ECも成熟期を迎え、大手の参入など競争も激しくなってきましたね。これからどうお客さんを集めていくか、悩まれてるお店も多いのではないでしょうか。
そんな中、最近、注目を集めているのが、「シニア(60歳以上)のお客さん」です。 この世代、若者と違って、お金も時間もあって、リピート率も高いなど、お客さんとしては理想的なんですよね。しかも、最近では20~30代よりもECの利用率が高いのだとか。(詳しくは後ほど)
これは狙わない手はないはず。ということで、今回は、新たな客層として注目したい「シニア」の開拓について考えてみました。
…といっても、「フォントを大きく」みたいなお話ではありません。シニアの接客でよく「手間だ」と言われる、”問い合わせ対応”についてのお話です。
「シニアのお客さんも大事なんだろうけど、正直、問い合わせ対応とか大変そうだし、気乗りしないんだよね」という方は、ぜひご一読ください。
もちろん、シニアに限らず、「客数を伸ばして売上を伸ばしたい」「お客さんの問い合わせで苦労してる」という方のヒントにもなるはずです。
※ここでいう「シニア」とは、『最近スマホを入手してインターネットを触りだした、まだまだECに不慣れな60歳以上』を想定しています。十把ひとからげに「60歳以上」というわけではありません(お詳しい60歳以上の方も多くいらっしゃいますので)。あしからず、ご了承ください。
はじめに
なぜ、ネットショップでシニア開拓なのか
最近のシニアは本当にお元気で、ネットショップでもよく買い物をしてくださいます。冒頭でもお伝えしたように、若い人(20~30代)よりも、よっぽどECの利用に積極的な傾向もあります。
※詳しくはこちら:平成27年 総務省白書「インターネットショッピングの利用状況」
思えばこの世代って、小売のお客さんとしてはパーフェクトなんですよね。なぜって、こんなにも好条件が揃ってるんです。
- 人数が多い上に、お金にも時間にもゆとりがある
- 商品比較もザックリで、情で買ってくれることも多い
- メルマガも読んでくれるし、商品レビューも書いてくれる
- 一度安心するとリピーターになってくれる。しかも浮気しない
ちなみに、これを全部、真反対にしたのが、多くのお店が取り合っている「若い人」です。こうしてみると、シニアこそ、積極的に狙いたい客層に見えてきませんか。
ネックになる「問い合わせ対応」
が、しかし。そんなシニアには、1つ大きな弱点があります。それは、「問い合わせ対応が大変」なことです。
一般に、この世代の問い合わせは、質問数が多く、話も長くなりやすいです。ときどき「正直、シニアの接客はめんどうくさい」という意見も耳にするくらいです。みなさんも、1度は感じたことがあるかもしれません。先述したような「好条件の客層」にもかかわらず、なかなか開拓が進まない背景には、こうした要因があるのではないでしょうか。
でも大丈夫です。ちゃんとこの問題を解決する方法があります。以下、詳しく見ていきましょう。
シニアの問い合わせ対応の基本
実録!シニアが対応1つで高単価リピーターになった話
まずは、ざっくりイメージをつかむために、私の経験談(実話)をご紹介します。強調しているところに注目しつつ、読んでみてください。
* * *
昔々、私がドン○ホーテでアルバイトをしていた頃のことです。『ネコおばあちゃん』と呼ばれるシニアのお客さんがいました。
毎度、大量の猫砂・猫缶を買ってくれるのですが、彼女は、ドン◯特有のギチギチ陳列の売り場に不慣れでした。そのため、来店早々スタッフを捕まえては、「アレとコレを10個ずつ持ってきて」とお店のスタッフに依存状態。お店からすれば、「ひとたび声を掛けられれば、長時間の拘束は覚悟」のまさに「問い合わせ対応が大変なシニア」の典型だったわけです。
しかし、ある日、ネコおばあちゃんには、決まったパターンがあることが判明します。来店する曜日と、買う商品がいつも同じだったんですね。そこで、来店に先周りして、事前に商品を用意しておいたところ、これが大当たり。以後、劇的に接客時間が減りました。
