更新日:2023/9/4
この記事では、これからECサイトを立ち上げようとされている方へ向けて、そもそもECサイトとはどういったものかを詳しく解説します。
ECサイトのビジネスモデルをはじめ、ECサイトの基本機能・立ち上げ方・代表的な業務一覧・成功のコツまでをわかりやすく紹介しているので、EC初心者の方でも概要を掴んでいただけるはずです。ぜひ参考にしてみてください。
ECサイトとは
ECサイトとは、自社の商品やサービスを販売するWebサイトのことです。ECとは「E-Commerce(イー・コマース/電子商取引)」の略称で、インターネット上で商品やサービスを買ったり、売ったりすることを意味します。
ECサイトとよく似た言葉に「ネットショップ」「オンラインショップ」「通販サイト」などがありますが、一般的にはいずれも「ネット通販サイト」を指して使われることが多いです。
ただし、以下のような意図で区別して使われる場合もあります。
呼び方 | 含まれる意図 |
---|---|
ECサイト | ・BtoBやオークションなども含む、Web上での取引サイト全般を指した呼び方 ・企業側が、コーポレートサイトやメディアサイトと区別するときの呼び方 |
ネットショップ オンラインショップ 通販サイト | ・いわゆるネット通販サイトを指した呼び方 ・リアルの実店舗と区別するときの呼び方 |
日本におけるECサイトのビジネス活用状況
日本のEC業界は拡大を続けており、2022年には市場規模は消費者向け(BtoC)で22.7兆円、企業間(BtoB)では420兆円(※)に達しています。(※出典:2023年経済産業省「令和4年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査))
その背景にあるのが圧倒的な「利便性の高さ」です。たとえば小売であれば、地理的な制限を受けずに、世界中の顧客へ商品やサービスを届けることができるようになります。また法人向けのサービス販売においても、直接営業をせずにコンバージョン(契約)や問い合わせを獲得できるなどの効果が期待できます。
事業者の主なメリット | 詳細 |
---|---|
地域制限のない販売 | 国内外に商品を届けられるので、販路が大きく広がる |
データ収集と分析 | 顧客の購買傾向をデータで集められるので、商品や販促の見直しがしやすい |
店舗面積の制限がない | 実店舗と違って陳列スペースに制限がないので、多くの商品を扱える |
24時間、年中無休 | 顧客は営業時間に縛られず、いつでも好きなときに商品を購入できる |
このように、ECサイトは、より広く顧客を集めてビジネスを成長させたい事業者にとって重要な販路になっているのです。
以下の記事でも詳しく説明していますので、あわせてご覧ください。
ECサイトを使った5つのビジネスモデル
では、ECサイトにはどのようなビジネスモデルがあるのでしょうか。以下、代表的なものを5つ紹介します。
BtoC(一般消費者向け)
まず挙げられるのが、BtoC(Business to Consumer)、つまり一般消費者向けのECサイトです。消費者が「ECサイト」と聞いてまずイメージするモデルというとわかりやすいかと思います。
このモデルでは、例えば「楽天市場」や「Amazon」のようなECモールに出店・出品したり、自分でECサイトを構築したりして、消費者に商品やサービスを販売をします。消費者は、地域や営業時間の制限を気にすることなく、いつでも商品やサービスを購入できるのが特徴です。
ちなみに、メーカーやブランドが小売や卸を通さず、直接消費者に商品を販売するモデルの場合「DtoC(Direct to Consumer)」と呼ばれることもあります。
BtoB(法人向け)
法人向けにサービスやプロダクトを販売するのが、BtoB(Business to Business)のECサイトです。
例えば、会社がオフィス用品を購入したり、工場が部品を仕入れたりするほか、勤怠ツールや経費管理ツールなど無形商材の販売でも利用されています。
電話やFAXといったアナログな発注方法とは異なり、「営業時間に縛られずに広く受注できる」「顧客のデータ管理が効率化される」といったメリットがあるため、多くの業界で取り入れられています。
CtoC(消費者間の取引き)
CtoC(Consumer to Consumer)は、消費者同士が商品やサービスを売買するビジネスモデルです。
「メルカリ」のようなフリマアプリや、「ヤフオク!」などのオークションサイトが代表的です。近年は「ココナラ」や「ランサーズ スキルパッケージ」などスキルを販売するモデルも登場し、より多様なマーケットへと成長してきています。他のモデルとは異なり、専門的な知識やビジネス背景を必要とせず、参加しやすいのが特徴です。
