2024年のEC業界を総まとめ!1年をふりかえるコンサルタント座談会

こんにちは、コマースデザインスタッフです。

2024年もEC業界はさまざまな変化がありましたね。脱コロナや物価高の影響で消費行動はメリハリ消費へとシフト。お店側でもAIの本格活用が進んだほか、楽天の最強配送やヤフーの動画戦略など大手モールの新たな動きもみられました。

そこで今年も「2024年のECをふりかえる座談会」をお届けします。当社コンサルタントが、ECの現場で起きている変化や来年の展望まで、率直に語り合いました。

ジャンル問わず、さまざまな店舗運営の悩みを解決してきた弊社コンサルタント陣は、今年1年をどう振り返るのか。ぜひ最後までお読みください。

参加メンバーの紹介

今回の座談会の参加メンバーを紹介します(五十音順)。

石黒(コンサルティング部 コンサルタント)

これまで100社以上のコンサルティングを担当。EC初心者にも手厚いフォローで「石黒さんの半分は優しさでできている」と、物腰の柔らかさに定評がある。最近、ジム通いを再開。

(コンサルティング部 コンサルタント)

槐と書いて「えんじ」。「一人店長→チーム化の経験」から、メンバー育成やEC業務の効率化が得意。実は、某モールで他店舗育成の講師をしていたことも。南インド&スリランカカレーが好き。

鳴瀬(コンサルティング部 コンサルタント)

楽天SOY受賞の有名アパレルネットショップ出身。大阪在住、一児の母。
音楽フェスに参加すること、朝ドラ鑑賞が趣味。ビールが好き。
 

(コンサルティング部 コンサルタント)

現場や地方の労働環境に精通。EC部門立上げや、SNSマーケ、小売部門のマネージャーなど、務めた業務は幅広い。趣味はカメラ、旅行、格闘技など多数。お酒に目がない。

味藤(コンサルティング部 コンサルタント)

EC現場経験豊富。楽天に強く、リサーチや情報発信に余念がない。キャンプ・登山・ネットショッピングが大好きで、届いた商品の梱包資材や同梱物をコレクションしている。

2024年のトレンドはメリハリ消費と動画活用

消費トレンドは「生活防衛とメリハリ」

ーまずは2024年のトレンドからうかがいます。今年の消費トレンドには、どのような特徴がありましたか?

林:2024年は、円安や物価高の影響で「生活防衛へのシフト」が明確にみられた年でしたね。

鳴瀬:そうですね。少し価格帯が上の食品は安い商品に代替されたり、日用品も買い替えサイクルが長くなっていたりした印象です。例えば、フライパンのような買い替え商品で「もう少し使えるかな」と我慢する傾向が強まっている気がします。

味藤:一方で「買うべきものはちゃんと買う」というメリハリのある消費行動も見られました。例えば、ファストファッションは厳しい印象でしたが、高額なジュエリーは好調でした。衝動買いが減って「本当に必要なものや価値を感じるものを買って長く使う」というサステナブルな考え方が広がってきたのかなと感じますね。

石黒:それからコロナが一巡したことも消費に影響を与えていそうですよね。高価格帯の食品が低調気味だったのですが、その背景には外出機会の増加があったと感じています。特に今年は3連休が多かったこともあり、昨年よりも行楽地が混雑していました。

販促は「動画活用」がトレンド

ーなるほど、お客さん側はメリハリ消費がトレンドだったのですね。では、お店側のトレンドはどうでしょうか。販促まわりではどのような変化がありましたか?

