こんにちは。コマースデザイン代表の坂本です。
新しい仲間が増える時は、受け入れる側も緊張しますよね。なかなか思うように育ってくれなかったり、伸び悩んだり、「人を育てるのは難しい!」と悩んでいる方も多いかもしれません。
人材育成に正解はないもの。そんな中でも、「業務を洗い出して一覧化する」「動画などで分かりやすいマニュアルを作る」など、新入社員が仕事をしやすくなる工夫はできます。
新人育成において最も重要なことは、仕事だけでなく人間関係もうまくいくように、新人をチームに受け入れて会社に早く馴染めるようサポートし、新人が育ちやすい環境を整えること。そこで今回は、当社における「新人コンサルタントの育成プロセス」を例に、「新人が育つ環境づくり」のポイントを紹介します。
- 目次 -
はじめに
リーダーではなく、メンバーがメンバーを育てよう
ポイントは、「リーダーが自らメンバーを育成する」というより、「メンバーがメンバーを育成する環境を作ること」です。
皆さん、(一人運営の店でなければ)3~5人ほどのチームで業務を行っていることが多いかと思います。こういったECチームで、社長さんや店長さんが自ら教えるだけだと、メンバーの中に新人が溶け込んでいかないんですね。
どうせなら、メンバーが育てる方がいろんな効果があります。チーム内でわからないことを聞いたり、相談したりしやすくなったり。新人の成長を自然と促進することができますし、後で紹介しますが、新人を受け入れると、いろんなおもしろい効果が組織に対して起こります。
今回の記事では、まず、新人の受け入れで起こるポジティブな心理効果を紹介します。次に、当社ではどのように新人の受け入れと育成をしているかをご紹介します。
チームのメンバーで新人を育てる「3つのメリット」
まずはポジティブな心理効果について。
チームのメンバーが新人を育てることは、実は新人だけでなく、育成側にも大きなメリットがあります。
①子犬効果:「育てられる側」が「育てる側」になることで成長する
1つ目は、「子犬効果」。
これは一般的な言葉ではなく、私がオリジナルで考案した、とある心理効果を定義した言葉です。企業が「新人・特に新卒の子を迎えると、こういう効果があるよね」と言われてるものです。
例えば、子どもが子犬を拾ってきたとします。
これまで世話される側だった子どもが子犬の世話をすることで、自己イメージが「世話を受ける側」から「世話をする側」に変わります。
同様の原則が、職場にも当てはまります。
これまで上司や先輩に教わる立場だった人が、自分が教える立場になることで「ちゃんとしなければならない」「先輩としてきちんとしなきゃ」という自己を高めようとする効果が起こります。新人が入ることで、チームメンバーの成長も促進されるというわけです。
このように、新たな役割や責任を持つことで、人間はその状況に適応しようとするため、新人を育成することは、育成側にもポジティブな影響を与えてくれます。
②来客効果:新人を迎える環境を整備したくなる
2つ目は、「来客効果」。
来客がある時、部屋が散らかっていると「恥ずかしくないように片づけなきゃ」という気持ちになり、部屋を片付ける人は多いでしょう。同じように、新人をチームに迎える前に、受け入れる側は「業務の手順やマニュアルを整理しよう」とするものです。
新人に興味がない人の場合はこの効果は薄いのですが、新人をサポートしようという気持ちがある人なら、教育環境が整備されていない状態を問題と見なします。「新人さんが入ってくる前に、ちゃんとしなきゃ!こことここを整えないとまずいですよね」という声があがってきたりします。
③代弁効果:自分の言葉で伝えることで、理念やビジョンの理解が深まる
3つ目は「代弁効果」。組織やリーダーの代弁です。
自分たちの仕事の価値について、社長さんや店長さんはメンバーに「うちの店は、こんなお客様にこういう価値を届けています」というように、お店の理念を伝えているとします。それを新人に伝える際、メンバーは社長や店長の代弁者となります。
ただ話を聞いているだけでは「そうなんだ」と流しがちですが、自分が教える立場になることで、社長や店長が言っていたことと同じことを言うわけです。自分の言葉として自分の口から発するので、シンクロしてくるんですね。
理念というものは、ただ聞くだけではあまり腹落ちはせず、お客様からの感謝の言葉や、がんばって嬉しかったことなどから、仕事の価値の理解が深まることで腹落ちします。
理念やビジョンを、自分の経験と紐づけて、自分の言葉で表現できるようになると、リーダーや管理職への入り口に立てたと言えます。
以上が、新人さんを迎えることで組織に起こる心理効果です。
新人は、なにも組織に影響を与えようとしていないのですが、「受け入れ側が勝手に影響される」という面白い効果があります。また、「そうした先輩を見て新人も良い影響を受ける」という相乗効果も期待できます。ポジティブな影響なので、社内の環境向上に活かさない手はないでしょう。