O2O(オンラインからオフラインの誘導)
O2O(Online to Offline)は、オンラインのサービスを経て、オフライン(=実店舗)での購入につなげるビジネスモデルです。
本来はマーケティングの手法として使われる言葉ですが、「ECサイト上でオフライン限定クーポンを販売し、実際に実店舗に来店してもらう」といったECサイトを絡めたモデルも確立されています。
越境EC
越境ECとは、日本国外の顧客に商品やサービスを販売・購入するECのことです。
例えば、中国の「天猫国際(Tmall Global)」や「京東商城(JD.com)」などは日本の企業にも人気があります。
世界に向けて商売を行えるので、新たなビジネスチャンスを求める事業者に活用されます。ただし、海外向けのビジネスとなるため、言語や税制対応、物流など多くの課題が伴うリスクもある点は押さえておきましょう。
ECサイトに備わっている基本機能
ECサイトにはどのような機能が備わっているのでしょうか。以下、一般的なECサイトに備わっている主な10機能をまとめて簡単に紹介します。
ページデザイン機能
サイトの外観やデザインを編集する機能です。例えば、サイトのレイアウト変更や、色・文字の調整、画像の管理などが行えます。コンセプトや商品のイメージにあわせたサイトを作成できるため、訪問者の印象を良くすることが可能です。
商品・在庫管理機能
商品・在庫管理機能とは、ECサイトで扱う商品の情報や在庫数を管理する機能です。商品の追加や情報の編集、在庫数の確認や調整を行います。ECサイトでは、この機能によって、最新の商品情報を提供するほか、在庫管理を行っています。
カート・決済機能
カート・決裁とは、お客さんが商品を購入する機能のことです。購入の手続きから、支払いの手続きまでを担う、ECサイトには欠かせないメインの機能です。
ECサイトの決裁方法にはクレジットカード決裁やコンビニ支払い、キャリア払い、代引きなどいろいろなものがあります。お客さんが希望する方法を用意しておくことで、決済前の途中離脱(=カゴ落ち)の防止につながります。費用はかかりますが、ニーズにあわせていろいろな決済方法に対応できるようにしておきましょう。
受注管理機能
決済を経て、受けつけた注文の管理と処理を行う機能です。注文の一覧表示や、出荷・支払状況の確認といった取引の進捗確認が行えます。この機能によって、複数の取引きが並走してもモレなく対応ができるようになり、顧客満足度の向上につながります。
顧客管理機能
ECサイトを利用してくれた顧客の情報や、購入履歴などを管理する機能です。名前や年齢、性別、購入商品などを顧客ごとにデータ化し、集計をかけることができます。このデータをもとにすると、例えば、リピーターや高額購入者に絞ったお得意様キャンペーンといったマーケティング施策を企画できます。
メール配信機能
メール配信機能は、顧客にメールを送るための機能です。受注のやりとりのほか、新商品のお知らせやセール情報といった販促情報も配信できます。定期的な情報提供により、顧客のリピート購入を促進し、ブランドのファンを増やすことが期待できます。例えば、BtoCのECサイトでは、顧客の誕生月に「お誕生日おめでとうクーポン」を配信して来店を促すといった販促がよく見られます。
問い合わせフォーム
問い合わせフォームは、顧客からの質問や要望を受けつける機能です。電話だけでなく、フォームも公開することによって、お客さんの意見や質問を広く受け取ることができます。問い合わせ対応を通じて顧客の信頼を得られると、商品の購入率や客単価が上がるなどのメリットが期待できます。
クーポン・キャンペーン機能
割引やセールキャンペーンを設定・管理する機能です。特定の期間や商品に対して割引を適用し、売上促進や在庫の回転を加速させることができます。例えば、夏の終わりに「夏物最終セール!全品20%オフ!」といったキャンペーンを展開して、効率的な在庫処分を行うなどが考えられます。
データ分析機能
データ分析機能は、サイトの利用状況や購入データを分析する機能です。ECサイトでは、実店舗と違って、簡単にユーザーの行動や購入傾向をデータ化できます。このデータを元にECサイト全体のマーケティング方針を見直すことで、効果的な売上対策を考えられるのです。具体的には「週末の夜に最もアクセスが多い」といった情報をヒントに、そのタイミングでのゲリラセールやメールマガジンの配信を企画するなどが考えられます。
セキュリティ機能
サイトや顧客情報の保護を行う基本機能です。外部からの攻撃や不正アクセスを防ぎ、サイトの改ざんや、顧客情報の漏洩などを防ぎます。例えば、不正アクセスを検知した際に、自動でシステムをロックし、管理者にアラートを発する設定などが定番です。
ECサイトの主な立ち上げかた
