こんにちは、コンサルタントの亀田です。
今回のテーマは、「セールイベント」との付き合い方について。
私たちはECコンサルタントという職業柄、クライアントさんから「モールのセールイベントって、参加した方がいいんですか?」という相談を受けることがあります。
この問いに対する回答としては、一律に同じ答えがあるものではなく、ケースバイケースで検討する必要があります。そこで今回は、みなさんがセールイベントに参加するかどうか、判断する際のヒントをお伝えします。
はじめに
今回の話の順序と展開について、説明します。
- 1.セールイベントは何のため?セールの目的を確認しよう
- まず、「セールは何のためにやるのか?」という目的を確認することが大切。
- 「なんとなくみんながやってるから」と流されてセールを行うのはNGです。
- 最初に、自分にとって「セールの目的は何なのか?」をきちんと考えましょう。
- 2.セールの怖い副作用とは?配慮すべき顧客心理「損失回避バイアス」
- セールイベントを見た際の「お客さんの反応」について考えましょう。
- お客さんはセールを見て「安い!嬉しい!」と浮かれるだけではありません。「通常価格で買うのがバカみたい…」という感覚になることも。
- 店としては損をさせていなくても、「損した」と感じるお客さん心理の対策をきちんと考えましょう。
- 3.セールの賢い活用方法とは?
- 上記を踏まえた上で、「OKなセールのパターン」を紹介します。
- また、「セールを効果的に活用するためのヒント」をお伝えします。
セールイベントは何のため?セールの目的を確認しよう
では、そもそも「セールは何のためにやるのか」について、考えてみましょう。
みなさんも心当たりがあると思いますが、【セール】【安売り】【〇〇が安い!】【〇%OFF】などのキーワードがメルマガの件名にあると、明らかにメールの開封率が高くなりますよね。
つまり、セールをアピールすることで、メルマガの配信効果が上がります。
これは、LINEでもSNSでも同じことで、セールイベントを行うことでお客さんの反応がよくなり、購買意欲が高まることで売上が伸びるという現象があります。
セールの効果について分析してみよう
整理すると、セールには以下のような効果があります。
セールの効果 |
- 多くの人が自店舗に訪問してくれ、アクセス数が増加する
- マインドシェア(※)が上がる ※ユーザーの心の中で、自社が占める割合
- お店のことを覚えてくれやすくなる
- 一時的にメルマガ、LINE、SNSなどの反応がよくなる
- 購買意欲が高まり、売上が伸びる
特に、楽天市場のスーパーセールはお客さんがみんな動くので、モール全体の景気がよくなります。スーパーセールにそれほど参加してないお店でも、イベント期間中は売上が伸びるという波及効果もありますよね。
セール期間はお客さんの注意をひけるチャンス。「このお店のメルマガはお得情報が時々来るみたいだから、ちゃんと読まないと!」と思ってもらえるのであれば、有意義なことだと思います。
お客さんの記憶に残る「コミュニケーション手段」
しかし、セールイベント以外にも同じような効果を実現する方法、お客さんのマインドシェアを上げる方法はいろいろあります。
まずは、「セールを何のためにやるのか?」をきちんと認識することが大事です。
広い視野で見れば、セールを行うのは、安く売るためでもなく、売上を作るためでもありません。
「お客さんを自分のお店に引っ張ってくる」とか「少しでもお店を覚えてもらう」など、お客さんの記憶に残るためのコミュニケーション手段として、セールというものがあるのではないかと、私は考えています。
そう考えると、セールに限らず、色々なイベントを通じて同様の効果を図れるのではないでしょうか。
セールの怖い副作用とは?配慮すべき顧客心理「損失回避バイアス」
セールには一定の効果はあるものの、副作用があります。
セールイベントを開催する際には、お客さんの心理状態「損失回避バイアス」に配慮する必要があります。
「得する」よりも「損したくない」のが、お客さんの自然な心情
お客さんは、「得する」よりも「損したくない」という気持ちが強いものです。
「これはお得だよ」と言ってもあまり反応しませんが、呼びかけるメッセージを変えて、「あなた、このままだと損しますよ」と言うと、すごく強く反応します。
これが「損失回避バイアス」です。現状を守るために、損失や危険を避けるのは人間の本能であり、「得」より「損」に反応するのは人間の心理的特徴です。
だから、最初は「安くてラッキー!」と思っていたお客さんも、だんだん冷静になると「通常価格で買うのが馬鹿みたい。損だ!悔しいー!」という感情に変化してしまうわけです。
レビューに「通常価格で買った後に、セールで値下げしていて嫌だった」という不満が書かれてしまう理由が分かりますよね。
リピート商品の安易な値下げは、思わぬ悪影響を及ぼすことも….
