こんにちは、コンサルタントの石黒です。
「〇〇円売らないと採算があわない……」
「どうしてもこれ以上の売上がほしい……」
と、「売上を上げること」ばかりに、こだわってはいませんか?
その結果、EC運営がつらい、仕事が面白くない…という状況に陥っている方は少なくありません。
でも、売上を伸ばさなくても、問題を解決する方法があるとしたらどうでしょう。
そのために着目すべきなのは、ずばり「利益率」です。
この記事では、利益率を高めるためのヒントについて紹介していきます。
ぜひ参考にして取り組んでみてくださいね。
売上だけにこだわり、EC運営が苦行になっていませんか?
ECの重要な成功指標である、売上。売れれば売れるほど高揚感もあり、売上が上がるのは嬉しいものですよね。
みなさん売上を増やすために、「いかにお客様を集めるか」「いかに購入率を高めるか」、そして「いかに客単価を上げて」「いかにリピート率を上げるか」を必死に考えて工夫しています。
しかし、「どうしても、今月は◯◯円売らなきゃならないんです!」と売上を上げることだけに囚われるようになってくると、なにやら悲壮感が漂ってきます。確かに売上が上がらず、経費ばかりかかるようでは事業は赤字となり、お店はつぶれてしまいます。「〇〇円は売らないと!」と躍起になるのは当然のことかもしれません。
売上は水物。「利益率」に着目しよう
売上を伸ばすための方法論は、いろんな本にも書かれているように、お客さんを集め、購買率を高め、客単価を上げて、リピート促進し、生涯獲得価値(ライフタイムバリュー)を上げる…というのが定石です。もちろん、こうした方法論はわかりやすく、ECを始めた頃はここから学ぶ人が多いためか、いつしか「売上を上げること」ばかりを考えてしまいがちです。
とはいえ、売上は水物。お客さんにアピールしても成功するかどうかは相手次第で、「努力した分だけリターンが絶対にある」とは言えないのが、売上アップ施策の辛いところです。
それならば、「売上を伸ばさずとも問題を解決できる」といったらどうでしょう。そして、その答えこそ、当たり前のようですが「利益率に着目すること」なのです。そのヒントとなる5つの施策例を紹介しましょう。
「利益率」をアップするための5つの方法をご紹介
1:目立たず利益に貢献する「シンデレラ商品」を見つける
「売上を上げなくては!」と躍起になっている店の多くでは、「売れ筋商品の利益率が低いために、大量に売る必要がある」ということが起きています。裏を返せば、「利益の出ない商品ばかり大量に売っている」ということであり、当然ながら「利益が出る商品を売ること」に注力したほうが利益率は上がります。
商品ごとの限界利益率(売上高から変動費を引いた利益の割合)と販売個数を掛け算すると、その商品のグロス利益が出ます。これを並べ替えると、実際に利益を出しているのは、売上ランキングの上位商品ではなく、20〜40位ぐらいの商品であることが多いのです。
お店の人はもちろん、店長や社長も存在を重視しておらず、何の手間もかけず、愛情を注がなくても、けなげに利益に貢献している商品。しかも、何もしなくても年々売上が伸びていることすらあります。そのような灰を被っているように目立たない商品、注目されていないけど磨けば光る商品のことを、コマースデザインでは「シンデレラ商品」と呼んでいます。
そして、「シンデレラ商品」を見つけるには、漠然と捉えるのではなく、エクセルなどのツールやシステムを使って商品ごとの限界利益率を出し、しっかりと利益管理を行うことが必要です。こうした「シンデレラ商品」を発見し、実際に利益が出ている商品としてテコ入れしてみると、「これだけを売り上げないと採算があわない」と考えていた額よりも、ずっと低い売上額で採算がとれる可能性があります。
2:値上げしても影響のない商品を見極め、値上げする
「利益率」を上げるために、一番簡単なのが「価格」の調整です。商品の「販売価格」を上げる、もしくは交渉して「仕入れ価格」を下げると、確実に利益率が上がります。とりわけ「値上げ」は利益率を上げるのに有望な施策であり、実際成功例も数多くあります。ただし一方で、値上げすると売れなくなってしまうなど、失敗することもあるので注意が必要です。
まず、値上げに失敗しやすい商品は、皮肉なことに「放っておいても売れる商品」であることが多いです。たとえば、検索でお客さんが勝手に見つけてくれる型番商品や有名ブランド商品は、「安さ」が魅力となって売れていることが多く、値上げすると途端に売れなくなることがあります。
反対にブランドでもなく知名度は低いけれど、お客様がいろいろと探し回った後に出会い、「これが丁度いい」と気に入って購入される商品は、値上げしてもほとんど影響なく売れ続けます。特に、他に取り扱いのない無名ブランドやオリジナルブランドを中心とした商品を販売しているECショップの場合、値上げに成功することが多いです。実際、多くの店舗の方から「値上げしても拍子抜けするぐらい売上は変わりませんでした」という話を何度も聞きました。
