中小企業が「尖った商品」を作る3つのコツ

中小企業が「尖った商品」を作る3つのコツ

2016年の年末に「日経MJの商品番付」が発表され、iQOSやVR製品やポケモンGoなどが話題になりました。

ネットショップ業界でも、競争が激しい中、「尖った商品」があり、メディアに取り上げられるようなお店は、普通のお店よりはるかに有利だと思いませんか。

尖った商品がほしい。ただ、iQOSやVR製品やポケモンGoを、中小企業が開発できるかというと・・難しいですね。

では、小さい会社でも開発できて、売上に貢献してくれる「尖った商品」とは、どういったものでしょうか。

そこで今回は、「中小企業でも作りやすい尖った商品と、その考え方」についてご紹介します。まだまだ個人的な仮説ですが、この方向性なら比較的作りやすいのではないかな…と想像しています。

花粉対策マスクに見る「尖った」商品事例

まず、事例を1つご紹介します。これからお話しする考え方を表していて、大変象徴的だと思いますので、最初にご紹介します。

地方メーカー開発のとある「花粉対策マスク」。独自の切り口で、楽天でとても売れているようです。

一般的な花粉対策マスク

一般的には、花粉対策のマスクと言えば、白い地味な不織布でできています。商品の訴求は、立体型や花粉99%ガードなど、いわゆる「機能面」でのアピールが多いですよね。
一般的なマスク

甘すぎる花粉対策マスク

一方、ここで紹介する企画商品も「花粉対策」のマスクなのですが、当然普通のマスクではありません。

以下の写真をご覧ください。甘ーい!

マカロンレースマスク

まず、訴求が違います。甘くて可愛い。マカロンカラー。レース。テンションが上がる。

花粉の話は、どこにいったのでしょうか。

しかしこの商品、楽天においてマスクのランキング1位、レビュー1700件超という人気ぶり。大手でなく、地方のメーカーで開発されたようです。

「尖った商品」にはパターンがある

そこで「このヒットの秘密はなんだろう」と考える中、これからご紹介する「尖った商品のパターン」を考え出しました。

ここからは、その考え方を紹介しつつ、他の事例もご紹介していきます。

1:用途をずらして、転用する

ちょっといじって新商品

まず、【ずらす】という考え方について、紹介します。とある商品について、普通とは違う「新しい使い方を提案」し、「新しい価値を提供」することです。

商品を作る際には、「投資」が必要です。リスクがあります。

でも既存の生産設備や原材料を転用するだけなら、リスクが少なくなります。つまり「既存の商品を少し変える」だけなら、ゼロから込み入った商品を企画するよりもはるかに簡単にできます。

ちょっとの変更であっても、同じような商品であっても、まったく新しい使いかたや価値を提供しているので、元々の競合とは比べられにくくなります。前述のマスクを思いだして下さい。

甘すぎるマスクに見る「ずらし方」

このケースではどのようにして普通とは違う「新しい使いかたを提案」し、「新しい価値を提供」しているのか説明します。

「一般的に花粉対策マスクとは何のためのものか」と言えば、「花粉対策」などですよね。(当たり前ですね)

しかしこの商品の用途は、「可愛く見せること」です。もちろん花粉対策の意味合いもありますが、完全に二の次です。

つまり、花粉対策マスクを、「花粉対策」からずらして、「女性のためのお洒落用」として提案し、「付けていても可愛いマスク」という価値を提供しています。すると、使いかたも価値も全然違うので、「普通の花粉対策マスク」とは比べられにくいですよね。

類似事例:シュレッダーバサミ

似た事例としては、例えばシュレッダーバサミがあります。

シュレッダーバサミとは、こちらの商品です。
シュレッダーハサミ

この商品は、シュレッダー用として開発されたわけではありません。

「ずらす」とは、とある商品について、「新しい使いかたを提案し、新しい価値を提供すること」でしたね。実は、元々新潟県のメーカーが「刻み海苔を作るため」に開発したはさみだったんです。その時点で既に「ずらして転用」していますね。

