こんにちは、コンサルタントの石黒です。
今回のテーマは、仕事の実行スピードが早くなる「状況別のタスク管理方法」 です。ネットショップの仕事は多岐にわたりますが、大企業のように分業化されておらず、ひとりがたくさんの業務をカバーするケースがとても多いですよね。多忙で「仕事が散らかっていて思うように進まない」とお悩みの方もいるのではないでしょうか?
一般的に、仕事が遅い人はタスク管理が苦手な傾向があります。例えば、単純にタスクを溜めてしまっていたり、優先順位を間違えて重要な仕事が進んでいなかったり、原因は人によってさまざまです。タスクの管理方法は、状況や立場、仕事のレベルなどによって変化するため、どう管理すべきかわからない方もいるかもしれません。
そこで今回は、仕事の複雑性にあわせたタスク管理方法について、レベル別に解説します。ゲームに例えてお伝えしますので、攻略本を流し読みする感覚でお読みください。
仕事が早い人と遅い人の違いはタスク管理にあり
仕事の進みが早い人と遅い人には、明らかな違いがある。
これは、当社が長年コンサルティングを行ってきたなかで、強く実感していることです。多忙なのにどんどん仕事が進む人がいる一方で、時間に余裕があるはずなのになかなか仕事が進まない人もいます。
両者は何が違うのか?
当社の経験上、ひとつ確かなのは、タスク管理をしているかどうかの違いです。
実際に、当社のEC経営コンサルティングの現場でも、お付き合いをはじめたばかりのクライアントさんにタスク管理の提案をよく行います。ちょっとしたノウハウなのですが(詳しくは後述します)、タスク管理を実施してもらうだけで、多くの場合において格段に仕事の進みが速くなります。なかにはスピードが倍になるケースもあるほどです。
「タスク管理くらいで?」という声が聞こえてきそうですが、これまで管理してこなかったところに取り入れると、その効果は目覚ましいものがあります。
タスク管理の考え方
では、タスク管理は具体的にどのような方法なのでしょうか。ここでは、基本的なタスク管理の考え方を紹介します。
基本のタスク管理方法とは
最も基本的なタスク管理方法は、ずばり「やることリスト」です。やることを紙にすべて書き出して、完了したら線を引いて消していくあの方法です。
世の中には、WBSやGTDなどいろいろなタスク管理方法がありますが、その多くはやることリストの発展形だと言えます。つまり、やることリストは、原初にして本質なんですね。
「じゃあ、やることリストを作ればいいんだね?」
…かというと、そういうわけではありません。仕事では、お買い物リストのように項目を書き出すだけでは不十分です。なぜなら、仕事では関わる人も多く、かつ締め切りを守りつつ品質を担保する必要があるからです。
では、どのような「やることリスト」を用意すればいいのか。
そこで知っておいていただきたいのが「いつまでに、誰が、何をするか」を明確にすることです。
これらの要素を網羅してやることを整理することで、担当や締切が明確になり、個人でも組織でもタスク処理のスピードが向上します。
複雑なタスクは「モンスター」に見立てて対処を考える
しかし、仕事が複雑であったり、量が多かったりすると、単純なやることリストだけでは対処しきれなくなってきます。例えば、AとBとCの仕事が1つのリスト上で混線して、ぐちゃぐちゃになってしまうようなイメージです。こうなると、タスク管理のレベルもアップさせていかねばなりません。
これはタスクを「モンスター」と仮定してゲーム感覚で考えてみるとわかりやすいです。モンスターのレベルが低いうちは攻撃一本でどうにかなりますが、強敵のボスキャラを相手にする場合には、作戦や知恵が必要になるなど、それ相応の戦術が求められます。つまり、重いタスクは頭を使って対処しないとクリアできないというわけです。