石黒:ECでも動画コンテンツの活用が進んできたと思います。私がコンサルティングしているお店でも、文章だけで商品説明をおこなっていたところに動画を取り入れたら、転換率が上がって売上が伸びた例もありました。

それからライブコマースもじわじわ伸びてきているなと感じます。15分くらいのライブで実演販売をしたお店があったんですけど、予想以上の反響があり、意外と動画を見てくれる人が多いんだなと驚いていました。

鳴瀬:動画が伸びている背景には、消費者の情報収集方法の変化がありそうですよね。例えば、YouTubeで情報検索する人が増えているように、情報のキャッチアップ方法として動画が当たり前になってきている。

林:それはありますよね。スマホの料金プランも充実してきて、外で動画を見ることに対する抵抗も少なくなってきていますし。

味藤:動画以外では、SNSと連携したEC施策も重要性を増していると思います。特に、インフルエンサーへ商品を提供して情報発信をしてもらう「ギフティング」はよく見かけるようになりました。以前はECといえば「名物店長」が情報発信するのが定番でしたが、ここ最近は、インフルエンサー活用にシフトしているなあと。

槐:そうなんですよね。私が担当しているお店の方も「自分で動画を作れないからインフルエンサーに依頼する」といったケースもありました。動画編集やSNSでの発信は専門的なスキルが必要ですし、ハードルも高いです。なので、外部のインフルエンサーを活用する方が増えているのかもしれません。

大手ECモールの動向と現場の反応

楽天市場の「最強配送」が開始。対応するも「辛い」との声が

ー続いて、大手モールの動向についてです。2024年の大手モールの出来事といえば、7月開始の楽天の「最強配送」ですよね。お店の皆さんの反応はいかがでしたか?

槐:最強配送は「365日即日出荷に対応すると、検索結果にラベルがつく」という楽天の施策です。検索結果で不利にならないよう、注力商品は外部倉庫に委託したり、対応が難しい商品は例外商品として申請したりなど、少なくないお店が対応に動いていました。ただ、現時点では最強ラベルを取得している商品が明確に優位になったという印象はありません。そのため、お店によっては対応を見直そうか、という動きも見られます。

石黒:365日即日出荷って大変ですよね。毎日のことですし。実際にお店の方からも「ストレスの方が勝ってメンタルにも影響しそう」なんていう辛い声も耳にしています。

鳴瀬:体制構築が追いつかないケースも多いですよね。「今後、配送をどうしていこうか」というのも悩みとして少なくない気がします。私たちとしても、こうした状況と向き合い、引き続き支援をしていかねば、と感じています。

林:ただ、9月に楽天が発表した検索ロジックの評価軸に関するガイドラインには「迅速な配送が可能な商品が一時的に優遇されるケースもある」と明記されているんですよね。今後、もしかすると最強配送のラベルがついていると優遇されるのかもしれません。

味藤:あと、今の商品検索では「最強配送での絞り込み」ができないので、ここが改善されるとまた販促への影響度も変わってくるんじゃないかなと思います。お客さんもその方が買い物がしやすくなって嬉しいはず。とはいえ、公取のAmazonに立ち入り調査もありましたし、検索優遇を大々的に打ち出して、実質的に最強配送を強いるようなことまでは想像しづらいです。このあたりはどうなっていくのか、引き続き来年も注目ですね。

ー楽天では昨年もSKUプロジェクトという大きな動きがありました。2年連続の大変革でしたよね。

槐:SKUプロジェクトへの対応も大変でしたね。たしかに、SKUがまとまったことで、自宅用を買いにきたお客さんにギフト用途を知ってもらえたり、これまで売れなかったサイズが動くようになったりといった効果はありました。ただ、対応にかけた時間に見合うだけの効果が出るまでには、もう少し時間がかかりそうな印象です。

石黒:「対応はするんだけれど、期待したほどの効果がなく肩を落とす」という状況が続いてしまっているんですよね。こうなると、今後また大きな変更があった時も「まずは様子見が正しいのでは?」という考え方になりそうな…。

林:でも、SKUも最強配送も、お客さんからすれば助かることではありますよね。槐さんの言うように効果はあったわけで、お客さんへの価値を提供できた点では有意義な施策でもあったとは思います。つい、かけた時間に見合った販促効果を期待しがちですが「お客さんに喜んでいただけるか」で考えてみれば、納得できるところもあるんじゃないかと思います。

