こんにちは、石黒です。ネットショップの運営には、受注や出荷などの「カスタマーサービス(以下、CS)」が欠かせません。そしてCSでは、同じ時間内で、どれだけ多くの処理や出荷ができるかで評価されますよね。そのため、常に「効率化」が求められます。
私は前職のショップで、長らくCSのリーダーを担当していました。しかし一時期「現場の協力が得られず、効率化が進まない」と悩む事が多々ありました。
しかし、ある出来事をきっかけに、積極的に協力を得られるようになったのです。今回は、その時の経験と、CSにとって重要だと思う「とある習慣」についてお話しします。同じような事でお悩みの店長やリーダーの方がいたら、ぜひご参考ください。
実体験:あれだけ出なかった改善案が…
スタッフが協力してくれない!
ネットショップの受注処理や出荷の効率アップには、現場スタッフの協力が不可欠です。
なぜなら、改善の細かな工夫は、現場から生まれる小さな不満や意見から生まれる事が多いからです。
私は当時、5~6名ほどのCSチームのリーダーでした。もちろん、業務の効率化は常に会社から求められていました。そのためにメンバーに以下のような協力を仰いだのですが、ことごとく失敗してしまいました。
失敗談1:「改善案を募集します」→ 集まらない…
ある日の朝礼で、みんなに「改善案を出して欲しい」とお願いしました。私はすぐ集まると思っていました。なぜなら、普段の仕事の会話から「ここがこうだったらなー」「この作業無駄だよね」といった、改善に繋がりそうな声をチラチラ耳にしていたからです。
しかし、結果は散々で、いくら待っても改善提案は全然集まりませんでした。。私は「普段、色々と話は聞くのに、なぜ出してくれないんだ…」と不思議に感じました。
失敗談2:「作業時間を測ります」→ 猛反発!
また別の日、作業の時間短縮の参考にするため「作業内容の計測」を指示しました。受注や問合せ対応で、どんな内容にどれだけ時間がかかっているのか、把握するためです。
経緯を説明しながら依頼をしたのですが、これが猛反発!「手間が増えてめんどくさい!」「作業が遅いと、悪く評価されそうで嫌だ…」などなど、不満が止まりません。参った。。
この他にも、日々の業務を効率化しようにも、なかなか現場の協力が得られないという状況が続いていました。
作戦変更!「指示」をやめて「会話」をする事に
そこで私は、作戦を切り替えます。これまでは、あくまで私がスタッフに一方的に「指示」していました。その指示を一旦止めて、スタッフ全員を交えた会議を開く事にしました。
ただ会議といっても、依頼を一方的に伝えるのでは変わらないので、近況や思っている事を話してもらう「会話」の場にしてみました。「最近どうですか?」みたいな簡単な質問から始まり、徐々に「どんな事で困ってる?」「何があったら良いですか?」というように、改善に向けた話にシフトしていきます。発言は特に強制はせず、私は自然な会話になるよう、質問や話題を振る程度に留めました。
意見や改善提案が続々出てくる!
そうしたところ、途中までは何気ない会話だったのが、会議の後半くらいからいくら頼んでも全然出なかった意見や改善案が、続々と出てきたのです。それに、猛反発を受けた作業時間の計測も、結局は協力してくれる事になりました。結果、効率化を進める事はできたのですが、私の指示一辺倒だった時と比べると、雲泥の差です。
なぜ、うまくいったのでしょうか??
会話で高められた「参加意識」
振り返ってみて、「一方的に指示をする」のと「会話しながら意見を集める」のとでは、現場スタッフの中の、ある意識に違いがある事に気が付きました。
それは、「参加意識」の差です。
もう少し詳しく説明します。
いかに「自分の意思」を喚起できるか
「参加意識」とは、何かを複数人で行う際、嫌々ではなく「自分の意思で参加している」という意識の事ですよね。
わかりやすく、小学校のドッジボールをする子供で例えてみます。
- 昼休みに「ドッジボールする人集まれ!」と言われて集まる子
- 体育の時間に、やりたくもないのに嫌々やらされる子
当たり前ですが、前者の子供たちの方が盛り上がりますよね。なぜなら、みんな「ドッジボールをしたい!」という自分の意思があって、集まっているからです。「参加意識が高い状態」です。
この「ドッジボールしたい人集まれ!」状態と同じ事が、前述の「会話」によって生まれました。
なぜこれだけ違いが出たのでしょうか?以下、もう少し詳しく説明します。
指示だけでは参加意識が高まりづらい理由
まず、指示だけの場合だった時の事を考えてみました。
その結果、参加意識が高まらなかった原因は、私とスタッフの間に、効率化の「優先度」について、大きな認識のズレがあったためである事に、気が付きました。
その差は、以下の通りです。
- CSスタッフは、パートが中心なので、早く帰る必要があり「作業を早く終わらせることを優先する」
- 一方、リーダーである私は、社長から指示を受けたので、「目の前の作業よりも効率化を優先する」
