売上が下がり続けているときに「絶対にやってはいけないこと」

こんにちは。コマースデザイン代表の坂本です。

今回のテーマは、「売上が下がり続けているときに絶対にやってはいけないこと」という、ちょっと怖いテーマです。ここで想定しているのは、一時的な売上低下ではなく、「商品の需要がなくなってきた」とか「ライバルが増えて勝ち目がなくなってきた」など、「構造的に今後の売上が下がり続けていくこと」がわかった状態です。

打開策を模索しないといけないわけですが、これまでの事業が生産的で安定していた場合、次の打ち手を考えるときにハマってしまう罠があるんです。では、一体どういった心構えをもって新規事業を開拓すればいいのか?を今回お伝えします。

今は売上の調子が良い方も、他人事と捉えず、いざという時に備えるために対処方法を知っておきましょう。

新規事業や新サービス開発時に大切な心得

売れる経験をしたからこそ、陥りやすい罠とは?

まず、構造的に売上が上がる見込みがない状態になった時、絶対にとってはいけないスタンスをお伝えします。「商品が市場での需要がなくなってきた」「ライバルが増えて逆転する見込みがない」など、店舗によって状況に差はあれど、再現性が高い話だと思います。

そもそも、売上が下がってしまったお店には、「これまでは売れていた」という事実があります。
「◯◯なら安定して商売ができた」「効率的に販売できていた」という状況を一度は経験したのに、状況が悪化し、どんどん売れなくなってきてしまっている…。辛いですし、焦りますよね。

ここで、新たな商品や事業を開拓しようとするのですが、「これまでやっていた事業が効率的だったから、新しい事業も同じぐらい効率的にしたい」という気持ちが邪魔をして、「効率的でないことはやらない」という選択をしてしまうんです。「うまくいくかどうか分からないことはやらない」ということも、よく耳にします。

スタンスとして覚えておいて頂きたいことは、今までの事業で使えていた判断基準(例えば収益性や効率性など)を、新規事業や新商品のチャレンジに適用しようとするな、ということです。

安定的に売上があった商売が寿命を迎えて、次の新しい事業を開拓しなければいけない。そんな時、新たな手探りに対して、「それは効率が悪い」「それは売れない」「生産性が低い」「うまくいくのか」なんてことを言い出してしまうと、絶対にうまくいきません。泥臭く、新しい努力、新しいチャレンジ、新しいジタバタ、新しい手探りを続けることが大切です。

これこそが、売れる商売を経験したからこそ、陥ってしまう罠なんです。

既存事業と新規事業では、考え方や判断基準が違う

では、こうした罠に陥らないためにどうしたら良いのか?

そもそも事業の立ち上げは、うまくいかないことや効率が悪いことは当たり前です。誰しもが「何とかうまくいく角度を見つけて、事業を立ち上げたい」と思いながら手探りをしているわけです。

ところが一度、「これがうまくいったぞ!」という経験をすると、人は泥水をすすることに耐えられなくなってしまいます。お金持ちのお坊ちゃんが、苦労して努力することを嫌がる心理を想像してもらうと、わかりやすいかもしれません。

とは言っても、「それは効率が悪いよ」とダメ出しを続け、「今の事業なかなか盛り返さないなぁ」「売上戻るといいのになぁ…」なんて思っていても、商売の寿命が尽きることをただ待つだけになってしまいます。

時計の針が元に戻ることは、決してありません。道を切り拓くためには、新しいことやらないといけない。新しいことやるためには手探りをしないといけない。まずは過去の成功体験を捨て、この覚悟を持つことです。

「手探りをする」ということは、空振りがたくさんあるカッコ悪い努力でもあります。一見すると効率の悪い努力にも感じますが、今の事業の感覚でジャッジをしてしまうと、努力ができなくなってしまいます。

だからこそ、既存事業と新規事業は、別の物差しで判断する必要があります。既存事業は効率的に行えていても、新規事業はそもそも「何が当たるかも何をしたら良いかも全然分からない」ことが当たり前です。

多少空振りをしたとしても、まずは精一杯努力と手探りを続け、そこから良いことをいくつか見つけて、後から徐々に効率化していく。このようなスタンスに立たない限り、老朽化した事業を延命しながら、新規事業を開拓することは実現できません。

新規事業立ち上げのポイントは?成功の秘訣と失敗の要因

倒産したコダック、起死回生した富士フィルム

新規事業の開拓に成功&失敗した事例では、コダックと富士フィルムの比較が有名な話かと思います。
どちらもフィルムの会社で、コダックは潰れてしまいましたが、富士フィルムは今も事業が続いています。

富士フィルムの商品と言えば、化粧品やサプリメントを思い浮かべる方が多いでしょう。こうした商品の開発に至った富士フィルムには、「ヤバいぞ!スマホにデジカメも出てきた。フィルムの時代はもう終わる。」という気持ちがあったはずです。

