近年、大雨や台風、地震などの災害が相次いでいますよね。
ネットショップは地元だけでなく全国を対象とする商売ですから、ご自身が被災しなくても、お客さんやビジネスパートナー、配送業者に被害がでる可能性もあります。当然そうなれば、営業にも影響が出る懸念があります。
実際、弊社の支援先の企業でも、災害時にこんなことが起きて困ったそうです。
- 社内フローを整えておらず混乱した…。事前に「有事の動き方」を決めておけばよかった
- 災害で遠方に商品が送りにくくなった…。全国配送に対応した倉庫を配置しておけばよかった
災害は、いつどこで発生するか分かりません。いざという時、パニックにならずにお店の運営を継続できるよう、日頃から備えておきたいところです。
そこで、いつ災害が起きてもスムーズに対応ができるよう、「日頃から備えておきたいポイント」をご紹介します。いざという時のために、何をどう準備しておいたらいいのか。「できること・できないこと」はあると思いますが、平時に予め備えておくことは大切です。この記事を1つの手引きとしてご活用ください。
はじめに
「防災なんて面倒」という方へ
まずはじめに、どうして防災の準備をしておくべきかについて、お話します。
近年、地球温暖化の影響もあり、日本各地で大雨や台風などの災害が増加していますよね。
特に春~夏場にかけては、これまで考えられなかったような量の雨が降るようになり、大きな河川が氾濫、町が水没するなど、心痛むニュースが相次いでいます。秋は台風、冬は大雪、地震はいつ来るかわかりません。「天災は忘れたころにやってくる」という言葉通り、もはや、いつどこでどんな災害にあうか、わからない状態です。
この災害問題、EC事業者には、大きな懸念でもあります。なぜかというと、ネットショップはお客さんが全国にいて、しかも自社の力だけでは完結しない仕事だからです(モール担当や配送業者など、色々なパートナー企業と連携して仕事が回っていますよね)。つまり、自分が被災しなくても、仕事の影響を受けやすく、対応が必要な部分がたくさん出てくるということです。
事実、大規模な災害時には、モール別の対応から物流、働き方まで、状況は刻々と変わっていきます。災害発生下で、この状況に冷静に対応していくのは、なかなか大変です。
いつどこで起こるかわからない災害に、EC事業者はどう備えるべきか。このご時世、売上や検索順位のことだけでなく、防災についても、一度しっかり考えておきたいところです。
でも、いちから自分で調べて準備するのは大変ですよね。そこで、この記事の出番です。
お店を守るために何にどう備えたらよいのか、準備を進める手引きとしてもらえればと思います。
まずは「どのくらい備えられているか」をチェック
あなたのお店が、「どれだけ自然災害に備えられているか」をセルフチェックしてみましょう。
以下、8個の質問に「YES or NO」で回答してみてください。
No | チェック項目 | チェック |
---|---|---|
1 | 災害時に、直ちにサイトやメルマガで案内文を出せるよう、テンプレートを準備している | |
2 | 関係者(社員/スタッフ/取引先/生産者など)との連絡方法を複数用意している(電話・メール以外でも連絡が取れる) | |
3 | 物流を外部委託している・外部委託の検討をしている | |
4 | 受注や問い合わせにもリモートで対応できるよう、体制を整えている | |
5 | 地震や洪水に備えて、在庫や機材の保管方法を考えている(※自社倉庫の場合) | |
6 | データや書類のバックアップを、定期的に取る仕組みがある | |
7 | いざというときの情報収集経路(被害情報/物流情報/行政・省庁の支援申請手順など)をまとめている | |
8 | 定期的に避難訓練を実施している |
「Yes」の数が多いほど、災害への備えがしっかりできています。
また準備不足を感じた方も、大丈夫です。以下に詳しい対策をご紹介しますので、一つづつ進めていきましょう。
「緊急連絡」の仕組みを準備しておく
お客さん向けの連絡テンプレ文面を用意する
大きな災害があると、在庫に被害が出たり、物流やシステムが動かなくなったりして、通常通りの営業ができなくなることがあります。当然、ご希望の日時に商品をお届けできないので、お客さんにも迷惑をかけてしまいますよね。
ですから、大きな災害時には、お客さんに対して、お店からメルマガやSNS、サイト内告知などを通じて、お店の営業状況やサービス内容変更について案内をする必要があります。
被害が出てから案内文を作っていてはとても間に合いませんので、事前にテンプレート文章を用意しておくといいでしょう。
スタッフやパートナーの連絡網を用意する
お客さんだけでなく、社内のスタッフや、外部のビジネスパートナーとの連絡方法を確保しておくことも大切です。
電話番号やメールアドレスだけでなく、SNSアカウントやチャットツールのIDなども交換しておき、複数の連絡手段を持っておくようにしましょう。
実際に、2011年の東日本大震災の時には、「電話やメールが不通になり、X(旧Twitter)で連絡を取った」というケースが多くありました。一般に連絡網というと、電話とメールだけで安心しがちですが、それだけでは足りない可能性があります。
現在は、X(旧Twitter)以外にもLINEやFacebookなどのSNSや、ChatworkやSlackのようなチャットツールも気軽に導入できるようになっています。予備の連絡手段で、社員やパートナー企業とつながっておけると安心でしょう。
「リモート体制」を確保しておく
コロナで一気に広まったリモートワーク(テレワーク)は、防災対策としても効果的です。
仮に会社のオフィスが被災しても、別の場所から営業を続けられるのは、大きなメリットといえるでしょう。