重要なポイントは、敵のレベルに合わせた戦い方を選ぶこと。一番弱いスライムを倒すのに「イオナズン」を使うのはもったいないですよね(ドラクエがわからない方はすみません)。とにかく、ご自身が対峙しているモンスター(今の仕事)がどのレベルかを見極めて、その状況に見合った「戦い方(タスク管理)」をする必要があります。
タスク管理のレベル別攻略法
では、ゲームの話が出てきたところで、ここからはモンスター(仕事)のレベルを4段階に分け、それぞれの攻略法についてご説明していきます。攻略本感覚でお読みください。
レベル1 ひたすらタスクを攻撃して消化する
まずレベル1は、最もシンプルな「やることリスト」でのタスク管理です。
とにかくすべてのタスクをリストアップして、ひとつずつ順番に対処していく。それだけの手法です。ネットショップなら、価格変更や画像URLの差し替えなど、負荷の少ない単純作業をコツコツこなす際に適しています。
ドラクエに例えるなら、スライムをひたすら攻撃で倒していくイメージでしょうか。使う武器は「ひのきのぼう」で十分(最弱の武器です)。頭を使う必要はなく、とにかく出てきた端からタスクをやっつけていけばいいわけです。
ただ、レベル1とはいえ、油断は禁物。うっかりタスクを見落としたり忘れたりして思わぬ事故にならないよう「油断せずに、やることを全部書きだす」ことは徹底してください。
また、前述のとおり、お買い物リストとは異なり、仕事では関わる人や締め切りなどの制約があります。従って、スライム退治レベルのタスクであっても「誰が、いつまでに、何をするか?」の3つの要素を網羅した形でタスク管理をするようにしましょう。
<3つの要素>
- 誰のタスクなのか?
- 「自分がやるのか?」「他の人に頼むのか?」「誰に納品するのか?」
- いつまでにするのか?
- 「スケジュールはどうする?」「締め切りはいつ?」
- 何をするのか?
- 「対応すべきことは何?」「どんな方法でやるのか?」
ちなみに「考える」「検討する」などの、ふわっとしたタスクは、この方法では対処が難しいです。例えば「新商品の紹介方法を考える」というタスク。一見、1つのタスクに思えますが、いざ取り掛かってみると「特集ページを作る」「広告を打つ」「YouTubeで紹介する」など、多くのタスクが芋づる式に出てきます。こうなると、単純なリスト管理でのクリアは厳しいため、よりレベルの高い攻略法を考える必要があります。このあと詳しくお話しします。
レベル2 「さくせん」を立てて、最重要タスクから攻める
レベル2に進むと、戦うモンスターが強くなり、ただ攻撃するだけでは倒しきれなくなります。1匹のモンスターに苦戦するうちに、他のモンスターに囲まれてしまったり…なんてことにもなりかねません。
現実のタスクに置き換えると、タスク管理のリストに重たいものが現れ、苦戦しているうちに「急がないこと」「できればやりたいこと」「必須の超重要な仕事」などが入り混じって、混線や滞留が生じてしまう。いわばキャパオーバーでカオスを迎えた状況と言えます。
この状況に対しての武器は「優先順位の明確化」。ドラクエでいう「さくせん」です。
難易度や重要度が異なる様々なタスクが入り混じっている場合、やることリストを上から順にこなすだけでは仕事はうまく回りません。きちんと順序立てるなど、戦略的に対応する必要があります。
具体的には、リストアップしたやるべきことに、それぞれの優先順位をつけること。レベル1の「やることを全部書きだす」ができていればスムーズに行えます。
つまり、以下のような流れです。
- レベル1で書き出したリストを眺める。
- 「これが優先」「これは後」 と優先順位をつける(「さくせん」を立てる)
やることリストの中で「どれが重要か?」を優先度を上げたり下げたり、調整しながら進めいきましょう。(もちろん、キャパオーバーしていなくても優先度付けはとても有効なので、基本動作としてもおすすめです)
レベル3 賢者の知恵でタスクの群れに対処する
