こんにちは、川村トモエです。
今回は、当社のコンサルティングを利用されている、株式会社一粒万倍(静岡県三島市)の國末さんにお話を伺いました。
モールでの値引きや広告費用の増大によって利益が出ず、行き詰まっていた際、弊社にコンサルティングを依頼された國末さん。先代からの代替わりの時期でもあり、コンサルティングを受ける中で、事業の真価や方向性について見通すことができたとのこと。
コンサルを経て事業の方向性が定まったところで、なんと主軸だったモールでのセールや広告を一切ストップ。当初は周囲の戸惑いもある中、すぐに利益をV字回復し、時間を確保できるようになりました。その後、EC担当者に対する育成型コンサルティングでさまざまな施策を展開し、部署連携も進んでいるといいます。
経営層とECの現場双方へのコンサルがきっかけとなり、組織全体がそれぞれに考え動き連携し、利益を上げられるようになってきた同社。わずか2年半という短期間で何が起きたのか?ぜひご参考にしてください。
コンサルティングを申し込んだ経緯
※國末さん、川村、担当コンサルタントの亀田が同席しました。
「ピカイチ野菜くん」を運営する一粒万倍さんのご紹介
※出典:「ピカイチ野菜くん」公式サイト
川村:まずは、【ピカイチ野菜くん】のお店紹介をお願いします。
國末さん:【ピカイチ野菜くん】は、にんじんジュースを中心としたオンラインショップです。もとは地元静岡の野菜の卸業で、ECは先代である父が楽天市場に有機野菜を出品するところから始まりました。
ある時、にんじんが豊作だったため10キロ箱で販売してみたら、あっと言う間に完売で。その理由を探ったら、病気の治療のためジュースにして飲んでいるということを知りました。そこで、りんごやレモンなどジュースに入れる果物を一緒に販売したり、自分で絞れないという方のために、低速搾汁方式(※)で絞ったジュースを販売するようになったんです。
※出典:「ピカイチ野菜くん」公式サイト
※低速搾汁方式:ゆっくり絞り取ることで食材にかかる熱を最小限に抑え、栄養素を極力壊さない絞り方。低速搾汁方式を採用したジューサーをスロージューサーと呼ぶ。
最初の出会いは12年前
國末さん:実は、コマースデザインの坂本さんにお会いしたのは、10年以上前の2012年頃です。当時はまだ工場に依頼してジュースを製造していて、EC協議会の講演でお話を聞かせてもらいました。その後、2017年頃から自分たちでジュースを作るようになったのですが、自社商材の販売ノウハウがなく、しばらく試行錯誤が続きました。
川村:ジューサー機器の販売の方は、2017〜18年くらいがピークだったそうですね。当時はグリーンスムージーのブームがあって、高価な機械が飛ぶように売れたと聞きます。
國末さん:はい、ジューサーやキッチン家電はけっこうブームに周期があるんですよ。そのおかげで当社もかなり利益が出ました。でも、「やはり自社製のジュースをしっかりと事業にしていきたい」と考えていた時、坂本さんにその話をしたら、「具体的に何をすればいいか」がパーッと見通せたんです。
実は別のコンサル会社にも話を聞いたのですが、投資して大量生産と言うばかりで違和感がありました。でも、坂本さんの話はストンッと腹落ちすることが多かったんです。経営者としての視界がクリアになった感がありましたね。
「顧問型」と「育成型」のコンサルティングを依頼
川村:2021年3月に、コンサルティングをお申込みいただきました。コマースデザインにコンサルをご依頼いただいた経緯をお聞かせいただけますか?