晴れて、ネコおばあちゃんは、さしたる接客も要さずに、定期的にまとめ買いをしてくれる高単価リピーターとなったのでした。
* * *
なんとなくでも、どう対応すべきか、イメージがつきましたか?(ついてない方は、『黄色くハイライト』されている場所だけ、もう一度読み直してみてください)
このエピソードを念頭に、そもそもどうしてシニアの問い合わせは大変なのか。そして、お店はどう対応して行けばいいのか。一緒に見ていくことにしましょう。
シニア層の問い合わせが多い理由
シニアの問い合わせ傾向を表にしてみると、こんな感じになります。
(ちょっと乱暴かもしれませんが…)
要するに、シニアの方は、一般的な若いユーザーよりも、考えるのを早く諦めてしまう傾向があるんですよね。だから、ちょっとしたつまづきでも、お店に助けを求めてくる。(先述したネコおばあちゃんも、ドン○の売り場から、自力で商品を探すのを諦めていました)
これが、シニアの問い合わせが多い、本質的な理由だと考えられます。
どのようにQA対応すればいいのか?
でも、ネットショップは忙しいですよね。いくらシニアが良いお客さんとは言え、ちょっとしたつまづきで、逐一問い合わせをお受けしていては時間が足りません。
そこで考えたいのが、業務の効率化です。
ここで再び、ネコおばあちゃんです。自力で商品を探せないおばあちゃんに、お店は先回りして商品を用意してあげましたよね。そして問題は解決されました。これと同じ発想で、ネットショップも、問い合わせをもらう前に、事前にシニアがつまづきそうな箇所をフォローすればいいんです。
大事なことなのて、要約して言い換えましょう。「なんでもかんでも問い合わせに流れてこないように、つまづきがちなポイントに先回りして、あらかじめ答えを用意しておくこと」。これが、シニアの問い合わせ対応の基本です。
それでは、方向性が見えたところで、具体的な施策をご説明していきましょう。
シニアの問い合わせ対応をラクにする2つの施策
結論としては、つまづきポイントをまとめたページを用意して、事前に見せること。
たったこれだけです。何の捻りもない、ド定番の施策ですが、結構効きます。具体的には、以下の2つです。
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前者は、「ちょっと気になることがある」くらいの方への対処を。後者は、「ここはどこ?どうやって買い物するの?」レベルの方への手厚いフォローを、それぞれ目的としています。
お店の方のお話を聞いていると、シニアの方は、だいたいみなさん、同じようなところでつまづかれる傾向にあるそうです。実際にお店に寄せられた問い合わせを元に、上記のページを用意して先回りで案内できれば、自然と問い合わせが減って、ラクに接客できるようになるはずです。
以下、それぞれ詳しく見ていきます。
1.よくある質問ページ
まずは「よくある質問」。いわゆるFAQ、Q&Aです。
どういうもの?
お客さんからよくもらう質問と、それに対する答えを整理して列挙するページです。
このような内容です。
FAQのメリット
質問フォームや電話で相談を受ける前に、このページを見てもらえると、セルフサービスで問題を解決してもらえます。さすがに込み入った情報までは載せられませんが、Q&Aで解決できるような単純な質問が多い場合は、不要な問い合わせを減らす打ってつけの施策になります。問い合わせを受けても、「よくある質問をご覧ください」で対応を完了できるようになるのもメリットですね。
FAQページに載せる内容は、過去の問い合わせをふまえて考えます。たとえば、「代引きは使えますか?→使えます」というやりとりがあったら、それをすぐにQ&Aとして、ページに反映するイメージですね。
シニア向けに、どんなQ&Aを載せるべきか?