そこから、「刻み海苔を作るためのはさみ」を、「調理グッズ」からずらして、「シュレッダー」として提案し、「場所も電気もいらないコンパクトなシュレッダー」という価値を提供しています。

たしかに、刻み海苔を作る人よりも、シュレッダーを使う人のほうが多いですからね。「ずらす」ことで、別のニーズを拾うことができたわけですね。

2:客層を絞って、特化する

特定の誰かのための新商品

さて、次の【しぼる】という考え方を紹介します。

これは、「ターゲットにとことん寄り添い、ターゲット以外は手が出ないくらいに突き抜けた商品にする」ことです。

「ターゲット以外は手が出ない」ので、単純に考えると、市場が狭まり売上も下がりそうです。しかし、

  • 市場が狭まる分、競合も減る
  • 明確なターゲットに向けた商品開発ができる分、狭いターゲットにズバッと刺さりやすくなる

という効果があり、その結果、売れやすいように思います。

客層を絞り、あの人以外は「お断り」

「甘すぎるマスク」は、言うまでもなく、尖っています。

私(花粉症、アラサー、男)は買えません。女性で、極端にカワイイ志向の方で、なおかつ「マスクでもお洒落をしたい女性」にターゲットを絞っています。尖りに尖っています。

でもその分、ターゲットとなるお洒落したい女性に刺さるような努力が沢山あります。
実際に商品ページをみると、見た目の要素として、

  • レースをつける
  • ちょこんとしたリボンをつける
  • 可愛いパステルカラーにする

機能的な要素として、

  • 裏地にメイクが付いても目立ちにくいから、安心して外でも取り外せる
  • すっぴん隠しに使える
  • 就寝時の顔の乾燥対策になる

などのアピールがされています。明確に、お洒落をしたい女性に向けた内容ですね。

対象客層のヒアリングが大切

上記の要素は、対象客層の方に使ってもらい、その生の声を集めながら追加されたようです。だから、ニーズにぴったりフィットしているわけです。

なにしろ狭い客層の狭い狭いニーズを拾うので、想像ではなんともなりませんから、ヒアリングが大切なんでしょうね。

「女性用お洒落マスク」という小さな小さなパイですが、そこにとことんフィットする商品にした結果が、ターゲットにズバッと刺さり、大ヒットにつながったといえるのではないでしょうか。

類似事例:ギフト用の高級トイレットペーパー

「3ロール5000円」のトイレットペーパーというものがあります。

高級トイレットペーパー

一般的なトイレットペーパーは、12ロール300円程度ですよね。これは、繰り返しますが「3ロール5000円」のトイレットペーパーです。

価格差、66倍。ひと拭きいくらの世界へようこそ。

これは、高知のメーカーがギフト用途で、超高級路線に突き抜けた商品開発をしました。
ギフト用途として、贈られた人が嬉しくなるように、とことん素材や外箱・梱包にこだわり抜いています。紙は土佐の高級和紙、外箱は京都の職人手張りで、箱の表面には銀箔が使用されているとか。

そして、「3ロール5,000円」という超高級な「トイレットペーパー」というギャップもウケ、一躍人気商品となりました。

他社は真似しようにも、「高級トイレットペーパー市場」というパイがあまりに小さいので、既に知名度のあるこの商品にはなかなか太刀打ちできず、高い参入障壁ともなっているとのこと。

狭いパイだからこそ、しっかり掌握することができれば、安定した売上にも貢献するという実例ですよね。

池の中なら「鯨」がいない

中小企業は、大きな競合とかぶってしまうのは、大きなリスクです。しかし、一般論として、「大きな会社は、極端に小さな市場を狙わない」ようです。であれば、既存の市場の中にある、さらに細かい・小さな市場を狙えば、大きな競合とはかぶらないはずです。

大きな会社は、大きな市場をコントロールすることで大変なので、小さな市場は小さな会社のものだと思います。市場サイズごとに、そこに向いた会社があるのではないでしょうか。