コマースデザインの「新人を育てる環境づくり」を紹介
ここからは、当社がどのように新人を受け入れ、育成する体制を作っているのかをご紹介します。
入社前面接:「価値観が合うか=育つかどうか」を確認
実は、採用前から育成の準備は始まっています。
当社では公式サイトや求人サイトを通して、事業内容や運営方針、求める人材像などを詳しく示し、「共感したら応募してほしい」というメッセージを伝えています。それから面接プロセスに進み、能力やスキルに関する適正も大事ですが、最終面接などでは「価値観(カルチャー)があうか」を特に意識して見ています。そして、価値観があう応募者の中から、入社後にコンサルタントとして成長する可能性がある人を見極めます。
入社が決まると、私と役員の川村と3人でごはんに行き、その後に新人の受け入れが始まります。
オンボーディング:「教育カリキュラム」が自然と整備される仕組み
当社では、研修の中に「オンボーディング」が含まれており、オンボーディングを大切にしています。
オンボーディングとは「着地」を意味する言葉で、新しいメンバーが会社に早くなじめるよう、メンタル面のケアを含んだサポートをする取り組みです。
新人研修では、動画や音声・テキストなどで様々な教材を用意しており、会社の沿革・事業内容・業務内容などを学ぶほか、コンサルタント職としての専門スキルを習得します。10年以上に渡って内容をブラッシュアップしてきたので、教育カリキュラムがかなり整備されており、短時間で効果的な学習が可能となっています。
ただ、新人を育てる環境づくりの秘訣は、「整ったカリキュラムを用意すること」ではなく、「自然と整ったカリキュラムができていったこと」にあります。
メンターは、新人との会話を通して、新人が理解できなかった点や、カリキュラムの改善点を記録しています。「ここが分からなかった」「こういう説明をしたら新人さんに理解してもらえた」など、発見したことや悩んだこと、解決できなかったことなどを、メンターの所見とともに、ドキュメントに蓄積しています。これらをカリキュラムに反映させることで、結果的に「整理された教育カリキュラム」になっているわけです。
もし、まだカリキュラムを全く用意していない場合は、まず「教えたいこと」を箇条書きにしてください。
その後は実践しながらメンター同士で情報共有し、カリキュラムを充実させていけばいいでしょう。無計画な行き当たりばったりのやり方では、新人の成長環境を整備することはできません。
最初に教えることを定義し、フィードバックを重ねることで、自然とカリキュラムは改善されていきます。
メンター制度:経験の共有で、メンターもチーム全体も育つ
オンボーディングから仕事を始めて約2ヶ月間、新人には「メンター」と呼ばれるお世話係がつきます。
メンターは挙手制で募り、その中から1名を任命します。当社は普段ほぼリモートワークですが、新人は入社後1〜2ヶ月間は渋谷のオフィスに出社し、メンターと一緒に過ごすことになります。メンターは仕事のサポートはもちろん、新人と一緒にランチに行って雑談したり、相談を受けたりします。
また、メンターは、週1回の定例会議で、他のコンサルタントに対して、新人の育成状況やコミュニケーション内容を共有します。
他のコンサルタントから、メンターとしての悩みや課題のアドバイスを受けたり、他のメンバーのメンター体験談を聞いたりしながら、新人育成上のヒントを見つけることができます。
すべての問題が解決できるわけではありませんが、思いを共有し、話を聞いてもらうことで、一定のガス抜き効果はあるようです。また、メンターは管理職ではないですが、管理職の気持ちも理解できるようになります。さらに、現在メンターではない人も、ゆくゆくはメンターになることを意識して聞くようになるので、この定例会議は自然とメンター育成の場にもなっています。
まとめ
新人の育成は、チームや会社の成長にとって不可欠です。
これは人類が古代、群れで生活し、マンモスを狩っていた頃から続く永遠のテーマでしょう。今回ご紹介した子犬効果・来客効果・代弁効果も、社会で生きる人間の本能的な反応だと思います。
もし「新人育成を任せられるメンバーがいない…」という場合は、まず社長さんや店長さんは自分自身がメンターとなってください。そして、将来的にチームで育成できる体制となるよう、メンバーを育成係として育てましょう。
次はその人に新人育成を任せ、教育カリキュラムを改善し続けます。人間には「成長のDNA」とも言うべきものが備わっているので、本能を刺激する条件がそろえば、自然と人が育つ環境になっていきます。
ぜひ、初めの一歩を踏み出すことをオススメします。
…とはいえ、その最初の一歩に迷ったり、忙しくて教育にまで手が回らなかったりすることもありますよね。
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カテゴリー: EC事業の組織論