もちろん、ネットショップには梱包・出荷業務があるので、カンタンに切り替えとはいきません。ですが、うまく外注のパートナーなどと実現できれば、オフィス以外の場所でも、ネットショップの業務を回せるようになります。防災の一環として検討してみてもいいかもしれません。
以下の記事では、ネットショップがリモート体制にシフトする上で、大きな壁になりがちな2つの問題について、対策を紹介しています。参考になさってください。
物流の外部委託を検討する
ネットショップをリモート化する上で、一番の壁になるのが「物流」です。
ページ制作などパソコンで業務を進められる仕事は、比較的リモート移行しやすいですが、実際に商品を梱包して出荷する倉庫周りのバックヤード仕事はそう簡単にはいきませんよね。
そこで検討したいのが、物流の外部委託です。
昔は高額でハードルが高い印象がありましたが、最近は大手モールが相次いで独自に物流網を用意するなど競争が激化してきていることもあって、中小企業でも使いやすくなってきています。(AmazonのFBAなどを利用している方も多いかと思います)
うまく取り入れれば、大きな備えになるかもしれません。
受注や問い合わせ対応の切り出しを検討する
セキュリティの問題などから、オフィス以外の場所でやる事に抵抗のある「受注」や「問い合わせ対応」も、仕組みさえ整えればローコストでリモート化が可能です。
先述した物流の外部委託と合わせて、受注や問い合わせの切り出し対応も進めることができると、ネットショップのリモートワーク化もかなり現実的になります。業務のマニュアル化までできていれば、完璧です。
以下のコラムを参照して検討してみましょう。
商品・機材・データを保護しておく
自社内で商品在庫や貴重なデータ類を保管している場合は、地震や洪水で損害を受けないよう、保管の仕方を見直しておくといいでしょう。
商品や機材の置き場所・保管方法を考える
例えば、
- 落下すると破損してしまうような商品は、なるべく高いところには置かない
- 浸水する場所に商品や機器は置かない。置くとしても、床から離した場所に置く(近くに川や海がある場合)
- 棚に「天井突っ張り棒」をつけて固定する、棚を壁に固定する、棚の下にクッションシートを敷く
などの対策をするだけでも、大地震時の在庫や機材の破損対策になります。
本当にちょっとしたことですが、この心がけひとつで、破損やロスから商品を守れる可能性が高まります。オフィスの防災対策としても、しっかり進めておきたい部分ですので、ご自身の在庫管理状況を見直して何かできることがないかを考えてみましょう。
※ただし、災害対策を優先すると、在庫ピッキングの効率が落ちる可能性もあります。(よく出る商品が取りづらい場所に移動してしまったりなど)うまくバランスを取るようにしてください。
データ類のバックアップを定期的に取っておく
紛失したら困るような書類やデータは、日頃からバックアップを取っておくようにしましょう。
- 紙でしか保管されていない重要書類
- 特定のPCにしか保管されていないデータ
こういったものがある場合は、安全なPCやクラウドなどにバックアップを取っておくと、いざというときに安心です。
週に一度、月に一度など定期的にバックアップする仕組みを作っておきましょう。
情報収集先を確保しておく
情報収集用のブックマーク集を作っておく
大規模な災害が起きた際は、まずは情報収集が大切になります。
どこで何が起きているのかがわからないと、お客さんはもちろん、委託先などへの連絡を正しく進めることができないからです。
そこで、「いざというときの情報収集先」を、あらかじめPCとスマホのブラウザにブックマーク登録をしておきましょう。こうすれば、有事の際にもサクサク情報収集を進められ、対応もスムーズになります。
以下、代表的なリンクをまとめてご紹介します。参考にしてみてください。
災害の被害範囲を確認する
また、各自治体のホームページを確認しましょう。
物流・交通の影響を確認する
練習して慣れておく
防災訓練をしておく
いくら準備しておいても、具体的な対応手順が頭の中に入っていなければ、スムーズに動くことができません。一通り準備が済んだら、繰り返し防災訓練をして、練習しておくといいでしょう。
実際に災害が起きた時のことを想定して、
- 連絡網を使って、やり取りをしてみる
- スムーズにサイトやメルマガ案内用のテンプレを取り出せるか・発信できるか、確認しておく
- 試しにリモートワークを実行してみる
- データのバックアップを取っておく
など、日頃から慣れておくと、いざという時もスムーズに対応できるはずです。
年に1~2度など、定期的に実施しておくと安心です。
尚、被害が大きい・店長が負傷したなどの理由で、お店を休業せざるを得ない時もあるかと思います。臨時休業の対応方法については、こちらの記事にまとめています。ご参考にしてください。
おわりに
自然災害は、いつどこで発生するかはわかりません。
そして、EC事業者は災害の影響を受ける可能性が高く、いざ起こってから準備し始めるのでは遅いかもしれません。
備えあれば憂いなし。いざという時にお店を守るためにも、事前にできる備えをしっかり進めておきましょう。
この記事を書いた人
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コマースデザインは、EC事業のコンサルティング会社として、ECのお役立ちツールやECコンサルティングを提供しています。全サービスの累計支援先企業は23,000社を突破しました。「色々な個性を持ったお店が数多くあり、お客さんに豊かな選択肢があるEC業界」を目指し、中小ネットショップ事業者の皆様の「強み」を引き出す支援を行っています。
詳しくは、コマースデザインについてをご覧ください。
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