」を目指しています。

祭の夜店のように、様々なお店で賑わっている世界を作りたい。
そんな志を持って、皆さんそれぞれの理想を実現すべく頑張っております。

私達のスタンスにご興味をお持ちいただいたら、ぜひ以下のページも是非ご覧ください。

また、私達の運営戦略や経営支援が必要な方は、以下のページもご案内ください。

カテゴリー: EC戦略論

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