その時にもし既存事業のフィルムと同じくらいの効率の良い商売を探そうとしていたら、絶対に失敗していたでしょう。
「化粧品のアイディアを出した人は、最初何を言われたんだろう」と思うと感慨深いですね。「え、どうして化粧品!?」なんて言われながら、「わからないんだから、まずはやれることを何でもやろう!」というスタンスで進めていったのだと思います。

有名な会社だからこそ、「富士フィルムが化粧品を販売してコケた」「終わってるな」なんて言われることを恐れる気持ちもきっとあったはずです。それでも、色々な会社に教えを請い、カッコ悪い努力や、効率の悪い努力を続けることで、富士フィルムは新規事業の開拓に成功することができました。

一方のコダックは、特段新しいことをせず、結果として規定路線に頼り潰れてしまった。このようにして、明暗が分かれたわけです。

リスクを恐れる大企業、挑戦しやすい中小企業

とある有名なビジネス雑誌の取材を受けた際に、こんな話になりました。

「新規事業の卵を片っ端から潰してしまうケースは、大企業に多い」という話です。
大企業の社長はサラリーマン社長で任期があり、まわりの目を気にする傾向があります。なぜなら、まわりからの評判が良く出世をして社長になったからです。
まわりの評判を気にかけながら、既存事業と異なる効率の悪いチャレンジを行うと失敗するリスクがあるし、自分の評判が下がる可能性もあります。こうしたリスクが高いことは、「失敗したくない」という気持ちが強いほど、構造的に手を出しにくくなってしまっています。「だから、日本の大企業は新規事業開発がなかなか進まないんじゃないか」と、その記者の方はおっしゃっていました。

また、「ECの会社はいいですよね」ともおっしゃっていました。中小企業ほど小回りが利き、守るものも少ないからという理由です(もちろん大企業よりも少ないなりに、中小企業にだって守るものはありますけどね)。
「守るものが少なく意思決定も早いから、中小企業は変化に耐えていけるけれど、大企業はなかなか厳しい」…と。そんな訳で、大企業と比較すると、我々中小企業にはまだかなりチャンスがあるようですよ。

こじらせると他責思考になる。模索や空回りの覚悟を持つこと

こうなると重要になってくるのは、やはり心構えですね。
「前にやっていた商売に近いことをしたいなぁ」とか「苦労したくないなぁ」なんて軽い考えではなく、ボンボンみたいなことは言わず、「がんばって〇〇しよう!」という強い気持ちを持ちましょう。

ちなみに、このボンボン気質をこじらせると、常に深刻な状況に陥る可能性があります。いわゆる落ち目です。
売上が下がり続けている現実を目の当たりにすると、辛い現実を受け入れることができず、目をそらすようになり、徐々に他人のせいにしてしまう傾向が出てきます

「誰か何か良いアイディアを持ってこいよ」「まだ来ないのか。このままじゃマズいぞ、わかっているのか」と周囲に言いながらも、自分は何もしない。手探りをしない、泥水をすすらない、という状態になります。
「ヤバいぞ、分かっているのか!」と警鐘を鳴らしている人こそ、本当に分かっているのかという話なんですけどね。そうやって大声で叫んでいる時間があるならば、自分自身で調べたり、人に話を聞きに行ったり、問題の解決に向けて実際に行動すべきだと思います。
しかし、こうした危機的な状況に陥ると、人は他人に責任を転嫁する心理になりやすいのかもしれません。

「人のふり見て我がふり直せ」という言葉の通り、このような状況や気持ちになってしまわないよう、中小企業らしい手探りや空回りをする覚悟を大事にしていきましょう。

まとめ

売上が構造的に下がり続けている時、大事なのは「今までやってきた商売はもうすぐ終わる」という覚悟を持つことです。

もちろん効率の良い商売のやり方を捨てる必要はありませんが、「永遠には続かないものだ」と諦め、効率が悪くてもたくさん失敗をしても、「新事業や新サービスは、手探りをしないといけないもの」という事実を受け入れ、腹をくくることが重要です。

「これから一人暮らしを始める子ども」を送り出す親になったつもりで、想像してみてください。新しい環境に飛び込む子どもに対して、「色々なことがあるかもしれないけど、がんばってね」という気持ちを抱く方が多いかと思います。
もしも売上が下がり続け、今の商売を維持することは難しくなった時には、このような心構えをみなさんぜひ大切にしてください。私も改めて気をつけたいと思います。

P.S.

弊社は、EC事業専門のコンサルティング会社です。今回の記事でご紹介したような新事業やサービスの開発のご支援はもちろん、「売上が伸び悩んでいる」「色々やっているが、売上が伸びない…」そんなご相談にも対応しています。事業全体のバランスを見て、お店の方向性や戦略を一緒に考え、実行を並走させていただきます。ご興味のある方は、お気軽にご相談ください。

カテゴリー: EC業務の効率化

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