ご紹介してきたような機能を持ったECサイトを立ち上げるには、大きく以下2つの方法があります。それぞれ詳しく説明します。
- ECモールに出店する
- 自社ECサイトを立ち上げる
ECモールに出店する
※画像出典:Amazon.co.jp
まず1つ目が、ECモールへの出店です。
BtoCなら「楽天市場」や「Amazon」、CtoCなら「メルカリ」など、あらかじめECサイト運用に必要な機能を備えたプラットフォームに出店もしくは出品し、モールの看板を借りつつECを展開します。(基本的にBtoCが多いですが、BtoBの用途としても使われます)
運営に必要な基本システムもすべてモール側が提供してくれるので、初めての人でもスムーズにECサイトを持つことができます。
ECモールに出店するメリットは、モールの集客力が利用できることです。特に楽天やAmazonのような大手ECモールは高い集客力を持っているので、出店したばかりの新規店でもお客さんに商品を見てもらえます。
ただ、その一方で、以下のようなリスクや制約があるので注意しましょう。
- 出店前に審査が必要になる場合が多い
- 手数料やポイント原資の負担などで利益を削られてしまう
- モールのルール内でしか販促ができず、独自性が出しづらい
自社ECサイトを立ち上げる
2つ目が自社のECサイトを立ち上げ、つまり自分でECサイトを構築して運用をすることです。
自社ECサイトであれば、BtoC・BtoBなどビジネスモデルや商品やサービスの内容にあわせて、自由にサイトのデザインや機能を設計できます。コンセプトにそってオリジナリティのあるECサイトを構築したいときに利用されます。
ただし、自社ECサイトには、モールのようなEC運営システムの用意や集客の仕組みもありません。システム導入からサイト運用、マーケティング、物流など、あらゆる業務を自分たちでこなす必要があります。その点はあらかじめ認識しておきましょう。
なお、出店方法については以下の記事でより詳しく説明しています。あわせてご覧ください。
ECサイト運営 代表的な8つの業務
ここからは、よくあるECサイト業務を8つほど、要点をかいつまんで紹介します。実際にECサイトを運用すると、どんなことをしていくことになるのか、イメージをつかむ参考にしてみてください。
商品の調達・在庫管理
まず必要なのが「商品の調達と在庫管理」です。当たり前ですが、ECサイトは商品やサービスを販売するところ。そもそも売るものがなければECサイトを運用することはできません。自身のビジネスにあわせて販売する商品を用意しておきましょう。
特にモノなど有形商材を販売するときは、"在庫を切らさず、余らせず"の適量をいかに維持できるかが大切になります。継続的に商品を販売できるよう、商品の仕入れや製造を行い、在庫を確保しておきましょう。
商品の紹介
商品をただECサイト上で公開するだけでは、なかなかお客さんに買ってもらえません。売上を伸ばすためには、商品の魅力をお客さんに伝える「商品の紹介」が必要です。
例えば、洋服の商品ページであれば、デザインや素材、着心地などの特徴を、文章や画像で詳しく紹介します。質の高い商品紹介を行うことで、お客さんの購入率が上がり、商品が売れるようになります。
サイト制作
サイト制作とは、例えばトップページやカテゴリページ、会社紹介ページなど、いわゆる「店構え」になる部分を制作し、お客さんが買い物をしやすいECサイトを作りあげることです。
サイト制作の品質によって、お客さんがサイトを訪れたときの第一印象が決まります。魅力的かつお目当ての商品にアクセスしやすいページにすることで、お客さんの離脱防止やサイト内の回遊につながり、商品を買ってもらいやすくなります。
CS対応
CS(カスタマーサポート)とは、お客さんからの問い合わせやご意見に対応をする業務のこと。ECサイトを運営していると、商品の使い方や配送、支払いの方法、返品の問い合わせなどにいろいろな質問が届きます。対応をしなければお店への信頼が下がり、売上を落としてしまいます。
お客さんとの信頼関係を築き上げるために極めて重要なので、迅速かつ丁寧に対応を行いましょう。
受注管理・出荷
ECサイトでは、注文が届いたあともいろいろな業務が発生します。例えば受注管理や出荷です。
モレがないようしっかり進捗管理をしつつ、お客さんと適切にコミュニケーションを取って、商品の出荷を行います。
実店舗の販売とは異なり、ECサイトではお客さんの希望する日時や配送方法で商品をお届けなければなりません。そのため、トラブルにならないよう、注文情報やお届け先におかしな点がないか、配送方法にリクエストがないかなど、丁寧に不備の確認しながら進める必要があります。適切な受注管理を行うことで、誤送や遅配といったトラブルを予防し、顧客の満足度を維持・向上させることができるでしょう。
