「値上げしたら、利益だけでなく売上も伸びた!?」成功事例と値上げで失敗しないためのコツを紹介

こんにちは、コンサルタントの槐です。

今回は「値上げをしたら、返って売上があがるようになった」という、ECショップのオーナーさんなら誰もが聞きたくなるようなお話をご紹介します。

一見不思議な現象ですが、実は色々なお店で同じことが起こっているんです。複数の事例があるということは再現性が高く、マネしたら同様に売上が増やせる可能性があるので、ぜひ「自社でも取り入れられないか?」という視点で、読んでみてください。
もちろん、商品によってうまくいくケースとそうではないケースがあるので、その点も見極めながら、参考にしていただければと思います。

値上げが売上アップにつながった成功事例

では、弊社のコンサルティングのご支援先や書籍から、実際に値上げが売上アップにつながった事例を3つをお伝えします。

【事例1】革小物を値上げして他社と差別化

とあるネットショップで、6千円ほどだった革小物を、9千円に値上げしました。
6千円を9千円にアップしたので、1.5倍の値上げですね。相当な値上げをしていますが、利益と売上はどうなったでしょうか?

まず、利益が約2倍に上がりました。「値上げしたんだから、当然利益は増えるでしょう」と思うかもしれませんが、なんと利益だけではなく、売上もアップしたんです。利益が増えるのはまだ分かりますけど、なぜ売上も増えたのか不思議ですよね。

これには、2つの理由があります。
1つ目は、「商品そのものに9千円に見える価値があった」こと。ブランド名があるような商品ではないので、「9千円と言われれば、9千円なのかな…?」と、買い手が感じる商品のジャンルだったんです。

そして2つ目は、「競合と並んだ時に魅力的に見える商品だった」こと。競合はフェイクレザー商品であるのに対し、このショップはリアルレザーの商品を扱っていました。見た目が似ている商品を、同じ6千円前後の価格帯で売っていたら、モールの検索結果画面などでは、どちらも同じ商品に見えてしまいますよね。

9千円に値上げしたことで、「6千円=フェイクレザー、9千円=リアルレザー」という印象が強まったんですね。
そこに「リアルレザーの方を買いたい!」というユーザー心理が重なり、商品の価値が高まったことで、9千円の商品が売れるようになったわけです。
「お客さんに良かれと思って安く販売していたら、これまでは安物と間違えられていた」という事例でした。

【事例2】宝石の値段を2倍にしたら完売

もう一つ、上記とよく似た事例をご紹介します。土産物屋さんの事例です。

これは私が経験したわけではなく、「ファスト&スロー」(ダニエル・カーネマン 著)というビジネス本に載っていた話です。ご存じの方もいらっしゃるかもしれません。

ある観光地で、宝石を売っている人がいました。「なかなか売れないなぁ」と思った店主は、店員に「この商品、全然売れないから半額にしておいて!」と指示を出し、出かけます。

しばらくして戻って来ると、商品は全て売り切れていました。「さすがに半額にしたら、売れるよね」そう思った店主がよく値札を見ると…なんと、2倍の値段が書かれていたんです。
驚くべきことに、店員が間違えて、2倍の値段で販売してしまっていたんだそうです。「半額にしようと思っていたところを、2倍の値段にしたら売り切れた」という、なんとも恐ろしい事例です。

この結果が出た理由も、根本は1つ目の事例と同じです。
そもそも、元々の値段設定が安すぎたんです。あまりに安すぎる価格に「いやいや…安すぎるでしょ」「これ、偽物なんじゃない?」と、宝石を見た観光客から不審に思われていたんですね。本物の綺麗な宝石を売っていたのですが、「あまりにも安すぎるから、ガラスか何かだろう」と思われてしまっていたわけです。

結果として、「価格を2倍にしたことで本物である安心感が高まり、よく売れた」という、先程とよく似た事例でした。

【事例3】ニッチな価格ゾーンに変更して売上回復

3つ目は私も知っている、ECショップの事例です。

飲料を販売しているショップで、「◯◯飲み比べ3本セット・〇千円」と販売していました。元々はよく売れていた商品でしたが、段々と他店も同じような商品を乱発するようになっていました。元祖のお店だとは言え、ライバルと売り方が被って埋もれてしまい、売上は減少傾向にあったそうです。

「嫌だなぁ」と思った店長さんは、一体どんなことに取り組んだのでしょうか?