SKU対応に伴うレビューの統合は2025年1月31日(金)午前9時59分までです。別々のカートについたレビューを1つにまとめたい場合は、この日までに申告が必要なのでお忘れないようにご注意ください。

Yahoo!ショッピングは動画を強化すべくテスト中

ーYahoo!ショッピングの動向はいかがでしょうか。

槐:うーん、今年は楽天ほどの大きな変更や動きはありませんでしたね。ただ、来年にはYahoo!フルフィルメントサービスからのヤマト撤退が決まっています。導入しているお店にとっては影響が大きく、対応に頭を悩ませているところもあります。

味藤:あ、でもYahoo!ショッピングも検索画面での動画活用を実験していますよね。検索結果画面でのサムネイルを動画化したり、アプリではYouTubeショートのような形式の動画紹介コーナーを設置したりといった細かな動きはありました。検索結果でのサムネイル動画化では「動画を流しっぱなしにするのか」「最初は静止画にしておいてマウスオーバーすると動画にするのか」などさまざまなUIでテストが進められているようです。この動向は気になりますね。

ーそのほかに気になるECモールの動向はありましたか。

槐:Amazonは大きな変化はありませんが、引き続き好調ですね。ほかにはメルカリShopsが着実に定着してきてた印象です。メルカリ内の取り引きの比率としても、従来のCtoCよりもBtoCの方が多くなってきているようです。メルカリポイントを使うユーザーを取り込めるので、まだ参加していない方は今後検討してみても良いかもしれませんね。

EC業界もAI活用が徐々に浸透

ー今年は「AIの活用」も大きなトピックだったのではないでしょうか。

味藤:はい、2024年はAI活用が本格化した年でしたね。当社が支援するお店でも、程度に差はあるものの、生成AIのツールを活用し始める動きが広がってきています。

ECのAIというと楽天のRMSに実装されたものがありますが「楽天でしか使えない」ということで汎用性が低く、あまり実用的ではなさそうな雰囲気を感じています。お店の皆さんを見ていると、ChatGPTやClaudeなど自分で使い勝手が良いツールを選んで使っていますね。

ーEC事業者のみなさんは、AIをどのように活用されているのでしょうか。

林:例えば、画像の編集、レビュー返信、商品説明文やプレスリリース作成、HTML・メルマガ作成、悩みの相談相手などなど、幅広い業務で使っています。例えば、私が担当するお店では、レビュー返信の文案を作成する際にChatGPTで文章を直してもらう使い方をしています。「言葉が刺々しかったのをやわらかく修正できた。すごすぎる!」と話していました。

鳴瀬:私の担当するお店では、プレスリリースの作成に活用していました。今までは文章を考えるのが大変で作成にかなり労力がかかっていたようなのですが、AIを活用することで簡単に作成できるようになったそうです。「今年は積極的に取り組むことができて、年間3本もプレスリリースを出せた」と喜んでいました。

味藤:忙しいからできない、難しいからできない…という壁をなくしてくれるのがAIのメリットですよね。悩みの壁打ち相手として使っているクライアントも結構います。当社でもECの質問や相談に特化したチャット型AI「コマのすけ」を作りました!10月に発売された当社の新刊売れる!EC事業の経営・運営の購入特典として利用できますので、ぜひ使ってみていただけたら嬉しいですね!

ーなるほど。かなり具体的な実務でAI活用が進んでいるのですね。今後、EC業界でAIはどのように活用すると良いと思いますか?

