映画「ベイマックス」に学ぶ、「客層変更」による宣伝戦略

今日は映画「ベイマックス」に学ぶ、「客層変更」による宣伝戦略のお話です。

(遅ればせながら、「今年も宜しくお願いします」の鏡餅ベイマックス…)

ひっそり売れている「ベイマックス」

「アナ雪」ブームが冷めやらぬ中、ひっそりとディズニーの新作「ベイマックス」が劇場興収70億を突破したそうです。(2015年1月29日時点)

「売上70億」を突破したベイマックスのすごさ

この70億という数字、実は凄いんです。「アナ雪」がいた昨年の年間興行収入ランキングでも、3位以内は確実。爆発的ヒットがなかった2012年で見れば、年間1位が狙えるほどです。

※2012年の最高は、「ブレイブハーツ 海猿」で72億です。
「アナ雪」は約260億。いかにオバケ作品だったか…。

なぜ「ベイマックス」は、ここまで売れたのか?その秘密の1つが、ディズニーの大胆な宣伝戦略です。

日米における宣伝戦略の違い

まずは、このgoogle画像検索の違いをご覧ください。

まだ映画を観ていない方は、「え?」と思われるかもしれません。

そう、まるでアプローチが違うんです。

アメリカ=戦うヒーロー。日本=心を守るロボット

「ベイマックス」の元ネタは、アメコミの「ビッグヒーロー6」。「アイアンマン」「スパイダーマン」のMARVELのヒーローアクションなんです。アメリカでは、ヒーローアクションをストレートに打ち出しています。

一方、日本では「ベイマックス」のキャラクターにフォーカスしています。「ケアロボット」とか「心を守る」というアプローチで、戦うヒーロー的な要素は全く見当たりません。

映画の宣伝方法の違いがもたらしたもの

宣伝方法を変えた結果、日本では客層がグッと広がりました。アメコミに馴染みのない女性客やファミリー層を獲得したのです。

比較できないので正誤はわかりませんが、個人的にはアメコミ路線の告知だったら、70億まで伸びた確率は低かったと思ってます。

根拠は、確率上、ドラマの方が大ヒットを狙いやすい傾向にあるからです。過去5年の「日本国内 興収ベスト3」15本を紐解くと、アクション物はわずかに3本。残りの12本のほとんどは「ドラマ」なのです。

少なきを捨て、多きを取る

ディズニーは「ベイマックス」を日本人に売るにあたり、「ヒーローアクション」を直接的に見たいと思うお客さんと「キャラ性のあるドラマ」が見たいと思うお客さんと、どちらに売り込むべきかを天秤にかけました。

勇気を持って客層を絞り込む。リスクなき決断はない

そして、「両方を都合よく手に入れることはできない」と考えて、前者を丸々カット。より多くの反応が期待できる後者への告知を選び、その結果、大きく成功しました。

こうしたリスクある決断には勇気が必要です。

しかし、作品の質や決断の根拠に自信があれば、人手やお金といったリソース(原資)を集中させられる分、大変効率的で有効な考え方だと言えます。

※余談ですが、映画サイトやブログのレビューを見てみると、「ポスターやCMと全然違う!」と怒っている人は少ない傾向にありました。多くの方が、いい意味で裏切られたと感じているようです。これも、「信頼と実績のディズニー品質」のなせるワザかもしれません。

終わりに

この「ベイマックスの宣伝」に学ぶ、取捨選択的な発想。

皆さんが扱う商品で、思い当たるものはありますか?

何かと何かを両立させたいあまり、思い切ったことができていない。でもお客さんと優先度を見極めて、一歩踏み出せば、数字が変わるなんてことも……あるかもしれません。

それではまた!

PS
「従来型と違った新しいお客さんを設定して、売上を拡大したいな…」という方は、弊社コンサルタントがお役に立てるかもしれません。ご興味のある方は、以下のコンサルティングの案内ページをご覧いただき、ご連絡下さい。

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