その商品を値下げするのではなく、あえて「ワンランク上の◯◯飲み比べ3本セット!」という打ち出し方に変えたんだそうです。価格帯も思い切って引き上げることにしました。

ギフトやプレゼントの業界が典型ですが、商品には価格帯ごとの市場というものが存在します。
「3千円の市場」「5千円の市場」「8千円の市場」というように、それぞれの価格帯に適した市場があり、「あの人へのプレゼントは3千円くらいかなぁ」と思っている人と、「5千円は出してあげたいなぁ」と思っている人が、それぞれの価格帯市場に存在しているわけです。

そうすると必然的に、同じ価格帯で市場を争うことになります。仮に「3千円の価格帯市場は激戦過ぎるな」「6千円くらいの価格帯だとライバルがいないから、”ワンランク上”とアピールして、6千円ぐらいで売ってみよう」と考えた場合、3千円と6千円の市場では、6千円で買おうとしているお客さんの方が少なかったとしても、ライバルが減ってよく売れる、という結果になります。

反対に激戦の市場の場合は、どれだけ大きな市場だとしても、自社に回ってくる売上が少ないので、結果としてあまり売れないという結果になりがちです。それよりは、多少ニッチな市場だとしても、ライバルが少なければ、結果的によく売れるということが起こるわけですね。

以上が、「価格帯を上げて別の価格帯で勝負するようにしたら、売上を取り戻せた」という事例でした。

価格が発するメッセージと値上げのコツ

「安かろう悪かろう」お客さんは価格からシグナルを受け取っている

「安かろう悪かろう」という言葉がありますよね。この言葉の通り、価格にはシグナル(信号)の要素が含まれています
安すぎる商品を見かけると、おそらく多くの人が「訳あり品だろう」「偽物だろう」とか「品質が低い商品だろう」と思うことでしょう。これは反射的に思ってしまうことなので仕方ないことなんです。

だからこそ、この心理を逆手にとって高い値付けをすると、「他よりもいい物だろう」と感じる心理が働きます。仮に数百円レベルの割高なら「少し割高な商品だなぁ」と思うかもしれませんが、値段が2倍違ったらどうでしょうか?価格が2倍異なる商品を比較する場合は、「きっと何か違いがあるんだろう」と考えますよね。

実際に私も、ある商品を買おうと思って検索していた際、同様の体験をしたことがあります。
似たような商品でも2倍の価格の開きがあると、「さすがに別物だろう」と考えて、「こういう価格帯でも売っているんだな。高値の価格帯は考えていなかったけど、高めだと何が違うのか見てみようかな」と、ついつい高価格帯の商品も調べていました。

ですから、自社の商品の価格設定はどんなシグナルを発しているか、一度振り返ってみると良いかもしれません。

単純に値上げしてはダメ。ライバルより上の価格帯を狙おう

値上げは、利益にプラスの効果がありますが、失敗することもあるので、注意深く進める必要があります。
しかし、うまくいくと非常に効果が大きい施策です。ポイントは、普通に値上げするのではなく、「ライバルよりも上の価格帯を狙う」こと

そして、いくつかの事例でご紹介したように、「別物だと思ってもらう」ことも有効なやり方です。もちろん、「中身は同じだけど、値段だけ無駄に高い」場合、結果はついてきません。中身も別物クラスの良い物なら、自信を持って高い値付けをしていきましょう。

まとめ

今回は「値上げをしたら売上も伸びた」というテーマについて、実際に値上げして売上アップした事例や、価格が発するメッセージ、値上げする場合の注意点についてお伝えしました。

この記事を参考に、ぜひ「うちの商品も値上げできるかな?」「今の価格帯は、商品の価値に対して適切なんだろうか?」など分析してみてください。そして、自社の商品でもできそうな場合には、値上げも施策の1つとして検討してみてください。

もちろん商品によって、うまくいくケースとうまくいかないケースがあります。
「値上げしてお客さんが離れてしまわないだろうか…?自信がない」という方は、専門家に相談などしながら進めていただくと、失敗の確率が減らせるのではないかと思います。

P.S.

弊社は、EC事業専門のコンサルティング会社です。
私達のコンサルティングでは、今回のような商品や価格帯に適した売上・利益アップにつながるご提案をしています。自社商品の価値と適切な価格というのは、なかなか客観的に見ることが難しい場合があります。そんな時は、私達のようなコンサルタントを活用していただきながら、最適な戦略を考えていただくのも一つです。

「売上が伸び悩んでいる…どうしたらいいか分からない」「利益がなかなか確保できない…」「値上げしたいが、売上が下がりそうでなかなか踏み出せない」とお悩みの方は、突破口が見つかるかもしれません。ぜひ、気軽にお声掛けください。

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この記事を書いた人

槐 香子
槐 香子
槐と書いて「えんじ」。埼玉出身。10年以上EC業界に在籍し、アパレル/美容雑貨/ベビー用品など様々なジャンルを経験。某モールで講師も担当。店の個性を活かした支援、人が育つ環境づくりに興味を持ち、コマースデザインに入社した。中小ECの可能性を信じている。カメラ好きでcanon60D愛用中。スパイスカレーに目がない。

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