EC業界の片隅から、2021年を振り返る

こんにちは、川村トモエです。
皆様、今年も1年お疲れさまでした。

さて、昨年もぬるっと書きました、1年を勝手に振り返り。今年もこっそり振り返ってみることにしました。
でも、夏のオリンピックの記憶がもはや遠く、ニュースの「今年のベストシーン」的なものを見て、まだ半年も経っていないことに気づき、ふるえています。
(だって、2021年なのに、2020(ニーゼロニーゼロ)だったし。)
なんっか、去年から時間間隔が曖昧なままなのですが、1年間なんとか頑張ってきました。きっと、この感覚は私だけではないはず。

さて、ECを覚えてから、ずっと買い物はネットばかりと公言して憚らない私ですが、物販に限らず様々なサービスの利用もネットになっています。連絡はLINEやInstagram、FacebookなどのSNS、生活上の探しもの、例えば、ベビーシッターを探すのも、子どもの習い事を探すのも、家事代行を探すのもネットになりました。私の生活は、もはや全て、いろいろなカテゴリのプラットフォームなしでは成立しないのではないか?と、いろいろ感慨深い2021年冬です。

いやー、ネット上のプラットフォームって本当に増えましたよね。

楽天サンキュッパ問題、ついに決着。

「送料」の上にも3年

師走のはじめ、こんなニュースが駆け込んできました。
思い返せば、2019年に発表され、物議を醸した楽天サンキュッパ問題。
当社ブログでも、追いかけてきましたが、楽天側の改善措置申し出により、公取の調査が終了となり、いよいよ決着

ちなみに、当時の見解を坂本が書いたのが以下のブログでした。

いやー、ワンタリフの発表から3年ですか。長かった、のかな。
ただ、この件の経緯を追ってきた者としては、プラットフォーム側があらためて「出店者との関係」に向き合うきっかけになった件だったなと。

コロナなんて予測してないので、ここまで短期間でECの新規参入が爆上がりすると思っていた人もそういないでしょうから、当時の楽天出店者の方は、反発ももちろんありつつも、自身の商売の足元や生存戦略を見直す/考える契機になったとも言えますよね。

逆に、「あの時、真剣に考えておいてよかった」っていう人もいるんじゃないかな。

プラットフォーマーの力学

世の中の色々なサービスがプラットフォームに入り、そのプラットフォームがスマホやPCの中に入り、デバイスを通じてプラットフォームと消費者が繋がり、利用する。
消費者がプラットフォームに居つけば居つくほど、プラットフォームが強くなる。

そんなとき、店子に対して独占権をちらつかせて要求がエスカレートすることがあるのだけれど、そこにお目付け役の行政が出てきて、「まぁ、あなたその辺にしておきなさいよ。」と、釘を刺しにやってくる。
まぁ、かつての独禁法と構造は同じではあるのだけれど、「お代官様の言いなりにならなければウチみたいに小さいとこはやっていけない」という昔と違い、だいぶマイルドな気もします。所感ですが。。

まぁ、このように、お客さんを抱えパワーを手に入れたプラットフォーマーと、弱い店子を守る、行政ヒーロー、というのがかつての構造でしたが、今は店子がプラットフォーマーに直接意見を言ったり対話をしたり、ということができるようになっていますよね。楽天の有志店舗団体、友の会もサンキュッパきっかけでできたのでした。

サンキュッパ問題は、わかりやすく、プラットフォーマーとして先行していたので多く報道もありましたが、雨降って地固まる、といえますかね。

この後、ビジネスに限らず社会的に、小さな声が黙殺されにくくなってきた、これもネットの浸透による効能かと思いますが、声を上げることで、上下の関係から、プラットフォーマー、店子、行政のバランスで回るようになってきていることも大きいかもしれません。

プラットフォーマーとの付き合い方?

実は、上述の2019年の坂本のブログでは、楽天の「ワンタリフ発表」を受けて、私たち(が支援する中小ネットショップ)はどうするべきか?居場所はどこか?などと考えました。
例えば、こんなこと。

  • プラットフォーマーとの付き合い方
  • 我々の「居場所」はどこにあるのか?
  • 意味のある店になる!

・・・あれ?
なんか、今と同じ感じするけど。
今や、他の大手モールでも、「そりゃないよー!」という条件が出ている話はしょっちゅう聞きますし。

関連記事を見ない日はない位、自社ECでは業界で一番注目されていて、デザインや機能としては自由度の高いshopifyにしても、簡単にお店を作れるBASEにしても、CtoCから今年、ネットショップが作れるようになったメルカリshopsにしても、新しいECのプラットフォームなのですよね。

「初めてECサイトを開設した」ショップが全体の57%、メルカリ内にECショップを作成できるメルカリShopsが本格提供開始(TechCrunch)

確かに、選択肢は増えた。自由度も上がった、ような気がする。

でも、結局は、「仏陀の手の平の上!!※」いやいや、プラットフォームの中!!