レベル3はさらに難しい状況です。タスクが群れで襲いかかってきて、優先順位をつけて対応をしても一向に仕事が消化されない。いわば時間に追われ、タスク管理や進行に時間を割くことができない状態です。
こうなると、タスクの管理漏れも増えやすくなり、上から順にこなすのも難しくなってきます。そのため、コンディションを整え、万全を期して各個撃破で対処する必要があります。
この難関を突破するカギになるのは「賢者の知恵」。攻撃したり、補助に回ったり、体力を回復したりと、戦況に応じて最善の状態で戦えるよう準備をするわけです。
現実の仕事で考えると「スケジュール調整による時間捻出」がこれにあたります。正しく状況を判断し、適切な行動を取るために、知恵を出す時間を確保しましょう。
具体的には、スケジュール調整のために、カレンダーで集中する時間を先に押さえてしまいます。例えば「会議と会議の間に30分時間があるから、ここであの件を片付けよう」というように、あらかじめ時間を確保してタスクへ立ち向かうわけです。
カレンダーで時間を抑える際のポイントをまとめると、以下のとおりです。
- 「Googleカレンダー」などオンラインで共有できるツールを使う
- 会議などの予定の間に、自分の作業時間をカレンダーに入れ確保する
- 予定名は端的に記す<例>作業:新商品の商談資料作成
- 他のメンバーにもスケジュールを共有する
カレンダーの公開に気がひけるかもしれませんが、作業内容を書いて公開しておくと、メンバーの誰かが一緒にタスク実行を助けてくれる可能性が出てきます(嬉しい)。
また「メンバーが相談しづらくなるのでは」という懸念もあるかもしれませんが、あらかじめ「作業予定を入れているけど、この時間にミーティングを入れたかったら相談して」と伝えておけば、メンバーの皆さんも一定の配慮をしながら予定を入れてくれるようになります。(もちろん、特にそういった調整が必要ない方の場合は、別カレンダーで作業予定を登録するのでも構いません)
こうすることで、片手間ではなくまとめてタスクと戦えるようになり、タスクの群れを退治することができます。
ちなみに、予定と予定の間で作業する場合は、タスクリストではなく、カレンダーに直接タスクを書き込んで対応するのもいいかもしれませんね。
レベル4 ボス案件はプロジェクト管理で攻略
レベル4は、ただタスクが多い、忙しくて回らないといったレベルではなく、対応するべきタスクが複雑すぎて、本腰を入れなければクリアできない状態です。
レベル1で触れた 「考える」「検討する」系タスクのなかでも、特に大掛かりなものがこれにあたります。ECでいえば「YouTubeを始める」「新しく別のモールに出店する」など。「これがクリアできたら、話が前に進むのになあ」と、まさにゲームのボスキャラのようなタスクです。
ボス案件には、手下(さまざまなタスク)がいたり、手の内を全て明かさなかったり(思わぬ課題があとから出てくる)など、とにかく厄介なものです。 そのため、自分たちの持てる力を最大限発揮して撃破できるよう、事前にボス案件を分析し、戦略を練った上で総力戦で臨まなくてはなりません。
実際の仕事のケースで考えていきましょう。ボス(目標)に複数の手下(タスク)がくっついている「親子タスク」をイメージしてみてください。目標達成に向かって、細かいタスクを実行していくことを「プロジェクト管理」と呼びます。
<プロジェクト管理の例>
- 親:YouTubeを始める
- 子1:リサーチして、ゴールや必要な工程を考える(ライブラを唱える)
- 子2:タスクを整理する
- 子3:お手本や解説を見て、作業方法を覚える
- 子4:試しに動画を作る
- 子5:etc…
上記は「YouTubeチャンネル開設プロジェクト」の例です。このようにゴールや工程を考えた上で、プロジェクトとタスクの親子関係を作り、子タスクを整理しつつ順に退治していくことになります。