そう考えれば、大きな市場は大きな会社、小さな市場は小さな会社が担当する…というのが道理ですよね。

3:勇気を持って、突き抜ける

こういった話は、安全な場所から過去の成功事例を眺めつつ、好き勝手に論評するのはとっても簡単ですよね。すいません。

リスクを取って、突き抜ける勇気が必要

極端な商品がヒットになりやすいことは、多くの人が知っていると思います。その一方で、極端な商品がそこまで増えないのは、やはり勇気がいるから・リスクがあるからではないかと思います。

たとえば、甘すぎるマスク。ごく一部の客層に特化した分、ほとんどの客層を切り捨てることになります。だからといって、例えば「男性でも付けられるようにレースはやめておこう」などと妥協すると、そもそものコンセプトが土台から崩れます。

高級トイレットペーパーも、「一般の人にも買いやすいよう、もう少し手の届きやすい値段にしよう。その分、コストカットで外箱は簡素にしようか」などとしていたら、コンセプトが根本から崩れ、単に「変に高い商品」になってしまいます。

無難なところで止めるほど、リスクが高まります。突き抜けることで、完成するわけです。

リスクを把握し、事前にシミュレーションする

このような極端な商品に、お金をかけて、時間をかけて、本気で取り組むのはなかなか勇気がいると思います。かといって無難な商品にしてしまっては、本末転倒です。

では、どうしたらいいのでしょうか。

これは想像ですが、「もしこけたとしたらどうなるか」を調べて、うまくいかないときのダメージを把握し、この程度ならつぶれないな・・と分かっていれば、安全圏内で仕事を進められると思います。

シートベルトをした上で(安全を確保した上で)、アクセルを踏むわけです。

まとめ

では、ここまでの話をまとめます。

尖った商品を企画する3つのコツ

「中小企業が尖った商品を企画するコツ」は、この3つ・・かもしれないという話でした(あくまで仮説です)。

  • 1つ目:「ずらす」
    • 商品を転用して、普通とは違う「新しい使い方を提案」し、「新しい価値を提供」すること。既存商品の転用なら、リスクを避けられます。
  • 2つ目:「しぼる」
    • 特定客層に特化し、「ターゲットにとことん寄り添い、ターゲット以外は手が出ないくらいに突き抜けた商品にする」こと。小さな市場になりますが、そのぶん、大手とぶつからずに済みます。
  • 3つ目:「勇気」
    • 前例がなく極端な商品は、リスクがあります。ギャンブルではなく「もし失敗してもダメージがこの程度」と確認した上で取組むなら、安全圏内で挑戦できます。

花粉症マスクの事例でおさらい

今回紹介した花粉対策マスクで言うと、普通の使い方は「花粉対策」ですが、「女性のお洒落」にずらして、「つけて可愛いマスク」という新しい価値を提供しました。

また、普通は花粉対策機能を改善して「花粉症の人みんな」に売りますが、「お洒落したい女性」にターゲットをしぼり、「ターゲット以外は手が出ないくらい、徹底的にこの女性たちにフィットした機能追加」をしました。

開発にあたり、勇気を出したかはわかりませんが、不安はあったのではないでしょうか。でも、チャレンジのかいあって、お客さんの支持を得られました。

その結果、このような人気商品となったのではないかと思います。

考えるだけなら、ノーリスク

最近は、仕入れ型のお店でも「なにかオリジナルできないかな」と考えるケースが多いようです。でも、不慣れなことだから、ついつい後回しにしてしまうものですよね。

せっかくなので、この記事を見返しつつ、5分くらい考えてみませんか。実際に発注する必要は無いです。考えるだけならタダです!

人気商品の始まりは、ちょっとしたアイデアだったりしますよね。日頃から沢山考えていると、いつかヒットが生まれるかもしれません!

個人的な仮説ではありましたが、ご参考になれば幸いです。

PS
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この記事を書いた人

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