※聖闘士星矢 冥王ハーデス編で巨蟹宮を抜けようとして抜けられない、冥闘士として復活したサガ、カミュ、シュラが、数十時間走り続けたと思ったのに全く進めていないことに気づいた時のセリフ(知ってる人だけついてこーい)

つまり、法に触れるか触れないか、取り沙汰されるかはさておき、誰か(プラットフォーム)の手の平の上であることには変わりはないわけで。
いや、決してプラットフォーマーを悪に見立てているわけではないのですよ。(だって、巨蟹宮で彼らを足止めしたのは、シャカだしね←)

プラットフォーマーには、プラットフォーマーのビジネスがあり、出店者として相性がよければうまくいくし、相違があればうまくいかない。これは実店舗のテナントだってそうですよね。

自分で選んで、契約するからには、例えば、どんなモールで、自店はどんな活路があるか、数年後はどうなっているか、などしっかり考えておかないと。
(たとえ、上手な営業さんの口車に乗ったのががきっかけだったとしても。)

ネットショップは、ついに2021年、もはや誰でも、簡単に開設できるものになりました。

入り口が大きくなって誰でも簡単に入れるスペースで、大勢と「パイ」を奪い合うって、大変ですよね。(奪い合うという表現は嫌いですが、あえて書いています。)

ガンガンパイを探して取って行く人ももちろんいるでしょうが、自分はどのくらいの量でお腹がいっぱいになるのか把握し、例えば誰かと上手にパイをシェアするとか。パイの具と生地を、オレンジとマーマレードのように分け合うとか。
色々、やり方を考えないと、パイ取り競争に巻き込まれて消耗してしまいますよね。

EC事業者の悩みが多様化してきた

プラットフォームを乗りこなす、しなやかな運営を

ちなみに今年、事前相談から当社に寄せられたご相談を、すごくざっくり分類するとこんな感じになります。

  • 新規出店の方は、「参入したのに全く売れない!」
  • 中堅店舗の方は、「売上が停滞している」
  • ベテランの方は、「今までのやり方が通用しない…」

1モールのみ出店、という方は減り、多モール展開が基本。
また、数年前と違い、「自社サイトのみで、集客はSNSのみ」みたいな方も結構いらっしゃいましたね。

かつては、特定のモールで売れている、お手本店舗を真似すれば、それなりに売れる時代もありました。プラットフォームの裏をかく、裏ワザ的なテクニックで売るなど、プラットフォーム最適化することが売れる秘訣だったり。

でも、もはや自店をプラットフォームに最適化するのではなく、自店に適した形で、プラットフォームを活用する、より高度な経営が求められるようになってきたと感じています。

今、プラットフォームに属しておらず、個性の際立つ有名店は、かつてプラットフォームに居たものの、「自店の最適化」を考え、モールを去り、その後も個性を磨き続け、プラットフォームに頼らず運営できているところも少なくありません。

運営、経営の難易度は上がっていますが、プラットフォームを股にかけて、しなやかに運営していけるお店が増えるといいな、と思っています。

ツールや情報だけでは、悩みは消えない

当社書籍が出た、11年前とは違い、最新のノウハウや情報は、ネット上にも、本屋さんにもたくさんあります。
そんなにヒントや答えが落ちていたら、皆それを使って悩みを解決したり、売上を上げたりできるんじゃないかなー、と思いきや、悩みは減らないどころか、多様化してきている模様。

あと、デザインやシステムの進化により、素人ショップでもきれいにできるので、なんとなくそこで「素敵なお店ができた」と思ってしまうことも多いかも。これはそれこそプラットフォーマー様様なんだけど、なんだろう。
写真加工アプリの進化と浸透により、自分の顔の個性の活かし方がわからなくなる的な?
昔は、HTMLなんて触ったことない素人でも、やるしかないから、がんばっても、どうしても素人っぽいページになってそれを何とかしようと奮起した方は本当に多い。その意味では、がんばり方がわかりやすかった、と言えなくもないですよね。
でも、今はこのきれいなページでなぜ売れないのか、お客さんが来ないのか、となってしまう。

これは文明の進化と同じで、優れた洗濯機があるのに手で洗濯する必要はないと私は思うし、どんどん利器を活用するべきだと思います。
でも、洗濯機に任せていると、洗濯の「原理」はわからなくなるよなぁ、とも思うのです。洗濯とは、どんなことで、その原理を機能で実現した機械が洗濯機なんだ、とわからないと、「手で洗う」と聞いても、どう手を動かしていいか悩むし、うまくできないと思うのです。

そういう意味では、どんなに進化しても、「原理・原則」みたいなことは結局大事だし、知らないと困るよなぁ。と
知っていれば簡単なことでも、知らないとすごく遠回りしたり、たどり着けなかったりするのが原理。ああ、原理大事。

私たちのコンサルの現場でも、近年EC販促のテクニックではなく、より深い経営についてお話することが増えています。
重いテーマではありますが、「生存」をかけたお手本のない問題に向き合っていくには、そもそもの見方を変えたり、じっくり考えたり、ということが重要で、私たちは来年も引き続き、EC業界の片隅から中小事業者の皆さんと考え、色々な答えを出すお手伝いをしていきたいと思っています。

P.S

寒波で大雪からの、配送遅延など出ているようで心配です。
うちも、関西からお正月のおせちが来るはずなのですが、無事届くかな、おせち。
休まず店舗を運営してくれる事業者の皆さま、配送会社の方々、ありがとうございます。皆さまの安全と、来年のご多幸を祈念して今年を締めくくりたいと思います。

今年も当社のブログやメルマガをお読みくださり、ありがとうございました。
どうぞ、良いお年をお迎えください。

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この記事を書いた人

川村 トモエ
コマースデザイン株式会社 取締役 コピーライター/コンサルタント
ライターからEC業界に転身。商品コンセプト立案やキャッチコピーなど「売れないオリジナル商品」の立て直しを得意とし、ヒット商品を多数企画。中小規模の店に対してわかりやすいコンサルティングを提供しつつ、講演や寄稿も行う。黄色本・マンガ本の著者でもある。
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