お客さんの心理的傾向を踏まえた上で、注意すべきはリピート商品でしょう。
例えば、、石鹸、シャンプー、食べもの、お茶などの商品です。ちょうどお客さんがリピート購入しそうなタイミングで、3ヶ月に一回、楽天スーパーセールがあるわけですよね。
「スーパーセールで半額!」となっていると、確かにその期間はよく売れます。
しかし、「また次のスーパーセールにあわせて買おう」という風に、お客さんはスーパーセールにあわせてリピート購入するようになります。つまり、セール以外の期間は買ってくれない、通常価格では売れなくなることになります。
お店側がそれでよければいいんですが、そうなると「3ヶ月に1回、セールの時だけ売れる」状態が通常運転になってしまいますよね。リピート商品のセールが常態化すると、お客さんがパターンを覚えてしまい、もう定価では買ってくれなくなる可能性があるので、要注意です。こうしたセールの副作用があることを覚えておきましょう。
尚、セール以外でも売れるための方法を、こちらの記事で紹介しています。「セールを繰り返してもリピーターが増えない」とお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
定番品のセールも要注意。セールの時しか売れなくなる恐れあり
また、定番品も、あまりセールの対象にしない方がいいでしょう。スーパーセールは、良くも悪くも定期的に開催されますよね。
定番品をセールする時は、以下のようにセールをする理由を添えて値引きすると、「今だけ」の特別価格ということがわかります。
「今回たまたま商品を仕入れ過ぎてしまったため、〇/〇までセールを行っています。なお、次回の予定はありません」
「〜という事情があり、今回だけいつもよりたくさん売りたいので、常連さんとメルマガ読者限定でお安く提供します」
しかし、こういった対策を特に打たないまま、スーパーセールに合わせて定番品を値下げしてしまうと、お客さんに「そのうち、またお得な価格で販売されるんだろう」と思われてしまう恐れがあります。リピート商材ではない場合は、そこまで致命的な問題にならないとは思います。
しかし、たとえば、Amazonのイベントでは「iPadが安い」などの案内がよく出ていますよね。ああいった宣伝を頻繁に目にしていると、「セールの時に買おう!」と心に決めてしまうのは私だけでしょうか….。
セールの賢い活用法とは?