正反対ですね!私は社員で、「会社からの指示」でやっているので「当然、改善の優先度は高い」と思っています。しかしパートさんは「当然、作業が優先」と思っていたことでしょう。結果、参加意識が高まらなかったのです。
しかし、この「認識のズレ」に気づかなかった私は、一方的に指示をしていたのです。これでは、改善案が集まらないのも無理はありません。
会話だと「自然と」高まる参加意識
一方、会話は双方向のコミュニケーションが発生します。一方的ではありません。そうなると、必ずそこには、否が応でも「自分の意思」が必要になります。
- 思っている事を「話す」
- 質問に「答える」
- 不満や意見を「伝える」
全て、「自分の中から出てきた行動」です。また、その会議では、強制ではなく、終始「もしあれば、あなたの話を聞かせてください」という姿勢を取っていたので、無理やり言わされているわけでもありません。
そうすると、最初は消極的でも、徐々に「あ、自分の事を話しているんだ」といった認識が生まれ、無理をせず、自然に「参加意識」が高まります。
「気がついたら、ドッジボールに参加したい人になっていた」というイメージですね。
よく会議で、「意見や質問を出してください」と言っても出てこないのに、終わった後の立ち話になるとやたらと話が弾む、という事はありませんか?あれも、「一方的な指示」と「双方の会話」の違いなのかな、と思います。
一見非効率でも、普段のコミュニケーションが大事
このように、私は会話には、受け手側の「参加意識」を引き出す効果があるのではと考えています。
私の事例ではわざわざ会議を開きましたが、普段からチームやメンバーと何気ない会話をしやすい関係でいる事で、意見や改善案を出やすくなるのではと思います。実際に、それから私はチーム内の普段の会話を増やし、自然に困った時に協力を得られるようになりました。
もしかしたら、「そんな事は時間もかかるし、効率が悪い」と思われる方もいるかもしれません。私も、指示一つで仕事をしてくれれば楽だな、と思います。
しかし、前述の通り、パートやアルバイトなど、社員とは責任や立場が異なる人が多いCSの現場では、そう上手くいかない事が多いのでは、と思います。(あくまで、前職のショップやクライアントのお店のお話を聞く限りですが)
CSの改善は「急がば回れ」の精神が大事
常に効率化を求められるリーダーは、改善のため、スピーディーで一方的な指示をすべきと考えると思います。
しかし実は、「スピーディーな指示」よりも、意外と普段の「一見ムダに見える会話」を重ねる方が、意見がスムーズに集まり、結果的に、効率的に改善を進められるのかもしれません。
スピーディーな展開は「発言しづらい空気」になって発言が停滞し、逆にムダ話は「気軽に話しやすい空気」になって提案が自然と出てくる。現象だけ見ると、不思議です^^;
要は「急がば回れ」という事でしょうか。
これはCSに限らず、複数人で仕事をしている組織であれば、どこでも言える事なのかもしれません。
CSリーダーに向くのは「関係重視型」?
ちなみに、CSを率いるリーダーは、ミッション完遂に向けて、グイグイ人を引っ張るカリスマタイプよりも、コミュニケーションを重視する「関係性重視型」タイプの人が相性が良いのかもしれませんね。
人に話しかけたり、人の話をじっくり聞くといった、何気ないコミュニケーションが自然とできて、仕事を進める事よりもチームの雰囲気を求めるタイプです。
ちなみに、私も本来はそっちのタイプで、普段からスタッフとよく会話をしていました。しかし当時は、会社から「業務命令」として効率化を求められた事で、「自分でリードしなきゃダメだ」という意識が働いて、失敗してしまったのだと思います。最初から、いつものように話せばよかったのかもしれません^^;
まとめ
いかがでしたでしょうか。
まとめると、効率化に必要なスタッフの協力を得るためには、指示をするだけでなく、多少遠回りでも「会話を増やしてみては?」というお話でした。
- 一方的な指示ではなく「双方向の会話」を増やす
- そうすると、相手の「参加意識」が高まる
- 結果、意見や改善案が自然と出てくる
日頃からスタッフが協力してくれるようなると、店長やリーダーは楽になりますよね^^
そのためには、普段からチーム内の会話を増やしたり、ちょっとした相談や悩みを聞いたりといった、小さなコミュニケーションの積み重ねが大切なのかもしれません。当たり前のようなお話ですが、参考になったら幸いです。
P.S.
日々のネットショップ運営では、色んな悩みが生まれますよね。
弊社のコンサルティングでは、売上アップ施策だけでなく、今回のような組織関係や仕事の進め方など、各種お悩み相談を受けています。何かお悩みがあれば、当社にぜひご相談ください。コンサルタントがあなたと一緒に考えます。詳しいサービス内容は、以下のページをご覧ください。
この記事を書いた人
- エクステリア通販会社にて、店長業務に加えて物流・ユーザサポート・システム開発まで幅広く担当。市場ニーズと競合度を見極めて自社オリジナル商品を企画、自ら販促全般まで行って人気商品を量産。楽天ショップオブザイヤーにてジャンル賞を受賞したが、独自ドメイン店にも明るい。休日はバンド活動中。