顧客データの分析とマーケティング戦略の検討
売上を伸ばすためには、ECサイト利用者のデータ分析で得た情報をもとにマーケティング戦略を考えねばなりません。
ただ販売を繰り返すのでなく、販売の履歴データを分析し、「どの商品が売れているのか」「どの広告が有効か」「どんな検索キーワードで来店してくれたのか」といった情報をしっかり把握するようにしましょう。
これにより、マーケティング施策の精度が高まり、より高い売上を目指せるようになります。
マーケティング施策の実行
データ分析をもとにマーケティングの方向性が見えてきたら、実際に施策を実行に移します。
具体的な施策としては、例えば、商品ページのSEO(検索対策)やWeb広告の出稿による集客のほか、SNSやメールマガジンで既存顧客との関係性を深めるといったことも考えられます。
戦略的なマーケティングを行うことで、ECサイトにより多くのお客さんを集められるようになり、売上アップにつなげることが可能です。
経理・法務
忘れがちですが、経理や法務もECサイト運営の大事な業務の1つです。
例えば経理であれば、売上の収入や商品の仕入れに関する出費、給与や広告費などの支出、不払いなど未回収金の状況を正確に記録し、帳簿を整理します。
また、商品の販売や取引において法律違反がないかなどをチェックする法務業務も重要です。ECではうっかり「景品表示法」や「薬機法」などに違反してしまい、トラブルに発展するケースも少なくありません。
健全な営業ができるよう、商品販売だけでなく、経理や法務にも目線を向けるようにしましょう。
厳選!後発でもECサイトを成功させる3つのコツ
すでにEC業界は成熟期に入っています。そのため、これからECサイトを立ち上げるとなると、多くの場合、後発の立場として参入することになるはずです。
そこでこの記事の終わりとして、後発のECサイトが成功するための「3つのポイント」を紹介します。
ほかのECサイトとの差別化をはかる
後発店舗がECサイトを成功させるための第一歩は、ほかのECサイトとの差別化をはかることです。
例えば、以下のようなアプローチが考えられます。
- 他店にはない特別な商品を取りそろえる
- 他店とは違う、自社ならではのとがった切り口で商品を紹介する
- 他店がやっていないサービスを提供し、付加価値をつける
「ほかにもよく似た商品を扱うサイトがたくさんあるなかで、自分たちのサイトで購入するメリットは何か」。これをお客さんに明確に伝えることで、後発でも選んでもらえる可能性が高まります。
まずは自社と他社を比べてみて、どんなユニークな強みがあるのかを明確に整理してみましょう。そして、その強みを最大限に活用したマーケティング戦略を考えてみてください。
業務を徹底的に効率化する
次に大事なのが、徹底的な業務の効率化です。
この記事でも紹介してきたように、ECサイトの運営現場では、本当にたくさんの業務に対応する必要があります。そのため先行する多くのECサイトでも、各業務をスムーズに進めることができておらず、「やるべき販促」や「必要な対策」まで手が回っていないのが実状です。
よって、徹底的に業務を効率化し、ECサイトが「やるべき販促」や「必要な対策」までしっかり対応ができれば後発店舗であっても逆転できるチャンスがあります。つまり、当たり前のことを当たり前にできれば、それだけで勝ち目があるということです。
たとえば、在庫管理や受注処理を自動化するツールを導入したり、商品説明の執筆にChatGPTのようなAIを活用したりなど、効率化の機会は多くあります。業務フローの中で時間がかかる部分を早期に特定し、改善のアプローチを考えてみると良いでしょう。
先人に学ぶ
3つ目が「先人に学ぶ」ことです。
記事の前半でもお伝えした通り、EC市場は成長を続けており、日本国内だけでも星の数ほどのECサイトが運営されています。検索をすれば、成功をおさめているもの・残念ながらそうではないもの、どちらの事例も数多く見ることができますし、成功のノウハウもセミナーや書籍で簡単に学ぶことができます。
先人の成功や失敗を学んだ上で、本格的に参入できるのは後発の特権です。よく研究し、勝ち筋を見極めてから参入することで、成功確率を高めやすくなるかもしれません。
まとめ
この記事は、ECサイトの概要から基本の業務、そして成功のコツまでを幅広く紹介してきました。
ECサイトは成熟した業界ですが、後発店舗にもまだまだ多くの可能性が残されています。記事でお伝えしてきた基礎知識が、ECサイト成功の参考になれば幸いです。
なお、ネットショップは開設してからが本番。お店の売上アップや業務効率化のためには、店舗運営やマーケティングの知識や情報が不可欠です。
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