この施策を、シニアの問い合わせ対策に見立てるときは、より細かく、より先回りするくらいの気持ちで、Q&Aを増やすことになります。
当社のクライアントさんから聞いたお話では、シニアの方からは、
- 複数商品のカゴ入れ(=同梱)の方法がわからない
- さっき見たあの商品が、どこにあるのかわからない
などの質問もくるそうです。このレベルまで目線を持っていく必要があるわけですね。
「よくある質問」をすでに設置しているお店でも、シニアのことまで考えて作られているケースは、さほど多くありません。シニア向けのQ&Aが充実していれば、もしかしたら差別化になるかもしれませんよ。(少なくとも、Amazonの自動販売機状態よりは、買いやすいお店になれると思います)
これまでにシニアのお客さんに聞かれた内容を思い出して、もし何かしらパターンがあるのであれば、それをQ&Aページに網羅しておきましょう。
※なお、このページを作ったら、ヘッダーやカゴ周りなど、目立つ場所にリンクを設置してください。見てもらえなければ意味がありません。(「よくある質問の場所がわからない」なんて問い合わせを受けたらビックリですよね)
2.はじめての方へページ
「はじめての方へページ」を用意するのも有効です。
どういうもの?
簡単にいえば、初心者向けのインフォメーションページです。ネットショップ初体験の人でも、とどこおりなくお買い物できるように、お店の買い物の仕方を、詳しくやさしくガイドするわけです。ジムやスクールで入会時に渡される「レクチャーのパンフレット」を想像してもらえると、わかりやすいかもしれません。
シニア向けに、何を載せるべきか?
ネットショッピング初体験の人でも安心して買い物できるように、「店内での商品選び」から「決済」「お届け」まで、一連の流れを説明してあげましょう。
先ほどのサントリーさんでは、こんな感じです。
楽天などモール系のネットショップでは、「はじめての方へ」ページが自己紹介だけで終わっているケースが本当に多いです。もちろん自己紹介も大切ですが、それ「だけ」なのはもったいないと思います。
例えば、皆さんがスポーツジムに入会したとして、「はじめての方へ」のパンフレットを渡されたら、中身に何を期待しますか?たぶん、ほとんどの方は、ジムの設備や活用方法を知りたいと思うんです。自己紹介「だけ」だったら、拍子抜けしますよね。これでは、シニアの方々が問い合わせに走るのもやむなし、というものです。
既に設置されている方も、今一度、この観点でページを見直してみましょう。何か気づきがあるかもしれません。
まとめ
前半では、基本的な考え方として、ネコおばあちゃんを例にシニアのつまづく箇所を理解して、先回りする観点をお伝えしました。そして後半では、具体的な施策として、「よくある質問」と「はじめての方へ」の2例をご紹介しました。
お店の人には当たり前のことでも、シニアの方にとってはつまづくポイントであることが、往々にしてあるものです。この記事でお伝えした、観点と2つの施策をヒントに、自店舗の問い合わせ対応状況を見直してみてはいかがでしょうか。
シニアのお客さん、ひいては、ECに不慣れなお客さんを獲得する、手立てになるかもしれません!
ちなみに、こんなときは…
この情報だけじゃ作れないよ、という方は弊社までご相談ください。完成までの道筋を、小分けにして1つ1つ提案します。
「既にFAQなどを用意しているのに、問い合わせは減ってないんだよね…」という方。弊社ではこういったご相談も、コンサルティング・サービスの中でお受けしています。何が原因か、どう対処すればいいかを一緒に考え、解決までの道のりを並走します。ご興味ある方は、以下のページをご覧ください。
この記事を書いた人
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コマースデザインは、EC事業のコンサルティング会社として、ECのお役立ちツールやECコンサルティングを提供しています。全サービスの累計支援先企業は23,000社を突破しました。「色々な個性を持ったお店が数多くあり、お客さんに豊かな選択肢があるEC業界」を目指し、中小ネットショップ事業者の皆様の「強み」を引き出す支援を行っています。
詳しくは、コマースデザインについてをご覧ください。
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