國末さん:そうですね、約2年半前になりますか、そんなに経つんですね。まずは「顧問型コンサル」をお願いし、私たちの状況を知っていただくところからスタートしました。
そして、次に「販促担当に自走してもらいたい」と考えて、「育成型コンサル」で具体的な施策をサポートいただくようになりました。
※現在はサービスを改定&統合し、「EC経営コンサルティング」にサービス名称が変更になっております。
コンサルで「広告・セールやり過ぎ状態」から脱出
広告・ポイント・セール企画で「なんだか儲からない」
國末さん:もともとは、楽天で「全品ポイント10倍」などの施策をやって、広告をバンバン打って・・そんな施策を繰り返していたんです。主力の人参ジュースを50%ポイントバックにしたり、あとは全品ポイント10倍の広告。たぶん楽天にその時期って月100万から150万ぐらい払ってたんですよね。
でも、アクセスも売上も取れるけど、利益は出ないし黒字転換しない。ECCに話を聞いても「これはいい数字ですよ」なんて言われる。でも、ROASと照らし合わせて、「うちのお客様には、そういう手法が向かない商品なのではないか」と考えるようになったんです。
川村:既にご自身で仮説というか、思い当たるところがあったんですね。
國末さん:楽天で型番商品を売ることはできても、スーパーセールで値引きされるばかりで、本来のユーザーには届かない。自社工場の生産量が少ないため、利益も上がらない。メーカーとして生きていく覚悟はしていたけれど、どうやっていけばいいのか行き詰まっていました。方向性は決めたけど、どうやってできるのかと。
「価値を伝える」ことに徹して、セールをやめてみた
川村:実際にコンサルティングを受けてみて、どのような成果がありましたか?
國末さん:坂本さんが「商品がプライスレスだから、うまくいきます」とおっしゃったんです。
命に関わるような病気の人でも信じられる品質であることは、他にない価値なのだから、「ほしいのに未だ見つけられていない人」に見つけてもらう方法や、商品の紹介の仕方などを工夫すれば成功する、と。
川村:実は私も身内にゲルソン療法(※)を行っている人がいて、スロージューサーで絞ったにんじんジュースを必要としていたこともあり、そうした方が【ピカイチ野菜くん】のお客様に多いという話を、坂本とした記憶があります。「切実にほしい方がいて、その方に届けたいジュースを作るメーカーになる」という強い意志が生まれた経緯も伺いました。野菜の販売から始まって、お客様に寄り添うごとに事業をとがらせていった、そんな印象を持っています。
國末さん:ありがとうございます。2022年の11月に代表を引き継ぐことになって、きっぱり「セールはやめよう」と決めて、全部やめました。いろいろやってたことをもう全部やめちゃいました。みんなに心配されましたが、すぐにV字回復することができました。
収益は非常に良くなりました。今期も決算ちょうど10月で締めて、今決算書待ちなんですけど、経常利益、非常に良くなりましたし、手応えは感じてます。売上はものすごく落ちちゃったんですけど。大丈夫なのかってぐらい、振り切っちゃったと思うんですけど、「やって良かった」って思います。
何よりセールに追いまくられていたのが、「しっかり考える時間」「やるべきことをやる時間」を確保できるようになったんです。セールセールセールってやってきたのをやめちゃったので、その分時間がすごく空くから、違うことをやるようになりました。お客様が何を望んでるのか。「お客様が喜んでいただけるものをやろう」っていう。
それで荻野をはじめとして、それぞれ自分たちで考えて施策を打てるよう、育成型コンサルの方に注力するようになりました。
※ゲルソン療法
ドイツ人医師のマックス・ゲルソン医学博士が開発した食事療法。体の免疫力を高めるために、無農薬栽培の野菜やジュースの摂取を推奨している。
自分で考えて、方向性を見出していく
國末さん:坂本さんとも話をする中で、「自分で考えさせられる」ことが多かったですね。坂本さんは相談相手にもなってくれるのですが、考えるヒントは出してくれるけど、答えはパッと出さないんですよ。だからこそ、自分で考えて、方向性を見いだしていくという場面がたびたびありました。そこがなにか、安心感がありました。
行き詰まり感があったし、自信を持って方向転換できなかったんですよね。そこを坂本さんには支えてもらったというか、「間違ってないかもしれない」というところからスタートして、どんどん考えを深めるうちに自信を持てるようになりました。
「次のステージ」への進化が始まった
次のテーマとして、「育成型コンサル」を開始
川村:経営者としての視界がクリアになり、セールと広告漬けだった施策を「スパッと切る」という英断を果たされた。最初は心配されていた皆さんも、利益が出て考える時間ができた中で、「自分たちの手で施策を実施していこう」という気概が生まれる。そこで、亀田が登場するわけですね。
國末さん:大きな戦略を立てたところに、ちょうど楽天から話が来て、より具体的な施策を考える段階になったので、坂本さんから亀田さんにバトンタッチいただき、当社からも萩野たちが参加して、育成型コンサルティングを受けるようになりました。
川村:ECのキーパーソンとなっている萩野さんの成長ぶりはいかがでしょうか。育成型コンサルティングを受けられて、なにか変わりましたか?