ここまで、「定期的にセールをしているお店と思われたり、覚えられたりするのは、あまりよくない」という話をしてきました。裏を返せば、「定期的ではない(定期的と思わせない)セールを実施する」のは悪くないと思います。
ただし、楽天のスーパーセールのように定期的に開催されるイベントが存在する場合、状況は異なります。この場合、「普段お客さんがなかなか買わない商品が安い」のであれば、お客さんへの見え方や反応は違ってきます。
セール品を「呼び水」にして、通常商品を売る
たとえば、在庫がたくさん余っている商品や処分品のセールについて、考えてみましょう。
仮に、これらは定番商品ではないため、半額で売ってもいい商品だとします。
半額のセール商品を「見せ玉」としてお客さんにアピールして引き付けた後に、「当店はこの商品以外にも、色々なセール商品があります」と、セール特集ページに誘導します。
この特集ページには通常価格の商品も並んでいるため、セール目当てで来たお客さんは、セール品だけでなく、これらの通常価格のラインナップも目にすることになります。
すると、通常価格であっても、お客さんは「そういえばこの商品は必要だったな。通常価格だけど、ついでに買っておこう!」と思い出して、「通常価格でそれほど安くない商品」を購入することが十分にあり得ます。
このように、見せ玉を活用し、セール商品と通常商品を組み合わせた特集ページに誘導する販売戦略は効果的です。セールで集客し、通常価格の商品の購入率も高めることで、客単価アップや売上アップにつながります。
セール品はあくまで「呼び水」でOK
分かりやすい具体例をひとつ挙げましょう。
店舗のセール対応 |
- 「最大90%OFF!」と銘打ち、90%OFFの商品が1つある特集ページを作る。
- メルマガや店舗内からの導線で、特集ページにお客さんを誘導する。
お客さんの動き |
セールの告知につられて特集ページを見にきたものの、90%OFFの目玉商品が早々に売り切れてしまったり、実はあまり必要性を感じなかったりして、結局セール品を購入しない。
↓
お店の中をグルグル回っているうちに、特集ページにある通常価格の商品を見つける。 「セールにはなってないけど、必要だから....」と思い出して、お得にはなっていないが通常価格の商品を買う。
このような購入の動きが実際にあったりするんですよね。
ですから、セール品は、あくまでも呼び水でいいと思います。
セール品で集客して、セール品を売るのではなく、セール品を呼び水にして、通常商品を売る。
そう考えると、派手な値下げ幅であるならば、呼び水としてはどんな商品でもよいのではないかと思います。
まとめ
今回の話をまとめます。
- セールの目的
- セールをするのは、お客さんの反応をよくするため。
- お店のことを覚えてもらうためのコミュニケーション手段として、上手にセールを使うことができれば、自店に有意義に活用することができる。
- セールの副作用
- しかし、セールには思わぬ副作用が起こる場合がある。
- そのトリガーが、お客さんの「損を避けたい」という心理。「セールがお客さんの目にどう映るか」を理解していなければ、お店が定期的に売りたいリピート商品や定番商品が、思うように売れなくなるリスクがある。
- セールの活用方法
- モールイベント系の場合、余っている商品や見せ玉を集客のフックとして使い、お客さんに特集ページの中をグルグル回ってもらい、セールしていない「通常商品」を買ってもらう。
- 定番品も含めてセールする場合は、必ず断りを入れて「いまだけよ」感を演出する。今回の値下げがイレギュラーであることを強調すること。
いくつかセール活用策をお伝えしましたが、大事なことは「スーパーセールなど定期イベントの度に、毎回値下げするよ」という空気感を出さないこと。これだけでも、お店にとって有益なのではないかと思います。
最後に、話の締めくくりとして一言。
「セールとは、用法・用量を守って正しくお付き合いください。」
セールに振り回されたり、セール依存になったりしないよう、上手に活用しましょう。
P.S.
定番商品や看板商品の売上が伸び悩むと、状況を打開したいあまり、モールイベントの力を借りたくなる気持ちはとてもよく分かります。しかし、どんな集客力のあるイベントも、お客さんの心理や行動を理解しないままでは、自店に有効に役立てることは難しいでしょう。
私たちはお店が目指す方向性や事業の現状を分析した上で、いま必要な施策をご提案し、ともに並走します。ご興味のある方はお気軽にご相談ください。
この記事を書いた人
- 大手印刷会社にて人事を経た後、営業として、店頭を中心とした様々な企業の販促支援に従事し、紙から鉄まで多様な企画・制作に携わる。色数や印刷方法など、「成果物の完成度」にズレがちなクライアントの要望をそもそもの目的に合わせ整理し直すなど、「成果とコストの見合った効果的な提案」を得意とする。趣味はサッカー(ポジションはGK)、二児の父。