こんにちは、坂本です。今回は、経営者やマネージャーの方向けに、人材活用がテーマです。
皆さんは、社員の「こんな仕事をしたい」「自分にはこんな強みがある」といった、希望やスキルを把握していますか?
社員の特性を組織運営でうまく活かすことができれば、会社で活躍してもらいやすくなります。しかし、ここに大事な前提があることも忘れてはいけません。それは、「会社にある仕事とマッチしているか」どうかということ。
今回は、「社員のやりたいこと」と「会社が本当に必要としていること」のバランスの取るためのフレームワークをご紹介します。社員に限らず、パートやフリーランスなど「メンバー全員に当てはめられる考え方」なので、ぜひ参考にしてみて下さい。
- 目次 -
「Will・Can・Must」のフレームワーク
今回ご紹介するフレームワークの重要なキーワードが、「Will・Can・Must」。
実はこれ、リクルートでよく使われているフレームワークです。
フレームワークとは、簡単にいうと、基本となる考え方のこと。つまり、「この3つを意識しながら、社員やパートさんと接していくといいですよ」というコミュニケーションの指針です。
リクルートといえば、ご存知の方も多いと思いますが、採用の目利きや人材活用において、非常に長けている会社です。楽天でも元リクルートの人はとても多くて(実は私の弟もリクルート…)、人材を輩出する企業としても有名ですね。
そんなリクルートで活用しているフレームワーク、「Will・Can・Must」がとても便利です。
まず、この3つのキーワードについて、簡単にご説明します。ここでは概要をお伝えしますので、「もっと詳しく知りたい」という方は、この記事をお読み頂いた後でネットで検索してみて下さい。もっと詳しいことが色々と書いてあります。
「Will・Can・Must」の3要素とは
Willは、社員の「こういうことをやりたいんです」という本人の意志です。
Canは、「こういうことが得意です」という能力やスキルです。得意分野だけでなく、苦手分野も知っておくといいですね。
Mustは、「会社としてやってほしいこと」「必要な仕事」です。
- Will ・・・やりたいこと
- Can ・・・できること
- Must・・・やらなきゃいけないこと(やるべきこと)
組織運営においては、この「Will・Can・Must」の3つをバランスよくやっていくことが重要です。
「3つの要素がすべてが重なること」が理想形
「Will・Can・Must」は、以下のようなベン図で表現されることが多いです。
その社員がやりたいと思っていて(Will)、その人が得意な「Can」なことであり(Can)、会社として、まさにそれをやらなきゃいけないこと(Must)もある。
この3つがすべてあてはまると最高ですよね。会社としても理想的な状態になります。
当然、本人(社員、パート、フリーランス…)も大活躍されると思いますが、この3つがかぶるかどうかは予め分かりません。ですから、ヒアリングが重要になります。
「Will・Can・Must」の運用方法
「Will・Can・Must」の3つがあてはまると理想的です。しかし、勝手にうまくいくわけではありません。
それぞれの中身を明確にして、つないでいくことが肝心です。
ここからは、経営者やマネージャーとして、会社や自部門の「Will・Can・Must」をどう運用していけばいいのか、考えてみましょう。
まず、「Must」を明確にすることから始めよう
会社の観点で見ると、「この3つのうち、一番大事なことは何か」と言うと、まず「Must」です。
自分たちの事業を円滑に進めるにために、「どんな仕事が社内にあり、何をやっておかなければならないか」、きちんと洗い出しておく必要があります。この業務の洗い出しは、トップが中心となり、進めなければならないでしょう。
「Must」が不明確なまま、「その仕事をやりたいんですか。いいでしょう」と進めてしまうと、当然うまくいきません。
とはいえ、「Must」だけだと、本人が興味がない仕事や不得意な仕事を、会話もせずに押しつけることになりますよね。そうなると、各自の強みやスキルが活きず、社員の主体性やモチベーションが下がってしまいます。このような状態も好ましくありません。
Mustを洗い出したら、優先順位を整理しましょう。
トップ自身が「Must」を把握しておらず、仕事が散らかっている状態では、「Will」や「Can」の話をする余裕もありません。でも、「Must」がスッキリすると、「当社で今やらないといけないことは、これだ!」とクリアになります。
この段階ではじめて、社員の状態や内面を気にかける心の余裕がでてくるのです。
面談で、「Will」と「Can」のありかを確認する
「Must」を自分の中でクリアにできたら、社員との面談です。ここで、ようやく、「Will」や「Can」について、話していくことになります。社員との面談のことを、最近は「1on1」といいますね。
- 「〇〇さんは、どんな仕事が好きなんですか?」
- 「こういったことが得意とか、こういうことをもっとやりたい、という希望はありますか?」
- 「実はこの仕事は苦手、ということはある?」
というように、キャッチボールしながら聞いていきます。この時、「Will」と「Can」のバランスが重要です。