國末さん:もう、すごく変わったと思いますよ。元々気遣いもできて優しいタイプで、でも心配性で引っ込み思案であるがために、自分の考えを主張するより、人にあわせてしまう傾向があったのですが、今は「率先して自分の考えを形にしよう」とがんばっていますね。
それもやっぱり亀田さんが伴走してくれているおかげだと思うんです。私に相談されても、細かい施策までは相談に乗れない上に、大きな目標の話になってしまう。でも、亀田さんというプロに相談できれば、自分の施策に自信を持って取り組める。楽しそうに仕事をしています。
「どうしたらいい?」から「こうしたい!」へ。担当者の成長が止まらない
國末さん:たとえば、ジューサーのページ制作にあたっても、コマースデザインさんからいただいた資料をバイブル的に使っています。「とにかく早く」と急かされても、「しっかり作らないと後々困る」とか言い返していますし。実際、最近リニューアルした「りんご」の商品ページは、アドバイスを受けて萩野が作ったのですが、売上が良くなっています。売上があがると文句は言えないですからね(笑)。
川村:亀田君から見て、萩野さんの変化はどうですか?かつてEC担当が7人いた所から方針転換し、今は萩野さん1人で担当しているということですが。
亀田:もともと真面目な方で、アドバイスを素直に受け取ってアウトプットされている印象がありました。だから以前は「どうしたらいいですか?」という質問が中心で、どちらかというとインプットに比重を置いたスタンスを取っていたと思います。でも、最近は、「ここをこうしようと思っています」と、まず萩野さん自身の考えや意見などをもって相談にこられるようになられました。
國末さん:それは強く感じますね。以前は「他の人間が引っ張って、それについていく」というタイプだったんです。それが人数が減って、亀田さんという強い味方を相談相手として得て、生き生きと仕事をしていますね。以前は自分が指示するまで待っているという感じだったのが、今は萩野が考えてやっていることに、私が少しばかり口を挟む程度になっています。亀田さんに対するスタンスと同様、すべきことを指示として聞くのではなく、やりたいことを相談する相手になってきているように思います。
川村:成功体験や改善の手応えが得られて自信がつき、「何をやればどうなるか」がわかってきて、「その上を目指そう」という気持ちになってきているご様子ですよね。それができるようになったのも、考える時間ができて、コンサルと向き合う時間を作れたからだと思います。
國末さん:「もうちょっと時間を作ってあげなくては」と思っていますけどね。EC以外の雑務もどうしても頼まれてしまうので。ただそんな時でも、「いつでも亀田さんに相談できる」というのが支えになっているのは間違いないと思います。少し前も、サイトのことではなく業務改善について相談していましたよね。
川村:坂本も亀田も、いろんな引き出しを持っているので、ぜひ活用いただければと思います。ECそのものはもちろんですが、事業を成り立たせていくためご協力できればと思っています。
「組織の成長」も始まって、会社の一体感が向上!
國末さん:組織の作り方についても、いろいろとアドバイスいただき、大変参考になりました。「こうすればうまくいく」というのではなく、さまざまな他社事例を紹介いただき、その要諦を解説してもらえたことで、自分ごとに置き換えて考えられるようになりました。いまも毎日、坂本さんが話されている音声(※)を車やトラクターの中で聞きながら、励まされつつ考えることが習慣になっています。なんか癖ですよね。聞くのが癖。
川村:いいスパイラルが生まれつつあるように感じますが、現在、業務はどのような感じなのですか。
國末さん:考える余裕は生まれたけれど、すっごく忙しくなりましたね(笑)。でも、セールセールの時代にはベルトコンベアみたいに、人の作ったものに乗っけられているという感じでした。それが今は、やりたいことがどんどん増えて、その先も見えてどんどん進みたくなって、結果的に忙しくなっているという。自分たちで高速回転を始めたというところでしょうか。
川村:やみくもに忙しいわけではなくて、その理由や優先順位を考えながら動けているということなんですね。
國末さん:会社全体の連携もよくなって、かなり効率がよくなりました。
※弊社では、コンサル会員の皆様に向け、戦略・業務・組織の考え方や、販促の手法・成功事例などを日々音声で配信しています。
自社メディアを作り、ブランドも強まってきた
國末さん:私が腹をくくれてから本領発揮というか、本来の成果が出てきたように思います。いろいろと施策のヒントをいただきつつ、「当店のお客様が何を望んでいるのか」「お客様に喜んでいただけるものはなにか」を考えるようになりました。