当然ながら、ちょっとした値上げでも利益は相当上がります。「売上は調子良くても赤字だったのは、赤字商品が含まれていたからでしょうか」というクライアントさんに、「じゃあ、値上げしましょう」と値上げを勧めたところ、次の年は利益が爆上がりでびっくり!ということがありました。
「どんなことをしてでも売上を上げなくてはならない」というモードの人ほど、冷静になって「利益率を上げる」という視点を持つと、意外と「躍起になって売上を上げる」以外の「別の道」が見つかることが多いのです。
3:競争に巻き込まれにくい「ニッチな市場」で存在感を高める
「シンデレラ商品」「商品の値上げ」に続き、さらに「利益率アップ」のための効果的な方策・考え方を紹介しましょう。
まず、「ニッチな価格帯」を意識することです。仕入れ型もメーカー寄りECも「ニッチ市場」の方が利益が出ます。
とある有名店舗の担当者の話です。「日本酒セット2本で3千円」という企画商品を売り出したところ、みんながマネして価格競争になってきました。「競争は嫌だな」とワンランク上の日本酒セットを5千円で売り出したら、競争が減ってよく売れるようになったそうです。
確かに3千円はボリュームゾーンであるためによく売れ、市場も大きいのですが、5千円というやや高めの価格帯の方がライバルが少ないため、自店のシェアが上がったというわけです。
この現象は価格帯だけでなく、「商品ジャンル」でも起きています。
例えば、ケーキというジャンルで、小麦粉の普通のケーキを販売しているだけでは、激しい競争にさらされます。しかし、「小麦アレルギーのお子様向けの米粉ケーキ」となれば、市場規模は圧倒的に小さいものの、ライバルも圧倒的に少ないために、競争に巻き込まれにくく利益率も上げやすいと考えられます。実際、商品開発に携わる人の多くは、小さい市場でライバルが少なく、「絶妙にいけそうな市場」を狙っています。なかなか見極めも難しいところかもしれませんが、チャレンジしてみる価値はあるでしょう。
4:ライバルの在庫に着目し、販売のタイミングをみる
そして、「ライバルの在庫」に着目しましょう。これは、主に型番などがはっきりわかる仕入れ型のお店に有効です。
ある店長さんは、仕入れ商品のメーカー在庫量を把握しておき、「この感じだと、いつぐらいにあの店やこの店は欠品するだろうな。彼らが安売りで売り始めても、時間が経てば欠品するから、そのタイミングでうちで定価で販売しよう」というように、ライバルの在庫量まで予測しながら販売計画を立てるそうです。
これは、人気商品についてはもちろん、季節ギフト商戦などにも有効でしょう。「ライバルが玉切れになるのは、いつぐらいか」と予測しながら観察し、タイミングを見て販売するわけです。ちょっと上級編かもしれませんが、小さい市場であればできなくはないと思われます。
5:大手が重視していない商品を丁寧に販売する
仕入れ型のお店向けに、もう1つ紹介します。それは、「大手が重視していない商品をあえて扱う」ことです。
たとえば、掃除機の有名ブランドで人気の「ダイソン」は、大手ECでもちゃんと在庫を持っています。しかし、「マキタ」という国産ブランドは、とても優れた商品で人気もあるのですが、なぜか大手ECではあまり重視されておらず、在庫もダイソンほど確保されていません。すると、中小のECにも販売のチャンスがあるわけです。
同じように、局地的な有名ブランドでありながらも、大手がちゃんと扱わずに欠品しそうな商品を狙って仕入れ・販売することで、大手と張り合わずに商売することができます。
大手が重視しない商品でも、中小にとっては立派なヒット商品になる可能性がある。そうした商品を見出して、しっかりと在庫を確保し、丁寧に販売していくことが利益率アップにもつながります。
おわりに
売上を増やす以外でも、利益率を高めることで問題が解決することは往々にしてあるものです。
「◯◯円以上売らなくては採算があわない!」と熱くなっている方ほど、利益率アップとして他にやれることがないか、考えてみてください。案外すんなりとうまくいくものがあるかもしれませんよ。
P.S.コマースデザインでは、このように売上アップだけでなく、利益率の改善に関するご支援も行っています。
人件費・原材料費・送料etcとあらゆるものが値上げして、大変なご状況の方も多いかと思います。お客さんの財布の紐も堅くなっていますし、売上を増やす難易度は上がっていますよね。ぜひ御社のご状況についてお聞かせ頂き、現実的な打開策を一緒に見つけましょう。お悩みの方は、是非一度お問い合わせください。
この記事を書いた人
- エクステリア通販会社にて、店長業務に加えて物流・ユーザサポート・システム開発まで幅広く担当。市場ニーズと競合度を見極めて自社オリジナル商品を企画、自ら販促全般まで行って人気商品を量産。楽天ショップオブザイヤーにてジャンル賞を受賞したが、独自ドメイン店にも明るい。休日はバンド活動中。