石黒:大事なポイントは「AIで効率化して浮いた時間をどう使うか」だと思います。単にAIを使って効率化するだけでなく、AI活用で創出された時間を戦略立案や商品開発にどう振り向けていくか。そこが今後の分水嶺になりそうです。

鳴瀬:トレンド変化、モールの仕様変更への対応など、EC事業者のやることは増える一方です。特に、仕入れ商材を扱う事業者にとっては、ますます厳しい局面になってきていて、表面的な販促施策だけでは、もう大手や有名店には太刀打ちできない時代に差し掛かっていると感じます。なので、オリジナル商品の開発やブランド構築など、単なる仕入れ販売以外の「別軸」が必要になってくるはずです。そのために、AIを活用して、効率化できるところは効率化する。そういう活用法をイメージしています。

ーとはいえ、AI活用に腰が重いお店もあるのではないでしょうか。

味藤:確かにAIに懸念を示す声も聞きます。でも、もはやAIを使わない手はない!というのが私たちの考えです。私たちは、AIの活用促進に向けてさまざまな支援もしています。定期的なセミナーの開催やプロンプトの配布など、お店のニーズに合わせた支援を提供するだけでなく、実践的なワークショップを通じて、具体的な活用方法を学べる場も用意しています。AI活用で悩んでいる方に、ぜひ検討してもらえたら嬉しいです。

2025年は「忙しい」からの脱却と「戦略」がポイント

ーまとめると2024年はどんな1年だったでしょうか。

味藤:「働き方」がキーワードとなった1年だったのではないでしょうか。AIの浸透による効率化と、モールの仕様変更への対応による多忙さが同時に進んだので「働き方」を見直す機会になった方も多かったと思います。

石黒:そうですね。表面的な施策での効果が期待できなくなり、本質的な戦略の必要性が浮き彫りになりました。AIでいかに時間を作り、戦略的に事業を進められるようになるか。そうした「働き方」を考えさせられた1年だったと思います

ー来年はどんな1年になりそうだと考えていますか。

石黒:業界全体に暗いムードはありますが、むしろチャンスだとも感じています。

味藤:そうですね。大切なのは、自社ならではのオリジナリティ、つまり「刃」を磨くことだと思います。商品開発もそうですし、プラットフォームが増えてきたり、インフルエンサーや動画の活用が進んできたり、できることは確実に増えています。どこで根をはり、どの手段を取るのか、先々の方向性を考えて動けるかによって来年やそのまた来年が変わってきそうです。

石黒:そうそう。プラスアルファの価値をどれだけ意識し、そこに時間を割けるかが勝負になってきそうですね。

槐:もはや1つの施策で結果が出る時代ではないですよね。楽天のガイドライン対応一つとっても、複雑化は進む一方ですし。

鳴瀬:だからこそ「忙しい」という言い訳から脱却しないとですね!本質的な戦略を考える時間を作らないと。

林:AIやコンサルティングを活用して時間を創出し、その時間で重要な戦略を練る。そんな考え方が、これからのEC運営には欠かせないと思います。ますます激動の時代になっていくなかで、お店の皆さんの助けになれるよう、私たちも研鑽を積んでいきたいと思います。

ーありがとうございました!

P.S.

コマースデザインでは、EC業界のニュースや最新動向を日々キャッチアップし、ブログやメルマガでわかりやすく情報発信しています。2024年10月には複雑化するEC業界を体系的に学べる、新刊(書籍)も発行しました。

これまで蓄積してきたノウハウを凝縮し、新人からベテランまで、すべてのネットショップ担当者に役立つ内容となっています。事業の見直し、メンバーの育成にぜひご活用ください。

なお「目の前の業務で手一杯…」「最新情報を追うのが大変…」。そんなお悩みをお持ちの方は、ぜひ当社のコンサルティングもご検討ください。お店の状況に合わせて、販促から中長期の経営方針まで、EC専門コンサルタントが親身になってサポートさせていただいています。以下よりお気軽にお問い合わせください。

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この記事を書いた人

コマースデザインスタッフ
コマースデザインは、EC事業のコンサルティング会社として、ECのお役立ちツールECコンサルティングを提供しています。全サービスの累計支援先企業は23,000社を突破しました。「色々な個性を持ったお店が数多くあり、お客さんに豊かな選択肢があるEC業界」を目指し、中小ネットショップ事業者の皆様の「強み」を引き出す支援を行っています。
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