商品の良さを伝える「描写力」は、グルメリポーターから学ぼう

商品の良さを伝える「描写力」は、グルメリポーターから学ぼう

こんにちは、川村トモエです。

情報を伝えるとき、一体どんな言葉を使えばいいのか、悩みますよね。特に、誰かにものごとを紹介するときは、そのシーンを彷彿とさせる「描写力」が必要です。でも、どのように描写すれば伝わるのでしょうか。

例えば、食品をアピールする上で欠かせない「おいしさ」を伝えるとき、あなたはどう表現しますか?

必ずやってしまうのが、「超おいしい」「マジで旨い」というように、自分が感じたおいしい、旨いといった感想を強調するパターンのやつです。これは「盛り言葉」。「もりことば」と読みます。私が創った造語です。

ここで言う「盛る」は、誇張するという意味です。「話を盛る」「アイメイクを盛る」といった使い方と同じ意味合いで、別の言葉で言い換えずに、基本的には形容詞や動詞の前に付けて、その意味を強調したり増幅させたりするのに使う修飾語のような言葉です。

商品アピールや説明文で使いがちですが、これでは良さが伝わらないのです。

※この記事は、筆者が「ネットショップ担当者フォーラム」に寄稿した内容を加筆・修正したものです。

その商品ページ、「盛り言葉」ばかりで書かれていませんか?

例えば、あなたが実店舗で買い物しているとしましょう。

見た目がツヤツヤで、粒の大きいおいしそうなイチゴに目が止まりました。そこへ店員さんがやってきて、あなたの見ているイチゴを指さしてこう言います。

それ、超おいしいんですよ!

ちょっと微妙な気持ちになりませんか? おいしそうだから興味を持って見ているので、「あ、そうか、おいしいのか」と思うものの、「超おいしい」という情報からは、勢いこそ感じますが、具体的なおいしさがまるでわかりません。

それを知るためには、こちらから店員さんに、産地や他のイチゴと比べて甘さはどうかなど、いろいろ質問する必要がありそうです。

ですがネットショップの場合、その質問はなかなかできません。多くの店舗で「お問い合せ」を受け付けていますが、高額商品や失敗できない商品を購入するなどよほどの理由がないと、わざわざ問い合わせようとは思わないものです。

ネットショッピングをしているお客さんは、思っている以上にせっかちなので、ピンとこなければ他の店へ行ってしまいます。その間、数分もありません。

ですから、ネットショップの接客を担っている商品ページには、「盛り言葉」を使った同じ表現ばかり並んでいても、意味がないのです。

家族や友人など、親密な関係であれば、「超」がついただけでも、「(相手は)相当おいしいと思ってるんだなー」という想像ができますが、前提となる情報がない間柄ではまず伝わらないと思ったほうが懸命です。

つい使ってしまいがちな「盛り言葉」

  • 「超」      : 超かっこいいデザインです!
  • 「激〜」「爆〜」 : 激安!!
  • 「めっちゃ〜」  : めっちゃおいしいんです〜〜
  • 「本当に」    : 本当に本当に本当に、オススメです!!

この連載の初回で、「ネットショップに必要なのは左脳を働かせる文章」とお話しましたが、「盛り言葉」は感覚的な強調なので、左脳に働きかけることはできません。

つまり、「買いたい気持ち」の背中を押すことができず、お客さんは冷めていってしまうのです。

特に食品ジャンルでありがちなのが、画面いっぱいの文字サイズで、

POP体の大きな文字で、「めっちゃおいしい」などと書かれた文言

などの文言が並び、スクロールすれどもすれども、大きな字(しかもPOP体)で盛り言葉と写真がひたすら続く縦長ページ。

これらはインパクトは強いものの、他の商品との違いがわからず、購入には至らないものです。こういうページで売れている場合は、商品への理解よりも、価格の安さに飛びつかれていることがほとんどです。

これらのページは、確かに“縦長”ではありますが、本来の縦長ページとは違います。さまざまな角度からの具体的な説明によって、結果的に長くなっているものが縦長ページなのであり、文字や画像が無駄に大きい、盛り言葉だらけのページは縦長ページではありません。

スマホ時代を迎え、縦長ページ自体の是非もありますが、長さはともかく、話の順番や文脈の必要性は変わりません。

※参考:縦長ページ(縦長商品ページ)とは?

例えば自分の母親に、「いいからとにかく食べてみて、ホントにおいしいんだから!」と食べ物を口に突っ込まれても許せますが、赤の他人にそんなことをされたら恐ろしいだけですよね。

強引で一方的な親密さは、人を不安にさせます。適度な距離感のある情報こそが、左脳に働きかけることができるのです。

具体的な描写はグルメリポーターに学ぼう!

では、「盛り言葉」を使わず、具体的な描写力を磨くには、どうすればいいのでしょうか。

それには、食レポの得意なグルメリポーターを観察するのが一番です。優れたグルメリポーターはただ美味しそうに食べるだけでなく、言葉でも見る人に「その料理を食べたい!」を思わせる、いわば伝える達人です。

通常、何かを食べてその感想を問われると、どうしても「おいしい」「まずい」で終わりがちです。情報番組などで「お味はいかがですか?」と素人にインタビューすると、たいがい「あ、とってもおいしいです」などと答えるものですよね。

でも、食レポは食べていない人に食べたいと思わせる情報を提供するのが目的ですから、感想を述べるだけでは足りません。

上手なリポーターを観察していると、まず食べる前に形や色、匂いなどの描写をするところから始まります。そして、ひとくち食べ、まずは感想を言いますが、それだけでは終わりません。例えば・・・

口の中いっぱいに肉汁が広がって、でも普通肉汁って結構脂っこいものなんですが、このお肉はとても油がさっぱりしていますね! だからしつこくなくて何個でも食べられそうです。

といった具合に、具体的に味をイメージできる細かい描写が入ります。そして、

このさっぱり感が、大豆で育てている○○牛ならではの特徴なんですね、これならヘルシーでお肉が苦手な方にもいいですね。

というように、事前の取材やお店の人から聞いた情報を追加する。

このように、上手なグルメリポートには、“盛った”感想だけでなく、左脳に働きかける情報がたくさん入っています。グルメ番組を見る機会があったら、ぜひリポーターの表現や情報に注目してみてください。

ただし、「まるで宝石箱や〜」などと、決めゼリフだけをパクっても意味がないので、気を付けましょう。

PS

販売している商品はお店ごとに違いますから「セオリーが分かっても、実際に自分の店や商品に適用するのが難しい」という方もいらっしゃるかと思います。弊社のコンサルタントがお手伝いができるかもしれません。

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この記事を書いた人

川村 トモエ
コマースデザイン株式会社 取締役 コピーライター/コンサルタント
ライターからEC業界に転身。商品コンセプト立案やキャッチコピーなど「売れないオリジナル商品」の立て直しを得意とし、ヒット商品を多数企画。中小規模の店に対してわかりやすいコンサルティングを提供しつつ、講演や寄稿も行う。黄色本・マンガ本の著者でもある。
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