「好きではないけど得意」ということもあります。「Will」がなくて「Can」があるパターンですね。
逆に、「この仕事は好きだけど苦手」という、「Will」があっても「Can」がないパターンもあります。
こういった場合、会社は学校ではないので、「本や学校などで、自分で勉強するといいんじゃないかな」という風に、本人に能力を高めてもらうよう促すといいでしょう。
相手の「Will」と「Can」が重なるところはどこなのか。「Will」と「Can」のありかを確認していくことが、面談での重要なポイントになります。
面談でのスタンス ーお互いを知るためのカミングアウトー
どうしても中小企業には余力がないので、面談では話の切り出し方にも注意が必要です。
「会社においては、どうしても誰かがやらなければいけない仕事、というものもあります。 なので、必ずしも希望通りにいくわけではないですが、機会があった時にはお願いできるので、希望を聞かせてくれませんか」
というような聞き方がよいかと思います。実際、僕らの会社でもそんな風に対話しています。
大企業のように、好きな部署に転属させような余裕はなくても、できることはあります。
お互いを理解するためにも、「何が得意で不得意で、何が好きか」「自分にはどんな癖があり、相手にはどんな癖があるか」ということをお互いカミングアウトしておくことは大事です。
時には、
「そうなんだ。この仕事は苦手なんだ。 ごめんね、ちょっと他に人がいないので、今はあなたにお願いするしかないんです。 苦手だということは頭にいれておきます」
というフォローも、必要ではないかと思います。
1on1の面談については、ネットでたくさん記事があります。
「社員との面談はどうやってやればいいのか」という興味や悩みがある方は、「1on1」で検索してみるといいと思います。GoogleやYahooの「1on1」が有名ですね。ただ、僕らはGoogleでもYahooでもありませんので、そのまま踏襲する必要はないし、鵜呑みにするのも危険だと思っています。
「Will・Can・Must」から「Role」を生み出す
「Must」は会社にとって大事なことですが、社員やパートさんから見ると、どうしても義務になってしまいます。
そこで、「Will・Can・Role」という考え方があります。
「Role」とは、役割のことです。役割で「ごっこ遊び」する、ロールプレーイング・ゲームがありますね。
その役割を社員にあててみる、というわけです。
「Must」という、やらなければいけない仕事としてではなく、「あなたは何したい?」「何ができるの?」と聞いて、「会社としては、この役割をお願いしたい」と伝える。このようなコミュニケーションの方が、より相手の活躍を期待している印象ですよね。
つまり、その人の「Will」と「Can」と、社内に存在する「Must」から、「Role」は作っていけるということです。
その人の期待や役割を考えて、
- 私達の会社の事業は、今はこんな感じで、こういう役割が必要です
- 〇〇さんは、こういうことがしたくて、こういうことが得意ということですよね
- 私が期待するこの役割に、あなたはぴったりだと思います。
- だから、こういう仕事で活躍してほしいんです。どうですか?
というように、役割に対し、相手のWillとCanを踏まえて任命する感じです。
理想的な人材配置をできる組織体制の会社は、少ないかもしれません。ですが、それこそ、「ロールプレーイング・ゲームの勇者」が、活躍を期待される感じをイメージしてみてください。
「私達の事業には、あなたのそのWillとCanが必要なので、是非活躍して下さい」と伝えることができれば、非常にいい形で物語が始まるんじゃないかと思います。
まとめ
以上、今回は、人材活用の考え方として「Will・Can・Must」をご紹介しました。
3つ全てがきれいにそろうことは、あくまで理想ではあります。まずはMustが必須で、それを基盤としてWill/Canを活用していく、という構造です。
トップは「Must」をクリアに整理して、相手の「Will」や「Can」をヒアリングしてみることが大事です。ここで、自分の「Will」や「Can」を話してみてもいいかもしれないですね。
このように、お互いの一番活躍するポイントを考えていくことで、いい面談や雇用関係につながるのではないかと思います。
ご参考になれば、幸いです。
P.S.
人材活用は、組織を運営していく上で非常に重要なテーマですが、一人で考えるとどうしても煮詰まってしまいがちです。忙しくて、思考を整理する余裕がない方こそ、「壁打ち相手」を置いてみることをおすすめします。
弊社コンサルティングでは、これまで、売上UPの対策だけでなく、忙しい中小ECの社長さんや店長さんの「壁打ち相手」として、それぞれの課題を整理しつつ、業務効率化や業務改善のお手伝いをしてきました。楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー店舗、一人運営の方や夫婦運営の方々、組織の事情に即したオーダーメイドの提案も好評です。
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