そのアイデアの1つが結実したのが、会報誌や書籍などの自社メディアです。書籍には、長年愛飲されている方の声や、病気の方の闘病記などを掲載し、第一弾を発送しました。まずは50回購入してくださった方の注文時に同梱し、2冊目以降はもう少し範囲を広げて、30回購入いただいた方に配布しようと思っています。
川村:それはステキですね。手に取られた方も製品について知るだけでなく、同じように健康に気を配られる方や、病気を治そうとがんばっている方の姿を知って励みにもなるわけですから。
國末さん:そうなんです。取材した方々にもとても喜ばれて、「知り合いに配りたいから、あと20冊くらいほしい」と要望があり、期せずしてインフルエンサーになってくださっているんです。それは本当に嬉しかったですね。
もう、セール、セールと振り回されていた頃が嘘のようです(笑)。利益率の回復だけでなく、「自分たちが本当にやりたかったこと」に取り組めているのが、スタッフにとってもやりがいになっていると思います。
今後の展望
「本店ファースト」で事業を広げる
川村:今後について、どのように考えていらっしゃますか。
國末さん:今後は、より「本店ファースト」にシフトしていきたいと考えています。セールや広告を辞めても、まだモールの売上に振り回されているのは感じるので、自社での販売を強化していきたいと考えています。そのためにはサイトをもっと便利にしたいし、利用価値を高めていきたいですね。
そしてもう1つ、人参ジュース屋なのでやっぱ「人参ジュースの世界で日本一を目指したい」と思っていて。何をもって日本一とするかの指標として、海外で行われている「味覚審査規定」でもしっかり上位を確保し、日本一高い価格でも販売できるくらいの立ち位置で認められたいと思っています。商品としても、いろんなにんじんジュースを展開していますが、一番自信があるジュースを中心に据えて、あまり種類を増やさないことを考えています。そのためには、栄養価などのエビデンスをしっかりと取って、お客様にも差別化が伝わるようなコンテンツを作っていきたいですね。
新ジャンル「ファスティング領域」も開拓
川村:潔く一本に絞っていくということでしょうか。
國末さん:そうですね。まずはにんじんジュースでしっかりと軸を作ってから、ファスティングというジャンルで製品や商品群を捉えていきたいと考えています。そもそも日本では、「にんじんジュースでファスティング」というジャンル自体がないので、そこを深掘りして商品として選んでもらえるようになりたいですね。ぜひ、その方向性でのブランディングにも力を入れていきたいので、サポートいただけばと思います。
川村:ぜひ、引き続きお手伝いできればと思っております。本日はありがとうございました。
まとめ
先代から事業を引き継ぎ、急速な利益拡大を実現した國末さん。モールでのセールや広告に疲弊されていた時にご相談いただき、当社コンサル坂本との対話の中で、ご自身の中にあった疑問や違和感を明らかにされていかれました。
多くの場合、「答えはご自身の中に」あるもの。それを引き出すことができて、坂本もコンサル冥利に尽きると感じています。
そして、國末さんの大きな決断とともに、現場でも「やらなくてはならない仕事」から「やりたい仕事」へ、全社視点へと意識が変わっていったことは大きな変化ですね。特にECサイト運営を一人で担うことになった萩野さんのプレッシャーは大きなものだったと思います。その中で、國末さん、そして当社コンサルの亀田という、事業とECのプロに支援を受けながら、確実な成長を果たされました。
商品の本来の価値に気づき、それを届けたいお客様に届ける。そのシンプルな思いをカタチにするために、今後も引き続きサポートさせて頂ければと思います。
このように、コマースデザインでは、新たな領域への挑戦も含め、ECサイトだけでなく、EC事業や組織などに関するご相談もお受けしています。「色々手を尽くしているが、行き詰まりを感じている」「自店舗の方向性はこれでいいのだろうか…?」など、お悩みの方はお気軽にご相談ください。
この記事を書いた人
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コマースデザイン株式会社 取締役 コピーライター/コンサルタント
ライターからEC業界に転身。商品コンセプト立案やキャッチコピーなど「売れないオリジナル商品」の立て直しを得意とし、ヒット商品を多数企画。中小規模の店に対してわかりやすいコンサルティングを提供しつつ、講演や寄稿も行う。黄色本・マンガ本の著者でもある。
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