こんにちは。コンサルタントの槐です。
今回のテーマは、モール店と本店の違いについて。楽天やYahoo!・Amazonのようなモールのお店と、本店(独自ドメイン店)はどんな違いあるのかをお話します。
ちなみに、「本店の売上アップ施策にはどういうものがあるか?」といったテクニック論ではありません。ある程度、ネットショップの売上アップ施策の基礎知識がある方向けですので、この辺の前提がよく分からない方は、こちらの本をお読みください。無料で立ち読みできます。
モール店と本店の違いとは?
まず、モール店と本店の違いをわかりやすくするために、それぞれの特徴を船に例えてご説明します。
モール店は「帆船」、本店は「汽船」
- モール店 → 帆船(帆に受ける風の力を利用して進む)
- 本店 → 汽船(エンジンでスクリューを回して進む)
帆船は、帆があって、風を受けて進む点がポイントです。
一方、汽船は(蒸気船ともいいます)、エンジンを搭載していて、エンジンの力でスクリューを回して進みます。
モール店は、モールの力にうまく乗っかることが大事
なぜ、モール店が帆船かと言うと、「モール自体が持ってる集客力(風)を、いかに自分のお店に引っ張ってくるか」が肝だからです。特に、父の日・母の日・バレンタインのような季節イベントが典型的ですね。
つまり、モールでは、非常に強力な風が吹いているので、そこに向けてうまく帆を張ることが大事。「モールの力にうまいこと乗っかって、売上を作っていく」ことが、モール店の基本的な販促スタンスになります。もちろん、それが全てではありませんが、モールの影響力が大きいことは間違いありません。
ですから、風が吹かなければ、売上が落ちることも当然あります。たとえば、楽天の調子が悪いと、がんばっていても楽天店の売上が下がりやすい側面がある、ということです。
本店は、ひたすら自助努力が必要
本店は、こういった風が吹いていないので、自力で進んでいくしかありません。「うちのお店や商品の魅力は、〇〇です」と、SNSやインスタに写真をたくさん流してお店の魅力を紹介したり、ひたすら自助努力でやっていく必要があります。
もちろん、市場動向という風は、本店においても吹きますが、よりモールの方が、外部要因(モール内動向)の影響を受けやすくなります。
モール店は、モールに吹いている風を上手につかむ必要があり、本店は自力で進む必要があります。これが、モール店と本店の基本的な違いです。
売上アップ施策の「レベル1・2・3」を覚えておこう
モール店と本店の基本的な違いを踏まえて、「売上アップ施策には、レベル1・2・3がある」ことを説明します。
レベル1:待ち受け販売
レベル1は、待ち受け販売です。お客さんが自分から「ほしい」と思うものがあり、検索で入ってきている状態です。
当たり前の話ですが、このレベルでは、「分かりやすい商品ページ、分かりやい出荷・配送・料金案内」をお客さんに提示し、快適に買ってもらうことが第一です。お客さんを集めてくる前に、「今ページを見に来てくれてるお客さんに、ベストな案内できてるのか」と考え、工夫することが待ち受け販売です。
これができてないのに、広告やメルマガで「今だったら早割で安いですよ」とか「クーポンありますよ」などアピールしても、意味がありません。広告に惹かれて、実際に商品ページを見にいってみたら、分かり辛いというのでは、本末転倒ですよね。
つまり、レベル1の施策は、「今、来店しているお客さんから発生する売上を、最大化させることが最優先」ということ。必要最低限のこととして、早めに対応する必要があります。たとえば、以下のような施策です。
- モール内SEO (本店の場合はGoogle SEOなど)
- 商品ページの改善
- 回遊性の向上
このような施策をきちんと対処することで、お店の滞在時間を伸ばしたり、関連商品を分かりやすく見せたりすることができます。本店の場合も、モール店と同様に、「向こうから来るお客さんを増やしていく、上手に買ってもらう」という意味で、「SEO」対策が必要です。
レベル2:提案施策
次に、レベル1ができている人に向けて、レベル2の話です。
レベル2とは、提案施策です。まだ来店していないお客さんに対して、声を掛けて呼び込む感じですね。
モール店の場合は、レベル1をきちんとやっておけば、売上が伸びやすいのですが、さらに伸ばしていくためには、レベル2の提案施策が必要です。たとえば、楽天内の典型的な施策には、以下のようなものがあります。
<楽天内の典型的な施策> スーパーセールにあわせて、「セール特集やっています!」という案内を出す 5と0が付く日にあわせて、メルマガを出す
他には、以下のような企画・提案ができますね。
<例1>新商品発売のタイミングで、メルマガを出す 「メルマガ読者限定。今週末まで、新商品のお試し割引キャンペーンをやっています。お早めにどうぞ」
<例2>季節イベントにあわせて、メルマガを出す 「今なら、バレンタイン早割をやっています。お早めにどうぞ。」
