こんにちは。コンサルタントの亀田です。
突然ですが、経営者やECチームのマネージャー・リーダーを任されている皆さん、「リーダーは正しくなきゃいけない」と思っていませんか?
リーダーになるような人は、もともと知識が豊富でスキルがあり、プレイヤーとして有能だからこそ、今のポジションにあると思います。
しかし、変化の激しい時代には、どんなに経験があっても「正解がわからないこと」がほとんど。
それなのに「正しいこと」を前提として、指示を出すのは無理がありますし、何よりリーダー自信も辛いですよね。
そこで、今回は、「正しさ」ではなく「役割」に基づいたリーダーシップのあり方と、チーム皆の意見を最大限に引き出すコミュニケーション術をご紹介します。
チーム内のコミュニケーションや、チームビルディングに悩んでいる方は、ぜひ今回の話を参考にしてみてください。
正解を知らなくても、リーダーシップは発揮できる
私がご支援するクライアントの中にも「リーダーは正しくなくてはならない」と思い込んでいる人は、実は結構いらっしゃいます。
それは、リーダー自身が「自分は正しくなくてはならない」と思っている場合もありますし、メンバー側が「リーダーは正しくあるべき」と思っている場合もあります。
リーダー本人が「自分は正しくなくてはならない」と思っている場合は、「私が言うことが正しいはずなので、指示に従ってほしい」と無自覚に考えてしまっている。
メンバー側が「リーダーは正しくあるべき」と思っている場合は、「正しくない指示をするなんて、リーダーとしてどうなんだ」という圧になってしまう。
うーん、どちらも辛いですね。。
しかし、「正しさ」と「リーダーシップ」は、まったく関係がありません。
かつての村の長老のように、長く生きた経験や豊富な知識という、「正しさ」でリーダーになる時代は終わりつつあります。むしろ変化が激しい現代では、誰も正解がわからないはずなのに、"正解”を知っているフリをして指示を出すことの方が、後々大きな問題につながります。
もちろん、リーダーは業務を遂行する上で必要な「権限」を持っています。しかし、それは「正しいから」ではなく、「責任があるから」持たされているのです。
メンバーの意見を意思決定に役立てよう
その責任のもと、よりよい決定を下すためには、メンバーが持っている知恵や経験、情報などを引き出し、それらを元に考えることが重要です。
「みんなの意見を聞きながらだと、いざという時の意思決定力が弱いと思われるのではないか」と考えがちですが、皆の意見を意思決定に役立てることと、リーダーシップを示すことは両立します。
十分に皆の意見を聞いた上で、たとえば、「自分も正解は分からないけれど、この件でうまくいかない時は全て私が責任を取ります。その責任において、私の権限で決めさせてもらいます」というスタンスを取れるようになると良いのです。
マネージャー職はマネジメント領域に、経営者は会社全体に、それぞれ責任を負うからこそ、権限が与えられています。
メンバーについても、「上司の指示は"正しさ”からではなく、"責任と権限”からだ」と腹落ちすれば、「上司が正解を知らなくても、指示には従うべきであること」を必ず理解してもらえます。
それが浸透した組織なら、リーダーも「分からない」と言えるし、「分からないけど、私の責任のもとで私が決めます」と自信を持って振る舞えるようになります。
建設的な議論のためのコミュニケーション術
それでは、正解が分からない状況下で、リーダーはメンバーとどのようなコミュニケーションを取り、方針を決めていけばよいのでしょうか。
リーダー自身が「こうじゃないかな。でも、わからないな」という曖昧な状況で決定を下し、メンバーから反論や突っ込みをされる。身に覚えがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
こういう時に、「反論されたくない」という気持ちが先に働いて、"自分が”間違えないで済むように、他の人が考えたことをそのまま採用したり、明確な指示を出さなかったりする人がいます。しかし、保身のためにそういうことをすると、後でややこしくなることが多いのです。
盲点があることを前提に、コミュニケーションを取る
そこで、自分の役割から見える状況と、そこからの判断を具体的に伝え、その上でわからない部分があることを正直に伝えるようにしましょう。例えば、次のような感じです。
この件については、こうしたいと思っています。 ただ、全体を見ているつもりでも見えないことが多く、判断がズレている可能性があります。 A業務は〇〇さん、B業務は〇〇さんが実際に担当しているので、それぞれの立場からどう見えているかを教えてもらえますか
つまり、「リーダーという立場からは見えないものがある」という前提で、「メンバーから見えているものを教えてほしい」と伝えるわけです。
