【事例あり】ネットショップのスタッフが社長と店長の意見対立を解消した手法を具体的に紹介

こんにちは、コンサルタントの亀田です。

組織でネットショップを運営していると、部署間や上司・部下間での対立がよく起こります。対立は熱意の表れとも言えますが、ギスギスしたまま仕事を続ければ、成果も出しにくくなってしまいます。(人間は頭に血が昇っているとIQが下がるのだとか)

同じ組織の仲間同士「お客さんに喜んでもらいたい」「売上を伸ばしたい」という気持ちは一緒のはず。それにも関わらず、どうして意見が対立してしまうのか。今回は、いろいろある原因のなかでも、特に多い「同じゴールを目指しているのにアプローチが違うケース」の解決方法についてご紹介します。

なお、この記事は、対立中の当事者ではなく、対立に巻き込まれている方に向けて書いています。同じ境遇にある方が、社内対立を解消するきっかけになれば嬉しく思います。

よくある対立原因「ゴールへのアプローチの違い」

ネットショップでよくある社長と店長の対立。例えば、以下のA君のような経験をしたことがある方もいるのではないでしょうか。

  • 社長「うちの店も動画での商品説明をはじめたいなあ。YouTubeできる?」
  • 店長「セール対応で忙しく、そんな余裕はありません」
  • 社長「でもYouTubeくらいやっておくべきだよ。制作のA君にお願いしといてよ」
  • 店長「A君、社長はああ言ってるけど、何もしないでいいから」
  • A君「(巻き込まれた…どうしたらいいんだろう…)」

しかし、この対立。冷静に考えると、実は社長も店長も同じゴールを目指しているんですよね。

登場人物 考えていること
社長 動画での商品説明が売上に貢献するはずだ!
店長 セール対応が売上に貢献するはずだ!

つまり、社長も店長も売上を伸ばしたい点では一致しているのに、それに向けたアプローチ方法の違いで対立している状況なのです。

このような「アプローチ方法の違いからくる対立」は、本当に多く見られます。当事者がお互いに「実は同じゴールを目指していること」に気がつければ、建設的な話もできるのに、当事者ではなかなかそこに至れないのですよね。

では、どうすれば、このような対立を解消できるのでしょうか。

ここでキーパーソンになるのが、対立に巻き込まれている人、今回でいうA君なんです。

A君としては「上司同士の問題だから自分が口を出すべきではない」と様子を見たくなるかもしれません。しかし、対立の構図を整理して解決に向かわせられるのは、A君のような客観的な第三者が最適なのです。

アプローチの違いから来る対立を解消する方法

では、A君の立場にある人は、どのようにこの問題を解消すれば良いのでしょうか。

ここで紹介するのが、名著『ザ・ゴール2(エリヤフ・ゴールドラット)』で紹介されている「TOCクラウド(対立解消図)」というフレームワークです。

このTOCクラウドは、対立する二案の共通目的を見つけ、それぞれの意見を両立させることを目指したフレームワークです。そのため「どちらか一方の案を選ぶのではなく、双方の良い部分を取り入れて共存させる」という、両者にとって理想的な解決法を実現できるのが特徴です。(実際に弊社でもよく活用しており、とても役立っています)

概念だけではわかりにくいと思うので、具体例を使って説明しましょう。

たとえば、子供が「留学したい」と主張し、一方で親が「危険だから日本で勉強した方がいい」と反対しているケースを考えてみます。

下図のように、両者の主張が見事に対立しています。こうしたケースでは、強い立場にある親が意見を押し通し、子どもの希望を諦めさせる「Win-Lose」の状態になりがちです。

しかし、このフレームワークを使って共通の目的を探ると、次のように整理ができます。

子供は留学して視野を広くすることで幸せな将来を実現したがっているのに対し、親は安全な生活を通じて幸せな将来を願っています。表面的には意見が対立しているように見えても、実は両者とも「子供の幸せな将来」を望んでいることがわかります。

このように「ゴールは同じ」であると理解し合えれば、諦めたり妥協したりすることなく、希望を両立する第三の選択肢を検討できるようになります。例えば、留学をより理想的な形で実現できるかもしれませんし、留学以外の手段が見つかるかもしれません。

つまり、「一見、対立しているが、実は同じゴールを目指している」という共通認識を明らかにし、異なるアプローチをどう両立させていくかを考えること。これがTOCクラウドを使って対立を解消する基本的な考え方です。