本店の方が、モール店と比べると、どうしても検索流入が弱いので、レベル2の提案施策をがんばる必要があります。
レベル3:投資的な集客
レベル3は、投資的な集客のことを指します。例えば、以下のような施策です。
- SNS運用 :インスタグラム、X(旧Twitter)、Facebookなど
- コンテンツマーケティング:ブログ、オウンドメディアなど
つまり、それ自体が販売に直結するわけではありませんが、投資的に、間接的な効果を狙って集客していく手法です。大きなお店はここまで取り組んでいますが、これまで挙げたレベル3つの中で、優先順位は最後になります。
レベル1とレベル2がきちんとできていて、余力があれば、レベル3にトライしてみましょう。
モール店と本店では、販促の得意分野が変わる
レベル1・2・3の販促のレベル感を踏まえて、モール店と本店、それぞれが力を入れるべきところや得意分野について、ご説明します。
モール店の人は「レベル1:待ち受け販売」が上達しやすい
モール店の場合は、売上アップ施策のうち、レベル1の影響力が大きく、「待ち受け販売」の施策をうまくやっていくことで、売上が伸びやすくなります。
モール店のスタッフにとってはレベル1が重要なので、対策していくうちに必然的にレベル1の施策が上達していきます。
レベル1の施策:モール内SEO・商品ページの改善・回遊性の向上
本店の人は、「レベル2:提案施策」が上達しやすい
本店の場合は、レベル1だけでは不足で、レベル2の提案施策を上手にやらないと、なかなか売上アップにつながりません。
そこで、本店のスタッフは、CRMをうまく対策していく必要があります。CRMとは、「メルマガなどで、既存客にご愛顧感謝クーポンを配布する」といった施策のことです。これをやっていくうちに、本店のスタッフはCRMが上達していきます。
レベル2の施策:CRM(メルマガ、既存顧客へのクーポン配布など)
お互いの得意を生かして、販促を補い合うことができる
つまり、モール店の担当者と本店の担当者では、得意分野が変わってくるということ。
もちろん、モール店においてもメルマガは大事だし、長期顧客にクーポンを配布する施策も効果的です。ただ、モール店の担当者は「モール内SEO」・「回遊性改善」・「セールイベントに乗っかる」などの対応に時間を使い切ってしまうので、他の新しい施策を実施する余裕がありません。
一方、本店の担当者は、どちらかというと、CRMに力を入れているので、モール店が徹底して行っている「回遊性改善」は、あまり得意ではなかったりします。
このような状況を踏まえ、お互いの得意分野を生かして、うまく情報交換することができれば、どうでしょうか?
本店担当者 → モール担当者 「本店でこういう企画をやっているから、モール店でもどうぞ」
モール担当者 → 本店担当者 「回遊性改善は、こんな風にやっています」
それぞれが実施している施策を取り入れたり、学んだりすることで、モール店と本店で助け合うことができます。
まとめ
今回は、モール店と本店の違いについてお話ししました。最後に、要点をおさらいします。
- モール店は「帆船」、本店は「汽船」
- 売上アップ施策には、レベル1「待ち受け販売」・レベル2「提案施策」・レベル3「投資的な集客」がある
- モール店の担当者はレベル1が得意、本店の担当者はレベル2が得意。お互いの得意分野を生かして助け合える
もし、モールと本店の両方をひとりで担当している場合は、「両方やらなければならない大変さ」を感じると思います。
ひとりで幅広く対応している方は、メンバーを増員したり、フリーランス型の在宅スタッフと契約して、「モールの基本施策を一緒に実行する、実行を代行してもらう」などの方法で、業務の効率化も実現できます。ぜひ、ご参考にしてみて下さい。
P.S.
ネットショップの売上を上げるためには、まず、お客さんにベストな案内ができるように基本を抑えておくことが大事です。さらに、運営形態や状況によって、販促アプローチを変えていく必要も出てきます。
しかし、モール店や本店、複数運営されている方は、力が分散しがちで、意外と基本的なことが疎かになってしまったり、一辺倒なやり方で、本当に効果的な施策に結びついていないことが多々あります。
弊社のコンサルティングは、店舗に合った売上アップ施策のご提案だけでなく、業務の整理やフリーランスの活用支援、便利な効率化ツールなど、幅広いお悩みに対応しています。ご興味がある方は、以下からお声かけください。
この記事を書いた人
- 槐と書いて「えんじ」。埼玉出身。10年以上EC業界に在籍し、アパレル/美容雑貨/ベビー用品など様々なジャンルを経験。某モールで講師も担当。店の個性を活かした支援、人が育つ環境づくりに興味を持ち、コマースデザインに入社した。中小ECの可能性を信じている。カメラ好きでcanon60D愛用中。スパイスカレーに目がない。