子どもタスクは主にレベル1〜2で説明した方法で対応し、時にはレベル3のクイックタイムを使って「今日はYouTube集中デーにして朝から晩まで押さえる」というように時間を確保しつつ進めていきます。
ただ、子タスクの管理は、単なるやることリストやカレンダーでは親子関係が見えにくくなってしまいがちです。そのため、プロジェクトとカレンダーは別々に管理することをおすすめします。(場合によっては、プロジェクト管理ツールなどを導入しても良いですね)
まとめ
今回は 「仕事が進まず、遅い状態」を解決したいなら、タスク管理が大事という話をゲームに例えつつご紹介しました。以下要点をまとめます。
レベル1の状況
「誰が何をいつまでにするか?」が明確になっていない。なんとなく「〇〇をする」というメモだけが書かれていて実行されていない状況。
レベル1への対策
それぞれのタスクに対して締め切りと登場人物を書きだして、全部リストアップする。リストアップしたことを俯瞰して見つつ、ひたすら対処を進めることが、タスク管理の初級段階。
レベル2の状況
タスクの難易度が上がり、キャパオーバーが起こっている状況。
レベル2への対策
優先順位を決める。レベル1のタスクを眺めて「どれが優先で、どれは優先ではないか?」を仕分けすることで、優先タスクとそうでないものを見定める。これにより重要なタスクを落とさずに済む。
レベル3の状況
優先順位をつけても、対処できないほど忙しい状況。
レベル3への対策
カレンダーでタスクの対応時間を確保する。「作業時間をタスク用に押さえたけど、調整は可能」というように、周りの人への前提の共有も大事。こうすることで、自分のキャパシティを温存できる。
レベル4の状況
「YouTubeを始める」「新しいシステムを導入する」といった大がかりな仕事を並べてみたものの、どう手をつけてよいのかわからない状態。
レベル4の対策
大きな目標に向けて、大きなタスクを細かく分解して実行していくのが「プロジェクト管理」。まずは目標を達成するための要件を洗い出して「親子タスク」を作り、順次実行レベル1〜3を駆使して実行する。タスク管理だけでは全体の進行状況が見えなくなるので、プロジェクトとタスクは別々に管理する。
日々のルーチンワークに追われていると、大きなプロジェクトになかなか手がつけられないものですが、レベル4の管理手法を会得できれば、仕事も随分と進みやすくなるはずです。
個人事業主から会社化したりなど、立場や忙しさが変わって仕事が複雑になると、今までと同じ戦い方では通用しづらくなってきます。最近、状況が変わって仕事が進まないなあと感じたときは、新しいやり方を導入するタイミングかもしれません。ぜひ、勇者になったつもりで、今回ご紹介した手法を試してみてください。
P.S.
最後に注意点をひとつお伝えします。 順調にレベルアップしてきたつもりでも、トラブルなどで状況が後退してしまうこともあります。そんな時は、焦らず初心に帰ること。「レベル1の基本(タスクのリストアップと俯瞰)」を実行して体制の立て直しから頑張っていきましょう。
しかし、いざ実行するとなると、抱えている仕事が複雑な人ほど整理が大変で、何から手をつけたらいいのか迷うこともあるのではないかと思います。
- なかなか自分ひとりでは仕事を前に進められない…
- 客観的な意見を聞きながら、タスクに優先度を付けていきたい…!
このように感じた時は、ぜひコマースデザインまでご相談ください。あらゆる強敵の攻略法を熟知するEC経営コンサルタントが、一緒にボスキャラとの戦い方を考えます。次のステージへ進みたい方は、ぜひ以下のリンクよりお問い合わせください。
この記事を書いた人
- エクステリア通販会社にて、店長業務に加えて物流・ユーザサポート・システム開発まで幅広く担当。市場ニーズと競合度を見極めて自社オリジナル商品を企画、自ら販促全般まで行って人気商品を量産。楽天ショップオブザイヤーにてジャンル賞を受賞したが、独自ドメイン店にも明るい。休日はバンド活動中。