なお、TOCクラウドについては、ゴールドラットジャパンの公式YouTubeチャンネルで詳しく解説されています。こちらのリンクからご覧ください。

ネットショップにおける対立解消の事例とその手順

方法が整理できたところで、ここからは弊社で実際にあったとある事例をなぞりつつ、職場の対立解消手順をお伝えしていきます。

今まさにネットショップ運営の人間関係や職場の対立で困っている方は、ぜひこの事例を参考にしてみてください。

手順1. 対立の意図を確認する

あるネットショップの実例です。そのお店では、期待の新商品の発売を前に、発売を急ぎたい社長と、時間をかけて準備をしたがる店長との間で対立が発生していました。

この板挟みで悩んでいたスタッフは、当社コンサルタントの協力を得て、TOCクラウドを使って対立解消に取り組むことになりました。

早速TOCクラウドで整理したところ、社長も店長も「新商品で売上を増やしたい」という共通の目的があることが見えてきました。しかし、双方の具体的な要望や意図があいまいであったため、スタッフは情報をさらに集めて、フレームワークを穴埋めしていきます。

すると、両者は下図のように「目的達成のためのアプローチが異なっている」ことで対立していたのが明らかになりました。

登場人物 考えていること
社長 ・商品力に自信があるから、多少ページは雑でも良い
・売上を立てないとキャッシュフローに響くため、早く売りたい
店長 ・過去の経験上、後からページを作り込めた試しがない
・いい商品だから、今ページを作り込んでおきたい

手順2. 異なる課題意識を両立させる方法を考える

次にスタッフは、弊社コンサルタントと協力しながら「この2つの課題意識を対立させず、両立で解消させる方法」を考えるように社長と店長に進言しました。

その結果、商品ページをある程度までは作り込んだ上で、素早く商品を発売する方針にまとめることに成功します。具体的には、商品ページにおいて写真だけは見栄えの良いものを利用し、そのほかの作り込みは発売1ヶ月後に時間を確保して対応することにしたのです。

これにより、社長の懸念するキャッシュフローの問題も解決し、店長が望むページ作り込みも実現することができたのです。

手順3. 対立を解消してより良い結果を生み出すことに成功

結果、社長の希望どおり、新商品は早々に発売を迎えキャッシュフロー改善に貢献。商品ページも発売から1ヶ月後には、理想形に向けた作り込みに着手できるという要求・要望の両立を達成できました。

さらに、商品ページの作り込みに関しては、早期に発売したことで得られた「レビュー」や「初動の販売実績」を基に、発売前には気づかなかった新たな視点を取り入れることができたと言います。

板挟みになったスタッフの行動が、社内の意見の対立解消だけではなく、当初の期待以上の効果を生み出したのでした。

対立解消はスキル!スタッフみんなで解決できるようになろう

今回ご紹介した対立解消の方法は、なにもリーダー格の人だけにしかできない特別なスキルというわけではありません。TOCクラウドのような考え方とスキルを身に付ければ、役職に関わらず誰でも実践可能です。

スタッフ一人ひとりが対立からクリエイティブな解決策を導き出せるようになれば、チーム・組織として成果も出やすくなるはずです。

ぜひ、今回の記事で紹介した手法や事例を参考に、スキルとして身につけてみてください。この記事が少しでもあなたのお店の問題解決のヒントになれば幸いです。

P.S:お困りの際はご相談ください

ネットショップ運営で「職場の意見対立で困っている」「対立がなかなか解消しない」とお困りの方は、ぜひコマースデザインまでご相談ください。

お店の状況や、関係者のパーソナリティなどを詳しくお伺いした上で、どのようにすれば対立解消できるのかをご一緒に考え、提案をいたします。

コマースデザインでは、売上アップなどの販促だけではなく、社内対立の解消などEC経営に関するあらゆるお悩みをサポートしています。詳細は以下のリンクからご覧いただけますので、ぜひお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

亀田 直人
大手印刷会社にて人事を経た後、営業として、店頭を中心とした様々な企業の販促支援に従事し、紙から鉄まで多様な企画・制作に携わる。色数や印刷方法など、「成果物の完成度」にズレがちなクライアントの要望をそもそもの目的に合わせ整理し直すなど、「成果とコストの見合った効果的な提案」を得意とする。趣味はサッカー(ポジションはGK)、二児の父。

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