これは「自分はこう思うけれど、もし見えない部分があるとしたら自分が無能だからではなく、リーダーという立ち位置のせい」と暗に伝えていることになります。
もちろん、直接言葉にする必要はありませんが、そういうスタンスで聞くことが大切です。
「個人」の主観ではなく、「役割」からの意見を聞く
なお、この時のポイントは、相手の"役割”を明確にしながら話すことです。
「〇〇さんとしてはどう?」とその人"個人”の主観を聞くのではなく、「MDを担っているあなたとしてはどう?」というように"役割”からの意見としてヒアリングします。
そうすることで、たとえ視野が狭かったり誤っていたりしても、「◯◯さんは間違っている」ではなく、「MDだとそういう部分は見えにくいよね」というように、役割からの見え方としてヒアリングすることができます。
さらに、その見え方に共感した上で、「受注を担う◯◯さんだと、売上よりもお客様の反応が気になるようですね」と、他の役割からの見え方を共有します。
このように、仕事内容や役割に基づくトークをすることで、非常に話がスムーズになります。
議論を成立させるために、恐怖心を起こさせない
そもそも議論がうまくいかない時というのは、自己防衛が働いているときです。
「攻撃してやろう」という気持ちではなく、「攻撃されるかもしれない」という恐怖から議論ができなくなり、争いが起こります。つまり、議論を成立させるには、お互いに恐怖心を起こさせないことが重要です。
そのためには「私は〇〇という役割なので、こう見えます」、「◯◯さんの役割からだとそう見えますよね」というように、その人個人ではなく、役割からの意見であることを強調することが有効です。リーダーとしても同じことで、「私の役割からは見えないところも多いから、現場から見て見落しはないでしょうか?」と意見を求めるわけです。
その上で、たとえ自分との意見が異なっていても、「ああ、なるほど。受注担当からはそう見えるのですね」と、受け入れます。そうすることで「誰が正解か」を決めるのではなく、それぞれの役割から見えていることを明らかにし、意思決定に役立てるのです。
最後はリーダーが責任と権限を持って決定する
それでも、各役割からの意見が食い違うことも多々あります。
リーダーは、それらの意見をすべて受け入れながらも、「マネジメント」の役割と責任のもと決定し、指示をしなければなりません。この時、正解・不正解を決める必要は全くありません。
「それぞれ担うの役割」からの意見を「それぞれが是」として受け入れるからこそ、誰もが評価される"恐怖"に陥ることなく、意見を伝えることができるのです。
さらに、「この辺がまだ決着がついていないけれど、私が責任者なので、最後は私が決定しますね」と、自分の責任と権限の領域であることを伝え、しっかりと決断することで、「皆の意見に左右されるリーダー」という印象は回避できるでしょう。
「リーダーは正しくあらねば」という思い込みを手放そう
「これが絶対に正しいです」と言いきれる人は、頼りがいのあるリーダーとして支持を集めるかもしれません。しかし、変化の激しい現代において「絶対に正しいこと」はそうありません。
「リーダーは正しくあらねば」と考え、そこで様々考え、もがいている方は、大多数が責任感にあふれる素晴らしい方だと思います。
ですが、誰しも盲点はあります。
これまでの経験と自分の役割から、私にはこのように見えている。けど、私にも見えていないものがあるはず。だから、ちょっとみんなからも意見を聞かせてくれますか?
というスタンスの方が本当だと思います。そして、実際にいろんな役割の人たちから意見を聞き、判断し、その上で「その判断が正しいかどうか分からないけど、責任はとる」という姿勢こそ、これからのあるべきリーダーの姿ではないでしょうか。
こうした進め方ならば、リーダーシップも発揮しつつ、求心力を持ってよりよい方向に向かえると思います。
P.S.
とはいえ、「いきなりリーダーのスタンスや、コミュニケーション手法を変えるのは難しい」という方も多いでしょう。そこで、コマースデザインでは、マネジメントのご支援も行っています。チーム内のコミュニケーションについても、コンサルティングやファシリテーションを通じて実施できるよう、お手伝いできますので、どうぞお気軽にご相談ください。
この記事を書いた人
- 大手印刷会社にて人事を経た後、営業として、店頭を中心とした様々な企業の販促支援に従事し、紙から鉄まで多様な企画・制作に携わる。色数や印刷方法など、「成果物の完成度」にズレがちなクライアントの要望をそもそもの目的に合わせ整理し直すなど、「成果とコストの見合った効果的な提案」を得意とする。趣味はサッカー(ポジションはGK)、二児の父。